「華僑烈々」 樋泉克夫著 06年12月 新潮社
 -大中華圏を動かす覇者たちー


この手の本は一種の情報書であり純粋な読書とはボーイには云えない。

けれども。。

ユダヤ人金持ちの教えとか最近ではUW証券の会長が書いた華僑の教えとかの
本等など(こんなのが売れるのは広告にみんな騙されているのだ。じっさい、読んで見たら
内容などなーんにもありゃしない)であるが、そのようないかがわしいヤラセ本と異なり、
本書は大変真面目な労作である。

三百頁を越える内容だが、じつに丁寧に記述されている。通常このような内容の本は、
ある程度事前の常識的な知識を必要とするものだが、本書には全く不要でありフラットな
状態から読み進むことができる。

マカオタイ台湾はたまたアフリカの華僑たちの素顔と実態が、著者の徹底した調査人脈
インタヴューを通じて浮き上がってくる。
その手腕を見ると何か魔法をかけられたかのようで、あっというまに読了した。
つい最近のタクシン政権の華僑としての舞台裏なども詳述されている。
とくに最終章の台湾人の政商コウ振甫(コウ:漢字がないので)の逸話は感動的だ。

あなたが東南アジアのお客さまとお取引があったり、華僑の事に関心がおありになるなら
必読の書としてお奨めしたい。
93年に上梓された「華僑コネクション」(新潮選書)も参考にされ、正続併せて読んで
欲しい。またその間の変遷も感慨深い。

帯↓
高度経済成長に沸く中国本土と、台湾、香港、マカオを経済的に融合させ、「大中華圏」
を出現させる原動力となった華人企業家たち。
彼らの人脈、金脈、ビジネス哲学、錬金術、ものの考え方、価値観を探る。

著者紹介 1947年生まれ。中央大学大学院博士後期課程を経て、在タイ日本国大使館に勤務。
愛知県立大学外国語学部教授。著書に「華僑コネクション」「京劇と中国人」など。