原文は前回記したとうり 

Wir setzen uns mit Traenen nieder.  

で、意味は「わたしたちは泣きながら腰をおろした」
【文語調では「われら涙もて座りき」とでなるんだろうか?】
となり、それ以外の訳は考えられない。断言する。

じゃあ、なぜ下のような訳になっちまったんだろうか?

1.. われら涙もてひざまずき
2. われら涙もてうずくまり


1.のひざまずくだが、独語では英語(knee)と同じ語源のsich knien
という言い方がちゃんとある。
ボーイはまだ原文を見る前は、宗教曲(教会音楽)なのでこの跪くが正しいのかなと
おもっていた。

2.うずくまるは、いうなればアジア式のウンチングスタイルである。
(キリストが十字架から降ろされた後、亡骸は穴に納められて見張りを付けたと聖書にある)
ほんとうに墓の前でこんな格好をしたんだろうか? 

3.邦誤訳にはまだ他に ひれ伏す なんていうのもあった!

上の三種とも語学的には不正確だ。

参考に最終曲の原文と邦語訳二種をあげてみると;

68.Chor                    68.合唱(Ⅰ,Ⅱ:全奏)

Wir setzen uns mit Traenen nieder     私たちは涙してひざまづき

Und rufen dir im Grabe zu:         み墓の中のあなたに祈る

Ruhe sanfte,sanfte ruh!             憩い給え、安らかに、安らかに憩い給え。
 
Ruht,ihr ausgesognen Glieder!        憩い給え、血の流れつくしたみからだよ。

Euer Grab und Leichenstein         あなたの墓と墓石こそ、

Soll dem aengstlichen Gewissen       悩める良心の

Ein bequemes Ruhekissen           安らかな憩いの枕、

Und der Seelen Ruhstatt sein.        また魂の憩いの場。

Hoechst vergnuegt schlummern da      今こそ満ち足りて、

die Augen ein.                   この目は、ここにまどろむ。

 川端純四郎訳 http://www.jade.dti.ne.jp/~jak2000/page002.html#244

Wir setzen uns mit Traenen nieder   私たちは、涙を流しながら、うずくまり、
Und rufen dir im Grabe zu:         墓の中のあなたに呼びかけます。
Ruhe sanfte, sanfte ruh!          安らかに憩いたまえ、憩いたまえ安らかに!

 編+訳:秋岡 陽
 http://home.p05.itscom.net/akioka/TxtBachStMatthewPassion.htm

(続く)