蝉の鳴かない8月(2-4話) | lilychien-fc2012

lilychien-fc2012

ショートストーリー、イラスト制作(練習中)記事、音楽関係、日常の話題など・・・気ままな日記です。

紗南は、その時の記憶を一つひとつ・・・

それがつい先ほどの出来事だったかのように

話しはじめた。


『 最初に来た方はね・・・初老の方で・・・ゲートから

ゆっくりと入ってきたの・・・全身ずぶ濡れでね・・・

手には色がグレーのチケットを持って 』


「 チケット? 」


『 そう・・・。さっき言った予約チケットの半券を

ゲートを入ってくる(来訪者)は持ってくるの・・・

その半券をいただいて、私の手元の案内チケットと

組み合わせるの・・・ 』


「 ・・・・・ふーん 受け付けはそういう風にするんだ・・・」


『 そう・・・組み合わせたチケット(来訪者)にお返しして

受け付けは終了。組み合わせの済んだチケットを日の光にかざすと

次の行先ゲートナンバーの指示が書いてある・・・ 』


「 ・・・・・・・・・・・・ 」


『 その日・・・はじめの頃はとても怖かった・・・なぜって

みんな無言なのよ・・・この建物・・・そしてゲートを見て・・・

驚くでもなく・・・まるで吸い込まれように私のところに

やってくる・・・何も言わないで・・・半券をこちらに差出し・・・

そして組み合さったチケットを持って次のゲートに・・・』


「 ・・・流れ作業みたいになっていく?・・・ 」


『 そう・・・そんな感じ・・・ 』


「 人数が多いから・・・結構大変だよね 」


『 ええ・・・でもこれが私の役割だし・・・

そしてね・・・ある(来訪者カップル)が来たの

・・・若いカップルがね・・・』

lilychien-fc2012