今夏の終わりに父が亡くなった。


1年前の春の終わりに母が亡くなり

その前後の父の母に対する思いやりのない態度と

(今となっては、アスペルガー典型であって、思いやり云々ではなかった)

母が亡くなった後の、父と姉のどうでもいい世間話で大声でおしゃべりする雰囲気に

(今となっては、これもアスペルガーあるある…)

私は一緒に過ごすことに苦痛を感じ、

母のことを受け入れる静かな時間が欲しくて

私は実家に寄り付かなかった。


姉が父の世話が楽しいといって、足繁く実家に通っていた。


しかし、ほどなく衝突していたらしく

昨夏の終わりに、姉から父への文句をぶつける

超長いLINEが私へ来るようになった。


姉の文面からして、何もそんなに父に求めなくても…と思ったものだ。


どうやら姉は父に対して

・規則正しく生活すること

・きちんと食べること

・目標を持って生活すること

を随分と言ってたらしい。


上2つは、まぁ、いいとして、

いやぁ、80過ぎた老人に、目標持って!とか、無理じゃね?と思ったものだ。

本人が、何かをやろうかなと言うなら、うん、いいんじゃない!それ目標にしなよ!と

励ましたり背中を押したり、おだてて乗せることは、あるだろう。

あるいは、本人の今までの生活や趣味を知った上で

あれ、また始めてみたら?と言うのもあるだろう。


しかし、姉のそれは、そうではない。

そもそも何十年もロクに実家に帰ることもなく、父の生活や趣味も知らないのだから。


父の心情や背景も知らずに、ましてや、父は元々自由気ままに生きてきて

およそ計画性というものが、自分の関心事以外は、からきしない人なのだから

(今となっては、これもアスペルガーあるあるだな)

そんな父に頭ごなしに目標を持って!なんて、なんと意味のない言葉だろう。


昨年の姉から私へのLINEは、こうだ。


「…うんぬんかんぬん…

 

 (父が姉へ言った内容)

 『何かにつけ年寄りだからって馬鹿にして!見下して!

  目標持てって何を目標にすればいいんだよ!

  政府も同じ事を言うけど無責任!

  目標持てじゃなくて目標教えてくれよ!』


 とか支離滅裂よ!


 …うんぬんかんぬん…


 帰りがけに玄関から出ようとしたら、

 出てきて泣きながら『自分が情け無い』だの何だの言ってたけど

 バスの時間が迫ってたから、秋には笑顔で再会しようねーと

 さっさと帰ってきたわ 」


姉からの父への非難の長いLINEは続いたのだが

いやぁ、父の気持ちの方が分かるわぁ、、だった。


私もそうだが、私以上に父は干渉されたくない人だ。

姉は、その距離感がないんだよなぁ。

一人で勝手に押し付けてきて、自分の思うような反応が返ってこないと激怒する。


と、そんなことを書けば、ますます炎上するので


お父さんにも一人で向き合う時間が必要だろうから

しばらく、そっとしておけばいいよ、と返した。


ただ、このとき、私から父へ連絡することもしなかった。

父が泣いていたということに、可哀想だと思ったが

どちらかといえば、色々と困ったなぁという感情の方が大きかった。

どうしよう?という感じで旦那さんに話したら、お父さん寂しいんだよ、と言われ

ハッとしたことを覚えている。


だけど、まだ母が亡くなった前後のわだかまりが払拭できていなかったこと、

母の亡くなったの翌日、翌々日に、

姉がペラペラ話すのに、一緒になって、嬉々としてお喋りしてはしゃいでいた父、

そんなことが頭から離れず、

私は父に電話する気がおきなかった。


父から電話があったのは、この10日後くらいのこと。

自身で救急車を呼び、今から入院すると連絡があった。


おそらく父は、この時のことがキッカケとなり

一気に精神的な不安から食欲減退となり、発熱、肺炎となったように思う。


そして、今夏に父が亡くなったのは、一年前に姉と喧嘩した日の翌日にあたる。


姉にも言い分はあるだろう。

父にも言い分はあるだろう。

父の寿命でもあるだろう。


だけど、あの日の後に、私から父に電話して、話を聞いていたら

もう少しだけ長く生きていてくれたかもしれない。

少なくとも、父の不安は少し減ったかもしれない。

この日のことを父が私に話すこともなかったので

幸いなことに、父は案外ケロッと忘れたか、気にしてなかったかもしれない。


姉は、父が今夏に亡くなったとき、一年前のことを思い出さなかったのだろうか。

いや、記憶にはあったはずだ。

なぜなら、父が亡くなった翌々日に、ようやく実家に来たのだが

その時、私は誰かと電話中だったが

姉が私の旦那さんに、開口一番こう言ってるのが聞こえた。


「目標持てって言ってたのに、持たなかったんですよねー!」と。


父は昨年の入院から半年後に退院した。

その時に、姉に連絡した方がいいよね…と、おずおずと私に聞いた。

電話だと姉の長い愚痴や非難になりがちなので

メールでサラッと連絡したら?と答えた。

その後、メールしてみたけど、返事がないや…と言っていた。


父が亡くなった後に、父のパソコンを見てみた。

父は姉に、退院したこと、入院の時にお世話になってありがとう、

これからは家の中や両親の遺品など整理していく、これが大きな目標になったよ、と

書いていた。


涙が出た。


姉からの返信は来ていなかった。


姉は、父が亡くなった一年前に喧嘩して、父が泣いたことを

後悔していないのだろうか。

父からの退院の連絡に、返事をしなかったことを悔いていないのだろうか。


父がどう思ったかは、父の問題であり、

私が代わりに怒るとか、許せないと思うのは、なんか違う気がする。

なので、そうは思わないのだが


しかし、私はもう姉のことは家族とは思えないし、思っていない。