母は亡くなる1週間前にも
電話でしっかり話ができて
母の想いを聞けて、長年の母への謎も解けて
母という人を理解し近づくことができた。
コロナ禍の入院事情あるあるだが
まだ深刻ではないときは、大部屋で面会禁止、
悪化して個室や処置室に移動したときは
命に関わるレベルだと、ようやく初めて家族面会が許されたが
そのときは意識混濁状態で、ほぼ会話も反応もないという
なんともやりきれない状況下だった。
初めて面会できた時は
いわゆる下顎呼吸が始まっていた。
そうなると、早ければ24時間以内らしい。
しかし、母は奇跡的に容態が少し戻り、意識が戻っていると
看護師さんから連絡がきて、急遽また面会に行った。
母は上体を起こし、目を開け、慌てて持っていった写真を見たり、
私が見せた動画にも目を見開いて反応した。
不意に、母が枕元近くに立っていた私の腕を
グッと掴み、さらに上腕部を掴んで引き寄せた。
母は私に何かを伝えようとした。
口は動いているが声にならず、口の動きでは何を言っているかも分からなかった。
突然のことで私も慌てて、何を言いたいかは分からなかったけど
うんうん、とうなづいて、分かったよと答え
お母さん、大好きだよと耳元で囁いた。
面会時間は終了となり
私はこれが最後だろうと分かっていた。
だから、しっかり言った。
お母さん帰るね、さようなら、と。
母は、割と呑気な感じで両手で手を振ってくれた。
母の表情は、なんかいつもの感じで、悲しそうでもなく
至って普通に、また明日ね、とでも思っている感じだった。
それは、穏やかな最後の別れで、今でも、良かったなぁと思っている。
ただ、たまに、あのグッとビックリするほど強く私の腕を掴み
引き寄せて、何かを言おうとしていた、あれは何だったのだろう?と思い出した。
その時に、何か警告している?という直感を持っていた。
私に対して、ありがとう、と言いたかった訳ではないことも分かっていた。
口の動きが違っていたし、ありがとうはその日の朝や、前の週にも言われており
明らかに雰囲気と様子、母の緊迫感が違っていたのだ。
何か切羽詰まったような、何かまるで
私に良からぬことが起きることを暗示、警告するかのように感じたのだ。
そして、警告するとしたら、それは決まっている。
まさかね…。
その、まさかだったのかなぁ。
母は、おそらく私にこう警告したのだろう。
お母さんが旅立った後、お父さんが大変になり、私に一気に負担となるであろう。
そして、長年母自身が苦しめられ、
最後の入院する道中、会いたい?会いたいなら連れてくるよと言う私に対して
首を静かに横に振った、姉のこと。
その3ヶ月前に姉が爆発し、両親は疲弊した。
そうは言っても、やはり親。
母は私に対しては安心、姉に対しては心配、とよく言っていた。
だから、将来何があっても、私は姉を見捨てないよ、と母に言い
母もそれに対してありがとうと言っていた。
その母のあの切羽詰まった掴み、父か姉か両方についてだ。
何があっても二人について頼む、か、私が背負わなくていい、の
どちらかだった気がする。
折に触れて、今後のことは心配ないよと伝えてきたし
実際、母の心配事をどんどん理解し進めていたのも、母は知っている。
母が言いたかったのは、後者な気がしてならない。
姉に気をつけろ、姉の攻撃を私が受け止める必要はない、
そんな警告だった気がしてならない。
母は長年、姉の攻撃を受け止めてきた。
母が亡くなり、姉は父を攻撃し始めた。
父の危篤の連絡のときでさえ、父を、私を罵るLINE連打の嵐。
父が亡くなった今、姉から私への超長文の罵倒メールが届く。
まだ父が亡くなって、1ヶ月しか経っていないというのに。
父や母が、いかに私の悪口を言っていたか延々と書き連ねている。(途中から読んでないが…)
長年攻撃を受けてきた母だから、
それが、父へ、私へ向かうことを、賢い母は分かっていたのだろう。
あくまでも推測。
ひょっとすると、母に代わって、私が受け止めてあげてと言いたかったのか?
仮にそうであったとしたら、お母さん、ごめん、私は受け止める気はないよ。
お母さんと約束した、姉を見捨てない、というのは守るよ。
だけど、見捨てないことと、理不尽な罵詈雑言を受け止めることは違う。
母の亡き後、姉は父を攻撃するばかりで、介護に全く参加しなかったが
私は姉を責めることなく、淡々と父の介護に専念し、
姉の状況や気持ちを理解しようと私なりに努めてきた。
こりゃ、一生分かり合えないな!と思った。
今は、分かりたいとも思わなくなった。
父も母も、私の幸せを願ってやまないと思っていたことは、確信している。
もちろん、姉の幸せも同じくらい願っていたことも、知っている。
だからといって、私が姉の犠牲になるなんてことは、望んでいなかったであろう。
とにかく今やるべきことは
父と母の納骨。数年後、母が望んだ永代供養の合葬へ。
そして相続、実家の処分が終わったら、姉と会うことはもうないだろう。
それでいいよね、お母さん。