「おもかげ」 浅田次郎

 

「忘れなければ、生きていけなかった」

浅田文学の新たなる傑作、誕生――。
定年の日に倒れた男の〈幸福〉とは。
心揺さぶる、愛と真実の物語。

商社マンとして定年を迎えた竹脇正一は、送別会の帰りに地下鉄の車内で倒れ、集中治療室に運びこまれた。
今や社長となった同期の嘆き、妻や娘婿の心配、幼なじみらの思いをよそに、竹脇の意識は戻らない。
一方で、竹脇本人はベッドに横たわる自分の体を横目に、奇妙な体験を重ねていた。
やがて、自らの過去を彷徨う竹脇の目に映ったものは――。

「同じ教室に、同じアルバイトの中に、同じ職場に、同じ地下鉄で通勤していた人の中に、彼はいたのだと思う」(浅田次郎)

 

 

定年したその日に地下鉄で倒れ、主人公の魂(?)が不思議な体験を...

美しい物語ではありましたが、自分にはまだ早いのかな、とそういう印象を持ちました。

”早い”というのは、読書人としてではなく、年齢的な意味でです。

やはり浅田さんと同じ世代...子もいて孫もいて、落ち着いて達観した世代にはグッとくるものがあると思います。

これは読む層を選びそう。

 

そしていつも思うのが、浅田さんの母親に対する想いというのはとても強いですね。

幼い頃のことなのに、数十年たった今でも小説に度々そういう場面が登場するのはかなり固執していますよね。

幼い頃だからこそ強く鮮明に焼き付けられた記憶なんでしょうね。