今回は諸事情により、大まかなあらすじと感想だけで
本がつまらなかったわけではありません
「七回死んだ男」 西澤保彦
では、大まかな筋書きを説明します。
まずは主人公、大庭久太郎の特異体質について。 彼は高校1年生の16歳です。
”同じ日を何度も繰り返す”体質なのです。
それが”能力”ではないのは、自分の好きな時にできないこと。
突然、この落とし穴にはまります。 そして、しばらく同じ日を繰り返すのです。
この現象のことを”反復落とし穴”と呼んでいます。 いつ落っこちるのかはわからない。
ただし、明白な規則性があって、落っこちている期間は9日間、つまり9回同じ日を繰り返すのである。
9周目の反復落とし穴が翌日に起こる出来事の決定打となり、
久太郎の行動次第で未来を変えることも可能なのです。
その特性を生かして(?)偏差値の高い難関高校に編入したりもしている。
そんな体質があるせいで、人より長く時間を過ごしているため、16歳なのに非常に大人びている。
語り口調はまるで50代のようです(笑)
では物語のスタートです。
正月、元旦に親戚一同が久太郎の祖父である渕上零治郎宅を訪れます。
祖父は一時期はギャンブルにのめり込み、店の売上げも平気ですってしまうほどだった。
祖父母には三人の娘がいるのですが、長女・加実寿。 次女・胡留乃。 三女・葉流名。
家から離れるために長女・加実寿は大学で見つけた男と結婚し、三女・葉流名は入学した高校の教師と結婚する。
祖父は祖母に先立たれ、長女と三女には家出同然に逃げられ、残った次女・胡留乃はノイローゼ気味。
遊ぶ元気も喪失して、零治郎は売れるものは全て売り払い、胡留乃を連れて旅に出るのである。
最後には彼女と一緒に海に身投げでもするつもりでいた。
ところが運命はここから急転直下する。
持ち金を全部使い切ってやろうと思って零治郎は馬券を買う。
それが当たりに当たり、使い切るどころか、何十倍にもなって返ってきたのです。
そして店を開き、さらに店舗拡大し、会社は一大企業に急成長したのです。
そうなってくると、黙っていられないのが、長女と三女。零治郎は82歳。
遺産問題なのです。 娘ばっかりの渕上家にとって、誰が後継者になるというのは祖父も決めかねている。
1月1日。親戚一同は祖父宅に一泊して帰るというのが通例となっています。
祖父は次女・胡留乃おばさんが養子をとり、その人物を会社の次期後継者にする、と発言する。
養子候補として、長女・加実寿の息子たちと三女・葉流名の娘たち、秘書ふたりの名をあげた。
遺産がかかってるわけですから、加実寿おばさんと葉流名おばさんは気が気じゃないわけです。
そしてこの日、宴会の席で久太郎は酒をさんざん飲まされる。
1月2日。二日酔いで起床する。 久太郎は屋敷の母屋の屋根裏部屋で一人寝た。
階段を降りると、話し声が聞こえた。
「赤い折り紙がない」という謎の会話を零治郎と胡留乃と家政婦のキヨ子さんがしている。
本館に行く途中で久太郎が恋している秘書の友利さんとでくわして話す。
そして本館のダイニングに行くと、誰もおらず、数分後に祖父が入ってきた。
祖父に屋根裏部屋に行って、酒を飲むぞ!という展開になります。
またまた飲まされて、トイレで吐くわ吐くわ。 吐きまくります。
そして帰る頃には意識朦朧としながら、車に乗り、そのまま眠りにつくのです。
目が覚めると・・・・・自宅に帰っている筈なのに、屋根裏部屋にいるのである。
階段を下りると、前回と同じく、赤い折り紙の話を祖父たちがしている。
”反復落とし穴”に入ってしまったのである。
このままの流れでいくと、祖父につかまり、酒を飲まされ再び吐きまくることになる。
そんなわけで祖父に会わないようにと、別館に逃げることにした久太郎。
昼寝でもしようかと思っていると、人の気配が。 入ってきたのは長男・富士高とルナ姉さんである。
隠れて耳を澄ましていると、”けしからん行為”に及んでいる。 なんと、二人は「デキて」いたのである。
その後、渡り廊下を日本酒の一升瓶を持って母屋へと向かう祖父の姿を目撃する。
そのあとに、富士高兄さんとルナ姉さんが祖父の後を追いかけるようにして消えていった。
しばらくしてルナ姉さんが本館の方へと行き、しばらくして再び戻ってくる。
ただし胡蝶蘭の花瓶を持って母屋の方へ。 そしてまたすぐルナ姉さん、富士高兄さんが出てきて本館へと消えた。
そしてしばらくして悲鳴のような声が聞こえると、祖父は布団の上にうつ伏せで倒れていた。
祖父の後頭部が赤黒く染まっており、横には花瓶と胡蝶蘭がぶちまけられていた。
祖父は死んだ。 殺されたのである。
やがて警察がきて事情聴取を受けている間に午前零時を迎える。
喉の渇きを覚えて、久太郎は目覚めた。 祖父の屋根裏部屋だ。
反復落とし穴が”リセット”されたのである。 再び1月2日の最初に戻ってきた。
オリジナル(第1周)に起こらなかった祖父の死が何故、起こったのか!?
基本的には反復落とし穴で起こる出来事はオリジナルに添って動き、
日程から逸脱した言動を意図的に取れるのは久太郎だけである。
久太郎は祖父の生命を救うことを決意。
酒を飲まされることなく、祖父が殺されないように行動する。
前周で眺めているだけだった、別館での富士高とルナ。 彼らに声をかけ、後継者問題について言及する。
前周で祖父の母屋に二人が出向いたのはその話をするためだったはずだからである。
話している間に渡り廊下を歩いている祖父の姿が目に入った。 富士高とルナは気づいていない。
その後本館で富士高とルナが、結婚して子供を産めば遺産問題も丸くおさまるという話をすると、
黙っていられなかったのが長女・舞。 富士高兄さんのことを好きだったからである。
ここで姉妹の激しい喧嘩になった。
落ち着いたところで久太郎はまた別館に行き、様子を窺うことに。
すると現れたのは舞姉さんだった。 虚ろに母屋のほうへと歩いていく。 しかしすぐに出てきた。
嫌な予感がして屋根裏部屋へと行くと、倒れている祖父の姿が目に飛び込んできた。
死んでいる。 前周とまるで同じように。
こうして次の周は!と思い、殺害を食い止めようと奮闘するのですが、母屋に向かう人物だけが変わり、
祖父は死んでいるという結果になるのです。
しかも舞姉さんの時以外は必ず胡蝶蘭の花瓶も使われている。
第8周目、今度は富士高とルナが後継者についての話をしに、屋根裏部屋へと行く。
今回は久太郎も一緒である。 話をしていると、奇妙な音が聞こえたかと思うと、
祖父が前のめりになって倒れていた。 祖父は倒れた。
そして、祖父は死んでいた。 これまでとまったく同じように。
では、ここからは真相&結末を書きたいと思います。
伏せ字にしています(ただし文字の背景が白の場合に限りますが)
ご覧になるかたはドラッグ又はCtrl+Aで、文字を反転させてお読みください。
↓
ルナ姉さんは言った。 「これがどういうことかわかってるの?」
たった今、富士高とルナの結婚について賛成を得て、無事後継者問題が安泰だったはずが、
祖父の死によってそれは無効となってしまうのである。
祖父は毎年遺言状を書き換えているが、今年の分はまだ書いていない。
そうなってくると、昨年書いた遺言状が有効になってくるのである。
祖父が昨年書いた遺言状で会社の後継者に選んだのは・・・・・「友利」。秘書の友利さんだったのです。
あの女には渡さない・・・・そう思ったルナ姉が考えたのは友利さんを殺人犯に仕立て上げること。
本館にあった、胡蝶蘭。あれは友利さんが持ってきたもので、彼女の指紋しかついていない。
そう。 今まで「殺人事件」だとばかり思っていた祖父の死は違った。
祖父の死は元々、酒を飲むことを禁じられていた身体なのに、飲みすぎて亡くなったのです。
それを見た者が後継者問題について危ぶみ、友利さんを殺人犯に仕立て上げるために胡蝶蘭の花瓶を使う。
こうして8周目が終えていくのでした。
最終周。
久太郎は祖父に酒を飲まないようにと、真剣な眼差しで頼み込み、胡留乃おばさんとキヨ子さんにも
酒を飲まなさないようにと、強い口調で言います。 祖父も納得してくれました。
そして祖父は大広間に皆を集め、富士高とルナが結婚することを条件に会社を任せる、と宣言した。
そのあとは宴会が続き、ウーロン茶で乾杯をし、何事もなくお開きになった。
車に乗り込んで出発した。 見送りにきてくれたのは祖父と胡留乃おばさんとキヨ子さん。
違和感を感じた。
宗像さんはどこにいるのだ?
目が覚めると、大庭家の自分の部屋だった。
反復落とし穴は終わったのである。 無事に祖父も死なずに済んだ。 全てうまく”修正”できた。
はずなのだが、弁護士の宗像さんのことが気になって仕方がない。
確かに1月2日のオリジナル周では宗像さんは車を見送ってくれたはずだ。 おかしい。
一度も宗像さんの姿を見ることなく、最終周を終えた。 不安でいてもたってもいられなくなった。
そんな時、友利さんから電話があった。 お食事の誘いを受けたのである。
友利さんは久太郎が好きな女性なのです。 胸をときめかせ、店に行く。
思わず、「すてきですね」と言ってしまった。「ヒサタロウさんも素敵ですよ」
何か変だな、ようやく気づいたのはオーダーを済ませた後だった。
友利さんは「ヒサタロウ」と言った。 しかしそれは1月2日の最初の周に指摘するまで、
ずっと友利さんは「キュータロー」だと思ってそう呼んでいたのである。 周りの皆がそう呼ぶために。
あの日のことは”リセット”されているはずなのに・・・・なぜ、友利さんは覚えているのだ!?
「つかぬことをお訊きしますけど・・・・今日の日付は1月3日ですよね」
「いいえ。今日は1月4日ですわ」
ふと我に返ると、久太郎は友利さん相手に説明をしていた。
久太郎の体質のことである。 ”反復落とし穴”のことや、新年会の直後に起こった経緯。
全部説明していた。 そこで友利さんが久太郎が勘違いしていることを指摘するのである。
久太郎は2日の晩、渕上邸をあとにしていなかった。 酔って眠っていたから記憶がないが、
車に乗り込んだあと、祖父がもう一泊していくのなら誰を後継者に指名するか教えると言い出した。
そうして皆、もう一泊することになった。
つまり、1月2日の反復落とし穴だと思っていたのは、実は1月3日の反復落とし穴だったのである。
しかし・・・・階段を降りていくと、祖父たちが赤い折り紙の話をしていた。
1月2日も1月3日もしていたことになる。 友利さんが説明する。 会長の症状が出ていた、と。
祖父はボケてきていた。 孫たちの名前も覚えられなくなっていたのだ。 そして同じ台詞を自覚なく言った。
日にちがずれているのであれば、納得できる点がたくさんある。
弁護士の宗像さんもいなくて当然である。 これまで気付かなかった原因は”服装”にある。
いつも祖父の家に行くと必ず赤や黄色のトレーナー上下に着替えさせられるのである。
何色を着るかは決められている。 それは祖父が孫の名前と顔が一致しないだめだったらしいが。
そこまでは納得した。 しかし・・・・・・
久太郎は大きな謎に思い当たった。
反復落とし穴はオリジナル周も含めて、全部で9周。
しかし、そうなってくると”8周しかしていない”事実に気づくのです。 数え間違いなど絶対にない。
聡明な友利さんは今までの説明を全部聞いて、その答えを導くのです。
「数え間違えてはいません。ヒサタロウさんはちゃんと数えていた。でも数えることの出来ない周が一回だけあったのです。 数えることはおろか、何も出来なかった」
「何もできなかったって・・・・・それはどうしてですか?」
「それはヒサタロウさんが死んでいたからなんです」
反復落とし穴のなかで、毎回必ず目覚めると階段の途中にルナの印鑑のような形をしたイヤリング落ちていた。
第7周ではそれを踏ん付け、祖父は階段から転落し、亡くなっている。
途中で一度、目覚めた久太郎は寝ぼけていてうっかり、そのイヤリングを踏んでしまい、
階段から落ち頭を打って死ぬ。
そうして久太郎は一日中、その周は死んでいた。
確かに一度高いところから落ちる夢をみた憶えがあった。
その年の4月、富士高兄さんは正式に胡留乃おばさんと養子縁組をした。
順風満帆、と思いきや・・・・富士高兄さんとルナ姉さんが婚約発表前に大喧嘩。
結婚しないと言い出したからさあ、大変! また後継者問題を抱えたまま正月を迎えそうである。
そんな時に、再び反復落とし穴に落ちてしまわないか、不安になってしまうのである。
終
以上です。
パラレルワールドで、未来を変えるために主人公が頑張る、という設定はよくありますが
後半のどんでん返し?からくり?が面白かったですねー。
ほほう、そうきたか。 と思いました(笑)
最後の、久太郎がまさか・・・そんなことになってたとは。 そこ、びっくり。
謎解き系、ミステリーが好きな人におすすめの小説です♪(^-^)
興味のわいたかたは是非、久太郎のとても16歳とは思えない喋り口調を本で確かめてみてください(笑)
本がつまらなかったわけではありません
「七回死んだ男」 西澤保彦
では、大まかな筋書きを説明します。
まずは主人公、大庭久太郎の特異体質について。 彼は高校1年生の16歳です。
”同じ日を何度も繰り返す”体質なのです。
それが”能力”ではないのは、自分の好きな時にできないこと。
突然、この落とし穴にはまります。 そして、しばらく同じ日を繰り返すのです。
この現象のことを”反復落とし穴”と呼んでいます。 いつ落っこちるのかはわからない。
ただし、明白な規則性があって、落っこちている期間は9日間、つまり9回同じ日を繰り返すのである。
9周目の反復落とし穴が翌日に起こる出来事の決定打となり、
久太郎の行動次第で未来を変えることも可能なのです。
その特性を生かして(?)偏差値の高い難関高校に編入したりもしている。
そんな体質があるせいで、人より長く時間を過ごしているため、16歳なのに非常に大人びている。
語り口調はまるで50代のようです(笑)
では物語のスタートです。
正月、元旦に親戚一同が久太郎の祖父である渕上零治郎宅を訪れます。
祖父は一時期はギャンブルにのめり込み、店の売上げも平気ですってしまうほどだった。
祖父母には三人の娘がいるのですが、長女・加実寿。 次女・胡留乃。 三女・葉流名。
家から離れるために長女・加実寿は大学で見つけた男と結婚し、三女・葉流名は入学した高校の教師と結婚する。
祖父は祖母に先立たれ、長女と三女には家出同然に逃げられ、残った次女・胡留乃はノイローゼ気味。
遊ぶ元気も喪失して、零治郎は売れるものは全て売り払い、胡留乃を連れて旅に出るのである。
最後には彼女と一緒に海に身投げでもするつもりでいた。
ところが運命はここから急転直下する。
持ち金を全部使い切ってやろうと思って零治郎は馬券を買う。
それが当たりに当たり、使い切るどころか、何十倍にもなって返ってきたのです。
そして店を開き、さらに店舗拡大し、会社は一大企業に急成長したのです。
そうなってくると、黙っていられないのが、長女と三女。零治郎は82歳。
遺産問題なのです。 娘ばっかりの渕上家にとって、誰が後継者になるというのは祖父も決めかねている。
1月1日。親戚一同は祖父宅に一泊して帰るというのが通例となっています。
祖父は次女・胡留乃おばさんが養子をとり、その人物を会社の次期後継者にする、と発言する。
養子候補として、長女・加実寿の息子たちと三女・葉流名の娘たち、秘書ふたりの名をあげた。
遺産がかかってるわけですから、加実寿おばさんと葉流名おばさんは気が気じゃないわけです。
そしてこの日、宴会の席で久太郎は酒をさんざん飲まされる。
1月2日。二日酔いで起床する。 久太郎は屋敷の母屋の屋根裏部屋で一人寝た。
階段を降りると、話し声が聞こえた。
「赤い折り紙がない」という謎の会話を零治郎と胡留乃と家政婦のキヨ子さんがしている。
本館に行く途中で久太郎が恋している秘書の友利さんとでくわして話す。
そして本館のダイニングに行くと、誰もおらず、数分後に祖父が入ってきた。
祖父に屋根裏部屋に行って、酒を飲むぞ!という展開になります。
またまた飲まされて、トイレで吐くわ吐くわ。 吐きまくります。
そして帰る頃には意識朦朧としながら、車に乗り、そのまま眠りにつくのです。
目が覚めると・・・・・自宅に帰っている筈なのに、屋根裏部屋にいるのである。
階段を下りると、前回と同じく、赤い折り紙の話を祖父たちがしている。
”反復落とし穴”に入ってしまったのである。
このままの流れでいくと、祖父につかまり、酒を飲まされ再び吐きまくることになる。
そんなわけで祖父に会わないようにと、別館に逃げることにした久太郎。
昼寝でもしようかと思っていると、人の気配が。 入ってきたのは長男・富士高とルナ姉さんである。
隠れて耳を澄ましていると、”けしからん行為”に及んでいる。 なんと、二人は「デキて」いたのである。
その後、渡り廊下を日本酒の一升瓶を持って母屋へと向かう祖父の姿を目撃する。
そのあとに、富士高兄さんとルナ姉さんが祖父の後を追いかけるようにして消えていった。
しばらくしてルナ姉さんが本館の方へと行き、しばらくして再び戻ってくる。
ただし胡蝶蘭の花瓶を持って母屋の方へ。 そしてまたすぐルナ姉さん、富士高兄さんが出てきて本館へと消えた。
そしてしばらくして悲鳴のような声が聞こえると、祖父は布団の上にうつ伏せで倒れていた。
祖父の後頭部が赤黒く染まっており、横には花瓶と胡蝶蘭がぶちまけられていた。
祖父は死んだ。 殺されたのである。
やがて警察がきて事情聴取を受けている間に午前零時を迎える。
喉の渇きを覚えて、久太郎は目覚めた。 祖父の屋根裏部屋だ。
反復落とし穴が”リセット”されたのである。 再び1月2日の最初に戻ってきた。
オリジナル(第1周)に起こらなかった祖父の死が何故、起こったのか!?
基本的には反復落とし穴で起こる出来事はオリジナルに添って動き、
日程から逸脱した言動を意図的に取れるのは久太郎だけである。
久太郎は祖父の生命を救うことを決意。
酒を飲まされることなく、祖父が殺されないように行動する。
前周で眺めているだけだった、別館での富士高とルナ。 彼らに声をかけ、後継者問題について言及する。
前周で祖父の母屋に二人が出向いたのはその話をするためだったはずだからである。
話している間に渡り廊下を歩いている祖父の姿が目に入った。 富士高とルナは気づいていない。
その後本館で富士高とルナが、結婚して子供を産めば遺産問題も丸くおさまるという話をすると、
黙っていられなかったのが長女・舞。 富士高兄さんのことを好きだったからである。
ここで姉妹の激しい喧嘩になった。
落ち着いたところで久太郎はまた別館に行き、様子を窺うことに。
すると現れたのは舞姉さんだった。 虚ろに母屋のほうへと歩いていく。 しかしすぐに出てきた。
嫌な予感がして屋根裏部屋へと行くと、倒れている祖父の姿が目に飛び込んできた。
死んでいる。 前周とまるで同じように。
こうして次の周は!と思い、殺害を食い止めようと奮闘するのですが、母屋に向かう人物だけが変わり、
祖父は死んでいるという結果になるのです。
しかも舞姉さんの時以外は必ず胡蝶蘭の花瓶も使われている。
第8周目、今度は富士高とルナが後継者についての話をしに、屋根裏部屋へと行く。
今回は久太郎も一緒である。 話をしていると、奇妙な音が聞こえたかと思うと、
祖父が前のめりになって倒れていた。 祖父は倒れた。
そして、祖父は死んでいた。 これまでとまったく同じように。
では、ここからは真相&結末を書きたいと思います。
伏せ字にしています(ただし文字の背景が白の場合に限りますが)
ご覧になるかたはドラッグ又はCtrl+Aで、文字を反転させてお読みください。
↓
ルナ姉さんは言った。 「これがどういうことかわかってるの?」
たった今、富士高とルナの結婚について賛成を得て、無事後継者問題が安泰だったはずが、
祖父の死によってそれは無効となってしまうのである。
祖父は毎年遺言状を書き換えているが、今年の分はまだ書いていない。
そうなってくると、昨年書いた遺言状が有効になってくるのである。
祖父が昨年書いた遺言状で会社の後継者に選んだのは・・・・・「友利」。秘書の友利さんだったのです。
あの女には渡さない・・・・そう思ったルナ姉が考えたのは友利さんを殺人犯に仕立て上げること。
本館にあった、胡蝶蘭。あれは友利さんが持ってきたもので、彼女の指紋しかついていない。
そう。 今まで「殺人事件」だとばかり思っていた祖父の死は違った。
祖父の死は元々、酒を飲むことを禁じられていた身体なのに、飲みすぎて亡くなったのです。
それを見た者が後継者問題について危ぶみ、友利さんを殺人犯に仕立て上げるために胡蝶蘭の花瓶を使う。
こうして8周目が終えていくのでした。
最終周。
久太郎は祖父に酒を飲まないようにと、真剣な眼差しで頼み込み、胡留乃おばさんとキヨ子さんにも
酒を飲まなさないようにと、強い口調で言います。 祖父も納得してくれました。
そして祖父は大広間に皆を集め、富士高とルナが結婚することを条件に会社を任せる、と宣言した。
そのあとは宴会が続き、ウーロン茶で乾杯をし、何事もなくお開きになった。
車に乗り込んで出発した。 見送りにきてくれたのは祖父と胡留乃おばさんとキヨ子さん。
違和感を感じた。
宗像さんはどこにいるのだ?
目が覚めると、大庭家の自分の部屋だった。
反復落とし穴は終わったのである。 無事に祖父も死なずに済んだ。 全てうまく”修正”できた。
はずなのだが、弁護士の宗像さんのことが気になって仕方がない。
確かに1月2日のオリジナル周では宗像さんは車を見送ってくれたはずだ。 おかしい。
一度も宗像さんの姿を見ることなく、最終周を終えた。 不安でいてもたってもいられなくなった。
そんな時、友利さんから電話があった。 お食事の誘いを受けたのである。
友利さんは久太郎が好きな女性なのです。 胸をときめかせ、店に行く。
思わず、「すてきですね」と言ってしまった。「ヒサタロウさんも素敵ですよ」
何か変だな、ようやく気づいたのはオーダーを済ませた後だった。
友利さんは「ヒサタロウ」と言った。 しかしそれは1月2日の最初の周に指摘するまで、
ずっと友利さんは「キュータロー」だと思ってそう呼んでいたのである。 周りの皆がそう呼ぶために。
あの日のことは”リセット”されているはずなのに・・・・なぜ、友利さんは覚えているのだ!?
「つかぬことをお訊きしますけど・・・・今日の日付は1月3日ですよね」
「いいえ。今日は1月4日ですわ」
ふと我に返ると、久太郎は友利さん相手に説明をしていた。
久太郎の体質のことである。 ”反復落とし穴”のことや、新年会の直後に起こった経緯。
全部説明していた。 そこで友利さんが久太郎が勘違いしていることを指摘するのである。
久太郎は2日の晩、渕上邸をあとにしていなかった。 酔って眠っていたから記憶がないが、
車に乗り込んだあと、祖父がもう一泊していくのなら誰を後継者に指名するか教えると言い出した。
そうして皆、もう一泊することになった。
つまり、1月2日の反復落とし穴だと思っていたのは、実は1月3日の反復落とし穴だったのである。
しかし・・・・階段を降りていくと、祖父たちが赤い折り紙の話をしていた。
1月2日も1月3日もしていたことになる。 友利さんが説明する。 会長の症状が出ていた、と。
祖父はボケてきていた。 孫たちの名前も覚えられなくなっていたのだ。 そして同じ台詞を自覚なく言った。
日にちがずれているのであれば、納得できる点がたくさんある。
弁護士の宗像さんもいなくて当然である。 これまで気付かなかった原因は”服装”にある。
いつも祖父の家に行くと必ず赤や黄色のトレーナー上下に着替えさせられるのである。
何色を着るかは決められている。 それは祖父が孫の名前と顔が一致しないだめだったらしいが。
そこまでは納得した。 しかし・・・・・・
久太郎は大きな謎に思い当たった。
反復落とし穴はオリジナル周も含めて、全部で9周。
しかし、そうなってくると”8周しかしていない”事実に気づくのです。 数え間違いなど絶対にない。
聡明な友利さんは今までの説明を全部聞いて、その答えを導くのです。
「数え間違えてはいません。ヒサタロウさんはちゃんと数えていた。でも数えることの出来ない周が一回だけあったのです。 数えることはおろか、何も出来なかった」
「何もできなかったって・・・・・それはどうしてですか?」
「それはヒサタロウさんが死んでいたからなんです」
反復落とし穴のなかで、毎回必ず目覚めると階段の途中にルナの印鑑のような形をしたイヤリング落ちていた。
第7周ではそれを踏ん付け、祖父は階段から転落し、亡くなっている。
途中で一度、目覚めた久太郎は寝ぼけていてうっかり、そのイヤリングを踏んでしまい、
階段から落ち頭を打って死ぬ。
そうして久太郎は一日中、その周は死んでいた。
確かに一度高いところから落ちる夢をみた憶えがあった。
その年の4月、富士高兄さんは正式に胡留乃おばさんと養子縁組をした。
順風満帆、と思いきや・・・・富士高兄さんとルナ姉さんが婚約発表前に大喧嘩。
結婚しないと言い出したからさあ、大変! また後継者問題を抱えたまま正月を迎えそうである。
そんな時に、再び反復落とし穴に落ちてしまわないか、不安になってしまうのである。
終
以上です。
パラレルワールドで、未来を変えるために主人公が頑張る、という設定はよくありますが
後半のどんでん返し?からくり?が面白かったですねー。
ほほう、そうきたか。 と思いました(笑)
最後の、久太郎がまさか・・・そんなことになってたとは。 そこ、びっくり。
謎解き系、ミステリーが好きな人におすすめの小説です♪(^-^)
興味のわいたかたは是非、久太郎のとても16歳とは思えない喋り口調を本で確かめてみてください(笑)