最近、図書館に足を運ぶのが楽しくてしょうがない私です音譜

今日は渋く、松本清張の本でひらめき電球


「点と線」 松本清張


九州の博多で、心中自殺の遺体が発見される。
遺体は青酸カリを飲んでの毒死だった。

遺体の身元を調べてみると、○○省○○課の佐山という男。
○○省は今、汚職事件で世間をにぎあわせていた。
そして料亭「小雪」で女中をしているお時という女だった。


一見、恋愛のもつれによる心中だと思われた。

だが、一人違った見かたをする者がいた。 それが老刑事の鳥飼だ。


佐山とお時は列車で東京駅から九州まで行っているのだが、
佐山の遺体から出てきた列車の食堂車の領収書には「御一人様」と書いてあるのである。
お時は腹がすいてなかったのかもしれない。 
しかし恋人同士なら、普通はそれでも付き添って一緒に食堂車まで行きやしないかと。

そして更に状況証拠を調べてみると、九州に到着すると宿で5日間宿泊しているのであるが
泊まったのが ”佐山だけ” なのである。
その間、お時はどこへ行き、何をしていたのか?
5日後、宿へ女性の声で電話があると、佐山は急いで荷物をまとめて宿を後にしたという。


この事件について独自に捜査する鳥飼。
そんな時に、東京から刑事がやってきた。 それが三原刑事であった。

鳥飼刑事は自分が聞いたこと、調べたことを全て三原刑事に話した。
その話を三原刑事は実に興味深く聞いた。


そして、この件の捜査について三原刑事にたくした。





あの日東京駅で、佐山とお時が列車に乗り込む現場を見た者がいると聞き、早速聞き込みに行く。

それは安田という男と、お時が働いていた料亭「小雪」の女中二人だった。
女中二人の話によると、前日から安田と食事する話になっており、
その日は食事を楽しんだあとは安田が東京駅で鎌倉に向かうので見送ってくれないか、と
駅まで一緒に行ったとのこと。
そして駅のホームまで行き、13番ホームにいると、
15番ホームにいる佐山とお時が仲良く話して歩いているのを見たんだそうだ。

お時に男がいるなどと聞いたこともなかった女中はビックリして、
安田と別れたあと、15番乗り場で列車に乗り込んだお時を見に行ったほどだ。


そして東京駅に足を運んだ三原刑事。
東京駅の構内はたくさんの人が行き交っている。
また、たくさんの列車が停車している。

しばらくその光景を眺めていた三原刑事は思った。 
13番ホームから15番ホームまで見渡せる状況などあるのだろうか。
つまり、13番~15番ホームまで全く電車が停まっていない状況だ。

調べてみた三原刑事は驚愕する。

13番ホームから15番ホームまで見渡せる状況は、一日のうち・・・・・


「たった4分」しかないのだ!!


安田と女中二人が、わずかこの4分の間に佐山とお時を目撃したのは偶然なのか?



あらためて女中二人に話を聞くと、初め佐山とお時の存在に気づいたのは安田だという。
しかも安田は列車に乗る前の店で、しきりに時計を気にしていたそうだ。
この安田という男は「小雪」の常連客でお時がいつも担当としてついていたそうだ。
そして死んだ佐山の○○省にも出入りしている商人というではないか!


ますます事件のにおいがしてきた三原刑事は安田本人に話を聞きに行く。


「安田さん、あの日鎌倉へはどんなご用事で?」

「あぁ、鎌倉にはうちの家内がいましてね。 胸の病気を患っているものですから
今は鎌倉に住んでいて、週に一度は会いに行くようにしているんですよ。」

いたって落ち着いた様子で安田はそう答えた。


では、佐山とお時が死んだ日はどうだ。
あれが自殺ではなく、殺しだった場合はあの日九州に安田はいたはずだ。


「ちなみにですが、○日はどこにいらっしゃいました?」

「あの日は私は取引先と仕事の打ち合わせで北海道に行っていました。
あ~・・・ちょっと待ってくださいね。 東京駅○時○分発、○時○分青森着の列車に乗っています。
その後は船に乗りかえて、再び列車で札幌です。」


三原は愕然とした。 九州とは正反対の北海道とは・・・・・。


念のため、後日同じルートで青森まで行き、調べてみるが
乗船記録にはちゃんと安田の署名があった。

そして札幌の取引先へ安田と会った人物に話を聞きに行くのだが、
あの日確かに、安田が来たという。
列車を遅らせたら、約束の時間には間に合わない。
お時と佐山の死亡時刻を考えるとやはりあの列車に乗ったのか・・・・三原刑事はがっくりと肩を落とした。

ただ、気になる話が2つ聞けた。


1つは、急ぎの用事だと言ってわざわざ札幌までやってきた安田だったが、
その内容は特別、急ぐものではなかったという。 そこを不思議に思ったそうだ。

2つめは、安田との待ち合わせが駅のホームの待合室だったということ。
もし、安田がこの事件にかかわっていて、あの列車に乗って札幌にやってきたという事実を
証明したかったとしたら、駅の待合室ではなく、駅のホームを待ち合わせ場所にするはずだ。
わざわざ待合室にしないといけない理由が何かあったのだろうか・・・。




はたしては安田は佐山とお時が死んだ夜、九州へ行き二人を青酸カリで殺害し、
その後、九州→北海道へ行き、指定時間に取引先の人物と会う。 
そんなことは可能だったのでしょうか?

はたして動機は? 

お時の消えた5日間の謎は?





※今回も内容を思い出しながら書いたので、微妙に違うところがもしかしたらあるかもしれません。


今でこそ当たり前のように見かける、”アリバイを崩す系”の推理小説ですが
この「点と線」はこの時代の日本では、その先駆けだったようです。

この小説は昭和33年に書かれたものです。
アリバイトリックに関しても「三原刑事、なんで気づかないの」と思うような箇所もあるのですが、
そのへんは時代背景が今とは違うことも関係しているかもしれません。
この時代は新幹線もなければ、携帯電話もありません。

それでもこのトリックは一部はわかったものの、全ては最後まで読み終わるまで
わかりませんでした。
用意周到に何十にも重ねられたアリバイで、実際事件でこれだけされたら捜査も大変でしょうね(笑)


個人的に気になったのが、三原刑事の登場シーンで
「三原刑事。 警視庁に勤める32,3歳の中年の刑事である。」って書いてあったことですね。

32,3歳って・・・・・ちゅ、中年なんですね(笑)


松本清張と言えば、たまにテレビドラマをしていますが、
私は「黒革の手帳」と「けものみち」が好きでした。

この「点と線」も放送していたようで、もし見る機会があれば見たいですね!