#50「Contact」
「実際に手を下したのはチャンミン」
その言葉を聞いたユノは
急激な焦燥感に襲われた。
一瞬、Chloeと目を合わせた後で
遥か彼方を見るかのように視線を空間に泳がせる。
燻ぶり続ける微かな記憶を辿るように。
そんなユノの姿を見守るしかないのだが、
2分も経たないうちにドンへが声を掛けた。
「あ~、無理すんなって。いくら焦ったって今のお前には理解出来やしないよ」
思いやりのつもりでそう言ったのだが、
ユノにとっては神経を逆なでされただけに過ぎない。
「、、、またそうやって俺を見下すんだな。は(笑)、そりゃそうか。自分たちは何もかも知ってるんだもんな。バカにするのも当然か」
「、、、っだよ、その言い方!俺はただ、」
神経過敏な状態の時は
一触即発になって当然だ。
Chloeは半ば呆れて声を張った。
「あーーうるさい!、、、ユノ、ドンへの言う通り、あなたが今いくら理由を突き止めようとしても無理。自然の流れに任せて生活するしかない。今までのように」
「なんで無理って決めつける?」
「ざっくり言えば、あなたはこの世に放りだされ、長い年月を掛けて試されてる途中。チャンミンも同じようにね。だから今、全てを把握しようとしても無理なの」
「この世に、って、、、じゃあなんで君達は色々把握してるんだ?」
「そりゃ、俺たちは立場が違うから」
「知っているなら、最初から俺に話してくれれば、、、」
「あなたはテストを受ける時にカンニングなんてしないでしょう?それと同じ。自分の力でクリアしなければ何の意味もない」
自分の選択を信じて、今まで通り暮らしなさい、と
Chloeが念を押したところで、
ちょうど昼休み終了のチャイムが鳴った。
同僚たちも次々と戻って来たのだが、
みな揃って、フロアTOP3の顔色を伺ってぎこちない。
それを察したChloeとドンへは、
安心させるように言葉を掛けた。
「余計な心配しなくて良いから、みんな仕事に集中して」
「そ~そ~、俺たち大人なんだし仲良しなんだから~~」
大半の者はつられて笑い、
通常通りの業務に戻ったが、
ユノだけはなんの反応も示さずに、
自分の席に着いてぼんやりとしていた。
およそ信じがたい話の内容に
今生きているこの時でさえも
架空世界のような気がして
パンパン、と両手で頬を叩いてみた。
「痛ってぇ、、、」
それを見ていたドンへは自分の鞄から
2本のUSBを取り出してユノの元へ向かい、
Chloeに背を向ける位置に立って
唐突に仕事の話を始めた。
「これ、貸してやる。お前が今進めてるトラベルプランの資料。役に立つと思うから目を通して。家に持って帰って良いから、じっくりと、な」
「有難いけど、あそこは元々俺が住んでいたところだし、バリスタ修行中のチャンミンと出逢った場所だからよく知ってるよ」
「そう。それだよユノ、、、」
そこまで言うと、ドンへは姿勢を下げ
Chloeに聞こえないような小さな声で呟き始めた。
「俺からのヒント。Chloeに怒られるから手短に言う。なぜお前たちが揃ってわざわざあの国のあの場所に行って出逢ったと思う?導かれてるとは思わない?」
「、、、そんなの、たまたますべての条件が揃ってたからだろ」
「本当にそうかなぁ?、、、この2本のUSBには、大量の写真やその場所の説明が保存されてる。見終わったら感想プリーズ。じゃ、そういう事で」
ドンへが置いて行った、
雪の結晶のチャームがついたUSB。
ユノはそれを胸の内ポケットに入れ、
その日はそのまま家に持ち帰った。
────
「ただいまー」
午後8時を過ぎた頃、
仕事を終えて真っすぐに帰宅したユノは、
いつもと同じようにそう言いながら
玄関の扉を開けた。
チャンミンが出迎えてくれるかも、と
淡い期待を抱いていたのだが
それは儚くも破れ、
代わりに何やらリビングから
賑やかな話し声が聞こえてくる。
ふと足元を見ると、
綺麗に揃えられたチャンミンの靴と
その隣に女物とも男物とも不明な
派手なサンダルがある。
「、、、これはヒチョルのだな。あいつまさか、今朝からずっと?、、、ったく、」
今日は感情の起伏が激しくてとても疲れていたから、
チャンミンと静かに過ごしたいと考えていただけに
がっくりと肩が落ちるくらい
深いため息をついた。
それでも、チャンミンの楽しそうなお喋りや
明るい笑い声が聞こえてくると
つられて自分も笑ってしまい、
まぁ良いか、という気分になって
ただいま、と言いながらリビングのドアを開けた。
「あ!!おかえりなさい、あーもぅ、僕、、、失敗した。、、、気が付かなくてごめんなさい」
「え?、なんで謝るの?ただいまって言える人が居るだけで幸せ。ただいまチャンミン♪」
そう言って上着を脱ぎながら
チャンミンの頬にキスをした。
もちろん、ヒチョルが居るとわかっていて、だ。
「ちょっとさ~~~、人の目の前でよくそんな、、、ってかちっとも変わらないって言うか、、、とりあえずおかえりなさい、って言っとく」
「(笑)、ただいま、っていうか、、、ねぇ、俺今朝、用事が済んだらすぐ帰ってくれって言ったよね」
「言ったね。聞いた」
「あのさ、ユノ、ヒチョルさんは、」
「じゃなんでまだ居るんだよ」
「あ、いや、あのねユノ、」
「あんたって、ほんとバカ?用事が済まないから居るに決まってんじゃん」
「なんの用事だって?」
「ひとつめは夕飯ね。先に食べてようと思ったけど、チャンミンがあんたが帰るまで駄目って言うから待ってあげてたんだよ?」
「うんうん、そうそう」
「なんで上から目線。じゃ、食べたら帰ってくれよ」
「いいえ。用事がもうひとつ。あなた達に、少し話しておきたい事があるの。、、、ま、とにかく早く着替えてらっしゃい。高級スーツに食べこぼしちゃ大変」
「着替え、手伝うよ。ほら、こっちこっち」
「待ってる間に写メってるから早くしてね~」
つづく
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
こんばんはー♡
久しぶりの「秘密」更新♪
少しずつ、ビミョーーな匙加減で書いていますが、
わたしのお話しを気に入って下さり
こちらに訪れて下さっている常連様がたは
たぶん、わたしの嗜好を熟知していらっしゃると
思いますので、、、
「あの言葉に隠されている意味はもしや、、、」
とか
「この人達はもしかして、、、」
とか
そんな予測をしつつ読み進めて
楽しんで下さっているのでは、、、
もしそうだったら嬉しいなぁ、と考えながら
書いています( ̄▽ ̄)
コメントありが㌧でした
リコメ完了しています
インスタをフォローして下さった読者様
ありがとぅございます~
ワーイヽ(゚∀゚ヽ 三 ノ゚∀゚)ノワーイ
あちらはほぼ毎日更新していますので
お時間ありましたら是非
チラ見してやってくださいませ
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