「秘密」#29「Confession」
一人になったユノは時間と空間を持て余していた。
新しい家具に囲まれて、
部屋は確かに満たされている。
気持ちも同じように。
むしろ、今までの人生で一番と言える程。
それもそのはずだろう。
ユノは今まで跡取りとしてひと際大切に育てられ、
何不自由なく何でも与えられてきたのだが、
幼いころから常に使用人が付いており、
英才教育のためにスケジュールも管理され、
学校に通っていても、気軽に「友達」を作る事さえ難しい状況だった。
大人になって自社へ勤めるようになっても、
「御曹司」として然るべきポジションに就かされていたから
対等に接してくれる社員などいるはずもない。
近寄りがたいのは仕方がないとはいえ、
成長するにつれて虚しさが上回っていった。
傍から見れば贅沢な悩みかもしれないけれど、
本人にとってはシリアスで切実なものだ。
ところが今回は
たった一人で飛び出してきたも同然なわけで、
暮らしに不便はあるけれど、代わりに自由が手に入り、
支社でも殆どの社員には自分の立場を知らせてないおかげで、
普通に受け入れてもらえている。
とりわけ、
Chloeとドンへに関しては、
身分を明かしても尚、あのフレンドリーさ。
チャンミンとヒョクチェだって、
よそ者の自分を何の抵抗もなく仲間に入れてくれてくれたので、
つまりユノにとっては、初めての「友達」であり、
ベストフレンドなわけだ。
でも、あまりに楽しい二日間だったせいか
何かをするのが億劫になるほど、
強烈な余韻がユノに被さっていた。
「、、、小腹空いたけど、なんか作るのも面倒くさいな。ちょっと早いけどシャワー浴びて寝るか、、、」
寝転がったまま大きく伸びをして
頭を掻きながらバスルームへ向かった。
「ん?、、、ここの風呂ってこんなにピカピカだったっけ?、、、チャンミンが掃除してくれただけで、なんでこんなに感じが違うんだ?」
どこがどう変わった風でもないし、
ユノ自身も簡単な掃除くらいは毎日していたから、さほど汚れて居なかったはず。
でもなぜか、いつもよりとても綺麗で気分が良い。
「、、、なんだかなぁ(笑)、俺に必要なのはチャンミンみたいな、、、なんて、これは禁句(笑)」
無意識に口をついて出た台詞に口元を緩ませ、
その夜は珍しく、少しだけブラインドを上げて
夜景を眺めながらバスタブに浸かった。
「風呂入ったら余計腹減って来ちゃったな、、、んー、困った、、、、」
チャンミンに料理を習っているのだから、
簡単な食事くらいは作れる、、、けど、
何しろ面倒くさい。
~~♪
「ん、電話、、、チャンミンから?、、、はい、もしもし?どうした?」
「あ、お疲れのところごめん。チャンミンだけど」
「知ってる(笑)、忘れ物でもしたのか?」
「そうじゃなくて、あの、」
「あ!あのさ!、チャンミン風呂になんかしたのか?」
「え?なに?」
「だって、なんかいつもよりめっちゃ気持ちよく風呂に入れてさ、」
「、、、あは(笑)、特別な事は何もしてなくて、僕がしたのはごくシンプルな事だよ。シャンプーやなんかの向きを統一したり、鏡の曇りを取った程度」
「それ、俺してなかった?」
「してなかった」
「、、、そうかなぁ」
「、、、ねぇ、そろそろ僕の話ししていい?(笑)」
「あ。そうだった」
チャンミンは電話の向こうで
なにやら笑いをこらえているようだったが、
ユノの頭にはハテナマークが浮かぶだけ。
「なんだよ??なに??」
「(笑)、ごめん、ごめん。ユノらしいと思ってw、あのさ、お腹空いてるんじゃない?あのままだとどうせ、何もしないで寝ちゃうつもりでしょ?冷蔵庫見てよ。残った材料で簡単なもの作っておいたから」
「ええええええ!!チャンミン!!!」
「、、、っるさいな!鼓膜が破れる!!けど、その様子だと図星だね。サッサと食べて早く寝て。じゃ、また明日」
「あ、待ってチャンミン。、、、ありがとな、、、と、、、大好きだ」
「はいはい。じゃあね。おやすみ」
チャンミンはあしらう様に返事をして
直ぐに電話を切った。
「、、、今はこれが精一杯(笑)、、、大切な友達だから、、、」
ユノは小さな溜め息交じりにクスッと笑い、
スマートフォンを静かに置いた。
つづく
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
暑い~~~
子供たちは夏休みに入ったけど、
わたしにとっては全然休みじゃない、、、
インスタは毎日更新しています![]()
どんなにくだらない内容でもね、、、、
(ΦωΦ)フフフ…
前回「夏のある日」にコメントくれた、
ま~さん
ヒロちゃん
ありがとぅ~♪
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