Snowy prince・166「Snowy」
「俺は城には戻らず、このまま山へ行く」
「、、、えっ」
長い事留守にしていた僕たちの城へ、
やっと戻れるというのに、ユノときたら突然そう言う。
しかも迷いなど微塵もない顔をしているのだから
反対なんて出来やしない。
だけど、せっかくここまで帰って来たのに、
ホビット達に顔も見せないで行ってしまうなんて。
「あの、、、ね、ユノ。今すぐにじゃないといけないの?」
「そうですよ、ユノ先生。何度も言ってる様に城ではホビット達が、」
「分かってる。悪いな。、、、でも、ゆっくりしてられないんだ」
「、、、献上する宝石の為とは言えさ、一旦お城へ戻って一晩でも寝てから出直せば良いじゃん」
「今すぐに取り掛かりたいんだ」
「、、、じゃぁ僕はたったひとりで夜を過ごすの?」
「チャンミン、、、、、」
ユノは一瞬困った顔をして僕の肩を抱き寄せ、黙っていた。
本当は言うべきではなかったと直ぐに後悔してる。
だけど、夜になればミノや公爵はもちろん、
使用人やホビット達でさえ自宅に戻ってしまうだろう。
ヒニムだって敷地内に家があるとはいえ、別棟だ。
王族たちが戻らない今、あの広い城の中には僕だけになって
人の気配が一切無く、過ぎる程に静かな夜となってしまうから
つい、本音がでてしまった。
「、、、、ごめん。これじゃ駄々っ子と同じだね」
「あのさ、俺、こっちに戻ってきてから、、、っていうか、王国が近付くにつれて、なんだか力が溢れる感じが続いてんだ。実はこう見えて、今だって居ても立っても居られない程だ」
「ふぅ、、、ん。要するに、人間界では上手く力が発揮できなかったけど、今なら出来る!みたいな感じ?」
「それ。そんな感じ。で、さっきから密かに試してみてるんだけど、ほら。見て」
そう言ってユノは、手のひらを上に向けて
両手を前に出し、一度ぎゅっと握ってからゆっくりと開いて見せた。
「、、、あ、、、あぁ、、、あーーーー!」
「ちょーーーー!!すごいじゃん!!!」
「ほ~ら。な(笑)」
驚いた。何てことだ。
利き手には炎が揺らめき、反対側はパウダースノーが
手のひらを包むようにフワフワと舞って、
ちっとも解けずに積もり始めているじゃないか。
向うに居た時は、毎晩くたくたになるまで何度やってみても、
小さな雪の一粒も出せなかったというのに。
「(笑)、やっぱりここは君のホームなんだね。自分の持つ能力を最大限引き出せるんだからさ」
「それだよ、それ(笑)、、、だからさ、早く最高の宝石を献上して、火の国と融合させて、みんながより良い暮らしを、安心して過ごせるようにしたいんだよ。一日も、、、一刻も早くね」
「、、、うん。、、けど、やっぱり僕さみしいから付いていくよ」
「ああああ!だめだめ!、チャンミン、申し訳ないけどすぐに目を通して貰いたい書類が山ほどあるんだ。これ以上放置出来ないんだよ」
「、、、ハァーーー、、、、そうか、、、そうだよね、、、、」
ミノの話によると、みんなが帰国した順番に
また一から住民登録など役所の手続きを始めていて、
それら全ての事に対し、王の最終的なサインと許可が必要だとの事。
王族方の、地位と財産放棄の件についてもだ。
「、、、仕方ない。じゃぁ、ユノ。僕は大人しく留守番して、」
「って言うかさ、、、、あんた達揃いも揃って大事な事忘れてるわ。はい、質問。僕が一番得意とする能力は何だ?忘れたの?」
「、、、あ!!!そっか!そうじゃん!ヒニム~~(笑)」
「そうでした(笑)」
「繋げてあげるから、とにかく城に戻りマショ。あー無駄な時間費やした(笑)」
そんなわけで、僕たちは無事に城へ戻り、
ミノが言ってた通り、イラついたホビット達に
遅い!と第一声を噛まされたけれど、
大が着くほど歓迎してくれる彼らとハグを交わした。
彼らとはよく連絡を取っていたとはいえ、
やはり直接会うと感激する。
いつも僕たちの陰になり日向になって、
無償の愛で支えてくれる心優しいホビット達。
心から会いたかった。
それから彼らは、風呂にでも入ってゆっくり疲れを取ってと言って、
僕たちの荷物をそれぞれ部屋まで運んでくれた。
ユノは靴も脱がずにすぐベッドに寝転がり、
側を通りかかった僕の腕を急に引っ張ったから受け身も取れず、
つんのめるようにベッドになだれ込んでしまった。
ふたりしてしばらく、ひさしぶりのフカフカなベッドで
子供のようにスプリングに体を弾ませて遊び、
やっとここへ戻ってきた安堵に浸っていた。
その一時間後、ユノはヒニムに頼み、
裏庭の一角に原石の山へと繋がる空間を開けて貰った。
「、、、俺はあの日、石長(いしおさ)から全ての権限を相続した。、、、だから今は、石長として二人の入山を許可します。どうぞ一緒に来てください」
王である僕でさえも、足を踏み入れたことのない
貴重な原石の山。
ユノに手を繋いでもらい、初めて足を踏み入れた。
つづく
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
今回もSnowyに会いに来てくださり、
ありがとうございます♪
不定期更新ですが、最後まで書きますでな(∩´∀`)∩
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以前購入したモバイルバッテリーが壊れてしまったので、
今回新しいのを買う事にしたのですが、
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