今朝の朝ドラ「あんぱん」を観ていて、大塚楠緒子の「お百度詣」が思い浮かびました。
日露戦争に出征した夫の無事を祈る妻の心情を歌い、与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」と並ぶ厭戦詩として知られています。
ひとあし踏みて夫(つま)思ひ
ふたあし國を思へども
三足ふたたび夫(つま)おもふ
女心に咎ありや
朝日に匂ふ日の本の
國は世界に只一つ
妻と呼ばれて契りてし
人は此世に只ひとり
かくて御國と我夫と
いづれ重しととはれなば
ただ答へずに泣かんのみ
お百度詣ああ咎ありや
与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」は思いを隠すことなく、激情のままに歌い上げ、強い非難を浴びたけど、大塚楠緒子の詩は秘かに多くの人の共感を呼んだのではないかと思います。
さらに時代を経て軍事国家となった「あんぱん」の時代、「立派だ」「お国のために」「英霊」という言葉により嘆き悲しむことさえ抑え込まれてしまうことの恐ろしさを感じました。
「もんてきて(戻って来て)」
「嘘っぱちや」
「豪ちゃんに会いたい」
蘭子の素直な言葉に胸が締め付けられました。
のぶは、「愛国の鑑」と言われ、お国のために死ぬことを「立派」だと言わざるを得ず、教師として子供達にもそう教えなければならない立場です。価値観が覆る戦後ののぶの苦悩を思うと辛くなります。
いつの日も、人として情が大事にされる世の中であって欲しいと思っています。