吉原は苦界だとわかって覚悟して観ているけど、今回はその現実を突きつけられるかと、あまり観たくない気分でした。

だけど、ほんの一瞬の夢を見た瀬川の哀しさ切なさ、そして潔さが染み入る見事な回でした。


駆け落ちを計画した蔦重が通行切手を挟んで渡した貸本が、近松門左衛門の人形浄瑠璃『心中天網島』だったというのがすごいです。

本の感想と見せかけながら

「このバカらしい話を重三がすすめてくれたこと、きっとわっちは一生忘れないよ。とびきりの思い出になったさ」

と語る瀬川。

「しお」の名前が書かれた半分に切った通行切手とボロボロになった赤本『塩売文太物語』を大事に持って、身請けされていくのでしょうね。


せめて鳥山検校と幸せに暮らして欲しいのだけど、ヒルのような高利貸しのもとに身請けされることに反対した蔦重の言葉が伏線となっていて、この先待ち受けているものを知っているだけに辛いです。