最終回の紀行で、『湖月抄』に少し触れられていました。
『湖月抄』は、江戸時代に刊行された北村季吟による『源氏物語』の注釈書です。
書名は、紫式部が石山寺に参籠して、仲秋の名月が琵琶湖に映るのを眺めて、「須磨」の巻を書き始めたという伝説に由来しているそうです。
現存する最古の注釈書は、平安時代後期に藤原伊行によって書かれた『源氏釈』です。
その次に古いのが、鎌倉時代初期の藤原定家による『奥入』です。
その後も数多くの注釈書が書かれましたが、室町時代初期の四辻善成による『河海抄』が初めて作られた本格的な『源氏物語』の注釈書と言われています。
また、一条兼良は『花鳥余情』など『源氏物語』についての多くの著書を執筆しています。
『湖月抄』は、過去の注釈を記載したうえで自説を加えており、明治時代以降も『源氏物語』を読むための最良の注釈書として重宝されました。
与謝野晶子が訳本を書く際にも使用したそうです。
その他によく知られているものに、江戸時代後期に本居宣長により書かれた『源氏物語玉の小櫛』があります。「もののあはれ」論で有名です。
それぞれの時代の国文学者達が注釈書を執筆し、繋ぎ続けたことで、今日も『源氏物語』を読むことができます。
作者複数説や執筆順、「雲隠」や「輝く日の宮」の存在などのたくさんの謎が、1000年以上も研究し続けられていることも感慨無量です。