先週、ついに『源氏物語』が誕生しました。

執筆にあたり、道長から大量の高級越前紙の提供を受けていましたが、『源氏物語』の完成にはどれ程の料紙が必要とされたのでしょうか?


「光る君へ」の時代考証をされている倉本一宏氏による考察記事を見つけました。



一部抜粋します。


『源氏物語』は全編五四巻で、数え方にもよるが九四万三一三五字である。これを記すためには六一七枚の料紙が必要となる。


これは清書用の料紙の問題であり、下書き用の紙や、書き損じて反故(ほご)にした紙は、膨大な量にのぼるはずである。これに改行分を加えれば、さらに大量の料紙が必要となる。表紙や裏表紙用の紙も勘定に入れていない。また、これは一紙一六〇〇字で計算してみた枚数だが、一紙を袋綴(ふくろとじ)にして表に四〇〇字を書いた場合には二三五五枚という、気の遠くなるような清書用料紙が必要となってくる。


紙が貴重であった当時、いったい中級官人の寡婦(かふ)にして無官の貧乏学者である為時の女である紫式部に、これほどの料紙が入手し得たものであろうか。


『源氏物語』という物語は、はじめから道長に執筆を依頼され、料紙の提供を受けて起筆したものであると考えたい(倉本一宏『紫式部と藤原道長』)。


『源氏物語』は、夫を亡くした失意を紛らすために執筆を始め、それが評判になり、その後道長から彰子サロンへの出仕要請を受けたというのが通説です。


貴重な紙の調達の観点から、当初よりの道長というパトロンの存在を考察している倉本氏の新説は、大変興味深く感じました。


いよいよ今日は、出仕ですね!