今週は、寅子の怒りの意味が理解できなくて、困惑してしまいました。
寅子が怒ったのは
「結局私は大岩に落ちた雨垂れの一滴に過ぎなかった」
という穂高先生の言葉に対してかと思います。
寅子は
「先生に自分も雨垂れの一滴だなんて言って欲しくありません」
「女子部の我々に、報われなくても雨垂れの一滴でいろと強いて、その結果歴史にも記録にも残らない雨垂れを無数に産み出した」
と思いをぶつけます。
「雨垂れ石を穿つ」は、『虎に翼』の中で何度か登場しています。
本来この言葉は、小さいことでもコツコツ続けていけば、成功につながるという意味です。
ところが、寅子が妊娠した時、穂高は
「“雨垂れ石を穿つ”だよ」
「君の犠牲は決して無駄にはならない」
と発言しています。
この時、穂高と寅子の中に「雨垂れ=犠牲」という共通認識ができてしまったのかもしれません。
ここで思い出すのが、与謝野晶子の
劫初よりつくりいとなむ殿堂に われも黄金の釘一つ
という短歌です。
芸術という殿堂に、黄金の釘を1本打ち込んだと、高らかに歌っています。
たった1本の釘、一滴の雨垂れを黄金と見て誇りに思うことができるかどうかですが、穂高の「雨垂れ」には、まだ道半ばであるにも関わらず年老いて成し遂げられない無念さと、後進に託したいという思いがこめられているかと思います。
寅子は、女子部を創設したこと、その中で頑張った仲間のこと、そして自分という女性裁判官を作ったことを穂高に誇りに思って欲しかったのではないでしょうか?
もしそうだとしたら、寅子の怒りはやはり幼いかと感じます。
桂場の言葉どおり寅子は「ガキ」なのかもしれません。
次週予告で花江が見せた怒りが、寅子を大人にしていくのでしょうか?