『源氏物語』の「玉鬘」の巻に登場する「歳暮の衣配り」は、源氏が紫の上、明石の姫君、花散里、玉鬘、末摘花、明石の方、空蝉へ贈る新年用の衣を選ぶ趣深い場面です。


源氏が紫の上に、選ぶものからその人の容貌を想像しようとしているのでしょうと指摘します。


その紫の上には、一番最初に「紅梅のたいそうくっきり紋がうち出ている葡萄染めの小袿と、流行色のとても素晴らしいもの」が選ばれています。


紫の上が表情に出さないけれど、ただならない関心を寄せているのが、玉鬘の衣装選びです。

選ばれた「曇りない赤に、山吹の花の細長」を見て、「父親の内大臣が華やかで美しいけれど、優美なところがないのに似たのだろう」という言葉どおりだと想像します。


「梅の折枝に、蝶や鳥が飛び交い、唐風の白い小袿に、濃い紫の艶やかなものを重ねて」あるのを見て、紫の上は、明石の方は気品がある人なのだろうと想像して憎らしく思います。


源氏がそれぞれの女君達をどのように思っているのかを選ばれた衣装から推測する紫の上のちょっと意地悪な感想や嫉妬が面白く感じました。


贈られる女君の方も、源氏が選んでいる場に紫の上がいたと知ったら、やはり気分が良いものではないように思います。


美しい衣装の描写で読者を楽しませながら、人間模様を織り込んでいく紫式部は、やはり上手いですね。