辻村深月著『傲慢と善良』を読みました。
このタイトルで、ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』が思い浮かぶ人が多いかと思います。
『高慢と偏見』は随分昔に読んだけど、あまり面白く感じなかったので、近年、映画化された作品は、美しい風景や衣装には興味がありつつ観ていません。
『傲慢と善良』が、結婚がテーマの恋愛小説であろうというのは、タイトルを見た瞬間、推測できましたが、あまり興味は持てませんでした。
それでも読んでみようと思ったのは、著者の小説は新刊が出ると、比較的よく読んでいるからです。
辻村深月さんの小説は、前半心理面を丁寧に掘り下げていて、面白く感じ始めるまでにかなりの頁数を要します。
後半になると、物語が動き始め、面白くなるのですが、そこまで読むのは、私には結構我慢が必要です。
本作は、テーマの「婚活」に興味が持てなかったので、特に読み辛く感じました。
周りの人達がそれぞれ、婚活が上手くいかない理由に「傲慢」や「善良」という言葉を用いながら語ります。一見もっともらしく、納得しそうになるけれど、本人の前では「善良」な顔をしているであろう人が、実は心の中で分析していて、しかもそれをしたり顔に語るということに、読んでいて居心地の悪さを感じ、それこそが「傲慢」なのではないかと思いました。
と、随分前にここまで書いたところで、中断していました。
再び読み始めたら、物語もちょうど動き始めました。
前半では、人からの評価でしかわからなかった主人公が表に現れることで、物語の薄気味の悪さが消え、読みやすくなりました。
後半は、辻村深月さんらしく、読後感の良い小説となっています。