Kバレエの「クレオパトラ」は、期待をさらに超える素晴らしい作品でした。


観る前は、歴史物なのでもっと難解かと思っていました。また、オペラの「アイーダ」のような重厚な舞台を想像していたのですが、壮大でありながらすっきりした舞台美術で、ダンサー達を主役として効果的に際立たせていました。

展開もわかりやすく、ドラマティックで、物語の世界を楽しめました。

官能的な衣装や踊り、残虐なシーンもまた、古代エジプトを象徴して、エキゾチックさを強調していました。

出演者の豊かな表情をしっかり見ることができるのは配信の魅力の一つです。


飯島望未さんのクレオパトラは、とても可愛らしく感じました。

クレオパトラというと、エリザベス・テーラーが思い浮かぶので、肉感的で妖艶で男性達を破滅に追い込む傾国の美女というイメージがありました。飯島さんは、新しいクレオパトラとして新鮮に感じられました。

シックスオクロックポーズの公演ポスターが迫力があるので、強い女王として描かれるのだと思っていました。

飯島さんのクレオパトラを観ていると、権力者である男性の庇護にすがることが、政争を生き延びて、女王としての地位を確立するために必要だったのだと強く考えさせられました。

美しく、残虐なクレオパトラが、少しずつ人間味を増していくのが見応えがありました。アントニウスとの関係においては、打算だけでない愛情が微笑ましく、最後の慟哭に胸が締めつけられました。


ブルータスに大きく焦点を当てているのも、興味深く感じました。

有名な「ブルータス、お前もか」という言葉により、シーザーとブルータスはもともとは信頼関係にあったのだとわかります。

奥田祥智さんのブルータスは、側近というより小姓という雰囲気で、シーザーを慕っているからこそ許せなくなったのだと感じました。


エジプトとローマの衣装や踊りの対比がはっきりしていて、エジプトの4人の女性のエキゾチックな踊り、オクタヴィアの踊りの優美さを両方楽しむことができました。


杉野慧さんのオクタヴィアヌスは、表情が凛々しくてカッコ良かったです。

戦いのシーンで、兵士達が力強く踊っている後ろに、いつの間にかアントニウスが現われて傷ついていく演出は面白く感じました。


クレオパトラの最期は毒蛇は登場しなかったけど、過去の男達が一人ずつ登場して、とても印象的でした。

忘れられないラストシーンです。


幕が閉じて、再び開いたら、おお!となりました。カッコいい!

飯島さんのスタイルの美しさに見惚れてしまいました。

その後のカーテンコールで、登場する男性ダンサーがみんな傷だらけ、血だらけ。みんな殺されたんだと思うと生々しい。


ああ、語り尽くせません。


ストーリーに夢中になって、バレエとしてじっくり観ることもまだできていません。

アーカイブは明日の夜まで観られるそうなので、もう一度観ようと思います。