『トーマの心臓』が、少年愛の話ではないということは、ストーンと心に落ちました。
それは、おそらくリアルタイムで連載を読んだ少女達、そして少し遅れてコミック化されたものを読んだ私達の中で、少年愛の漫画としては捉えた人は少なかったのではないかと思うからです。
雑誌『JUNE』の刊行は、もう少し後の時代で、これより後に読んだ人達とは感じ方が異なるかもしれません。
また、森茉莉さんの耽美小説(この時点での私は未読)などの存在を知っていたら、もしかしたら違う見方をしていたのかもしれません。
繊細な世代の少年達による物語ではあるけれど、相手が同性であることは必然ではないと思います。
『トーマの心臓』については、もっと神の愛に近いテーマを感じていました。
著者ご本人によると、「愛以前の混沌とした人間関係の話」だそうです。
本題については、著者が後書きで書かれたように「おそらく大人として落ち着いて聞いてくださるのではないか」という気持ちに応えることができたと思います。
私の少女時代を豊かに彩ってくださった漫画家の皆様への感謝と共に、穏やかな生活の中で創作した作品を読ませていただけることを今後も楽しみにしています。