震える人魚姫の手に何度も何度もナイフを握らせようとする海の魔法使い。

失った尾ひれを人魚姫に渡すと、中から出て来たナイフ。

ついに人魚姫はナイフを手にします!


ゴルフをして遊んでいる王子にぶつかって、ナイフを落としてしまいます。

王子は人魚姫が自分を刺そうとしたとは思いもしない様子で、ナイフでフェンシングの真似をしたり、呑み込むふりをしたりしてふざけます。

どこまでもお気楽な王子と人魚姫のパドドゥが始まります。

笑顔の王子と慟哭の表情の人魚姫。


ここで初めて王子に腹が立ってきました。

こんな状態の人魚姫を見てまだ気づかないなんて、どこまで鈍いの?

それとも愛することができない相手だから、冗談事にしてしまおうとしているの?


ついに顔に両手を当てて泣き出した人魚姫を、王子はくすぐったりします。

顔を近づけてキスを待つかのような人魚姫にこれまで何度かしたアッパーカットの真似をして、額にキスをして去って行きます。


自らを激しく打ち、床を這いずり泣き叫ぶ人魚姫。

苦しみから逃れるかのようにポワントを脱ぎ捨て、ドレスを引き剥がすかのように脱ぎ去ります。

白いキャミソールドレスだけになった人魚姫の人魚像のポーズが、哀しくも美しいです。


再び狭い箱の中、苦しみ息絶えようとしている人魚姫のもとに、詩人が姿を見せます。


シンクロしながら、静かに踊り始める二人。

いつしか背景は暗闇となり、少しずつ星の光が増えて行きます。

二人の美しさにやりきれない想いが少しずつ浄化され、心が癒されていきました。

天国に昇ったというより、仏の慈悲に包まれているかのようです。


客席にいたら、深い余韻でしばらく拍手もできなかったと思います。