一生懸命王子の視線の中に入りたくて、まとわりつく人魚姫。

健気で愛らしいという印象すらなくて、ひたすら哀れです。

プロローグで、親友にすがりつくような視線を向けていた詩人の姿と重なります。

エドヴァードにとって、同性である詩人が恋愛対象になりようがなかったように、人魚姫もまた、王子の目には恋愛対象として全く映っていないことが残酷なくらいはっきりわかります。


王子と王女が口づけするのを見て、人魚姫が意識を失ったところで第1幕が終わります。



バレエの男性主人公は酷い男が多いけど、「人魚姫」は原作童話の王子がそうであったように、人魚姫に戯れの恋を仕掛けたり、浮気をしたわけでもありません。

期待を持たせるような思わせ振りすらありません。

最初から最後まで、人魚姫と詩人の叶わない恋です。


だから、観客としても恋の成就を願うこともできなくて、ため息をつくしかない心境です。