感服いたしました(丿 ̄ο ̄)丿
大人バレエの強みは、頭で考えて理解しながらレッスンを受けられることとよく言われますが、
アニエス・ルテステュは、子供の頃から、深い洞察力を持って、レッスンが意味することを理解していたのですね!
バレリーナの伝記というと、どちらかといえば、厳しいレッスンや環境を乗り越えて、努力の末につかんだ成功物語というものが多かったかと思います。
本書は、そういうものではなく、実際にその役を踊ったバレリーナとしての解釈、振付への考察があり、とても興味深く読めました。
例えば、
「オディールを演じるとき、王子に対しては、オデットと同様の優しさを見せ、ロットバルトと観客に対しては計算高く、悪意ある表情」
を見せるようにしていたそうです。
「オディールが、オデットとまったく違う素振りを見せていたなら、どうして王子が一瞬、オディールとオデットを見間違えることがあったでしょう?」
どのようにしていたかも細かく書かれていて、面白かったです。
その他にもたくさんの役について考察されていて、すでに観た演目やまだ観ていない演目でも、実際に踊っている映像で確認したくなりました。
また、演技の違いが、研究によるものでなく、気分や感情によって生まれたり、別の解釈をする新たなパートナーには、彼らに合わせて違う演技で踊ったり、偶然の要素に左右されることで、高揚感の一部を作り出していたりすることを読んで、とても興味深く感じました。
それこそが観客にとっても、舞台を生で観ること、同じダンサーの同じ役を繰り返し観ることの魅力につながっているのだと思いました。
振付家のこと、音楽のこと、衣装デザインのことなどすべてにわたって、深い思慮が行き届いていることに驚かされます。
パートナーについての項では、バレリーナがたくさんのパートナーと踊っていることを普通のことと捉えていましたが、実は大変なことだと改めて感じました。
「椿姫」のリフトは、不測の事態によるパートナーの変更には応じられるものではないことは、とてもよく理解できました。
パリ・オペラ座のエトワールとして選ばれた人の凄さを今さらながら再認識しました。
