ミラノ・スカラ座(1996年収録)の「ジゼル」を観ました。





フェリのジゼルの純粋さ、清らかさに、心を打たれました。

第一幕では、少女らしい可憐さが愛らしくて、心が壊れてしまうまでの流れが自然で、健気で可哀想で仕方ありませんでした。

アルブレヒトとヒラリオンが責任を押し付けあう様子が腹ただしかったです。
ロイヤルバレエを観た時は、それほど酷いことをしたと思えなかったヒラリオンがウィリに殺されてしまうのが気の毒だったけど、こちらでは、ジゼルの気持ちを傷つけることに平気な身勝手な男に思えました。

アルブレヒトのマッシモ・ムッルは、細身のラインのダンサーなので、フェリと並ぶと二人のシルエットがとても美しく感じます。
苦労知らずの貴族で、自覚が足りない愚かさを感じました。
第二幕でのジゼルの崇高さを際立たせる上で、アルブレヒトという人物が、客席にどのように伝わっているかが大切だと思います。

第二幕のウィリのコールドが、素晴らしかったです。
舞台を上から写した映像が何度か使われていましたが、ぴったり揃ったラインが流れるように変化していく様子が、とても美しかったです。

第一幕で幼さを残していたジゼルは、世俗的なものを一切削ぎ落として、透明な美しい存在になっていました。
恨みを残しているミルタは、まだ人間らしい濁りを感じます。
フェリのジゼルは、崇高な慈愛を感じて切なくなりました。

すべてを許しているジゼルですが、また夜が来ればウィリとなって踊り続けるのでしょうか。
このまま静かな眠りに包まれることを願わずにはいられません。