永井紗耶子著『帝都東京華族少女』を読みました。
この著者の小説を読んだのは初めてです。
別の小説を読みたくて、図書館で検索した時に見つけて、一緒に予約したら、こちらが先に届きました。

千武男爵家の令嬢・斗輝子と帝大生の影森の「異色コンビが活躍する爽快&傑作ミステリー!」
という紹介文と表紙イラストから、軽く楽しめる小説かと思えますが、内容はかなり重いものでした。

華族制度があった時代、その華族の世界にも差別が存在し、女性は戸主の支配下にあって何の権利も持つことができなかった時代の物語です。

殺人事件の被害者である黒川隆良伯爵は、明治の元勲の一人黒田清隆をモデルにしていると思われます。
その事からも「明治政府の暗部に迫る快作」である山田風太郎著『エドの舞踏会』を連想させます。


少し内容に触れます。
ご注意ください。

   ⬇️

   ⬇️

   ⬇️

   ⬇️


事件の真相にたどり着き、
「闘い、争い、裏切りの果てに積み上げられたものの上にいると。」自覚した斗輝子に祖父が語りかけます。
「女だとて、闘えばいい。泥にまみれて闘い、その先にある幸いを掴みなさい。」


この小説は、謎解きものではなく、斗輝子が
失われた太陽としての光を取り戻すことに目覚める物語なのではないかと思いました。