ADHDの続き。
昨日とはちょっと違った視点のお話です。
少し前に紹介した雑誌に、ADHDについてこんな記述があった。
精神科治療学 Vol.32 No.10 Oct.2017より引用
40年間にわたる1,037名を対象としたコホート研究で、小児ADHD群と成人ADHD群は、大部分が重複しておらず、成人ADHD症例の90%は小児ADHDの往来がないなどの報告も見られる。
(中略)
診断が正しければ小児と成人のADHDは生物学的基盤が異なることになる。
随分と端折って引用してしまったんだけど、どうやら子供のADHDと、大人のADHDは連続しておらず、症状が同じでも別物かもしれないっていう驚きの研究結果。
原典のコホート研究の論文はこちら (←英語なので私は読めないけど、ググれば日本語に訳しているサイトも見つかるよ。)
ひとつの論文でそれが事実と断定された訳じゃないけど、今までの概念を覆すニュースだと思ったので、紹介してみたよ。
前回の記事に書いたんだけど、自分が子供の頃はADHDっぽかったので、興味があって。私の読者さんは双極性障害の方が多いんだけど、きっとみんな自分の疾患は興味を持って調べてると思うけど、他の疾患までは手がまわらないと思うので、押しつけがましく、こういうこともあるんだと知ってもらいたくて。
大人のADHDについて「子供時代に見過ごされてきたが、就職をきっかけに顕在化した…」というような記述をよく見かけるけど、実は子供時代は見過ごされていた訳じゃなく、発症していなかったのかもしれないんだよねぇ。これは驚いたよ。
で、何故、双極性障害の特集雑誌でADHDの話が出てきているかと言えば、ADHDの症状と(軽)躁症状は、症状のみでは区別するのが難しいことがあるんだって。
なので症状だけで診断するのではなく、生育環境、生活史、家族歴、価値観、物質使用などを聴取し、器質因を取り除く検査もして誤診を防ぎましょうっていうお話でした。
(医師向きの雑誌なので、そんな書き方なの。)
おそらくこの文脈だと多動タイプのADHDの話だと思うんだけど、背景にADHDがある人が、初診時にうつ状態で受診したとするよね。その後、治療が上手くいき、軽快したけど医師からすると上がり過ぎに見える時がある。多弁、多動とかね。でも、その人の通常の状態がわからないので、症状だけではADHDか双極性障害か見極められない。
しかも小児と成人でADHDが別物ならば、生育歴から成人ADHDの見極めが困難になるよね。
そうするとADHDを双極性障害に、双極性障害をADHDに誤診してしまう可能性があるってお話みたいよ。
ADHDと双極性障害じゃ全然治療薬も違うから、そんな誤診はゆるされないと思う。
ADHDだけじゃなく、境界性パーソナリティ障害も双極性障害に似たところがあるし、私は双極性障害と診断される前は不安神経症と診断されていたし、うつ病と診断されていたっていうのは定番だし。
つくづく双極性障害は診断が難しい疾患だな、と思ったんだ。
今は、双極性障害しかり、発達障害しかり、精神科にまつわる全ての疾患が、曖昧な基準の中、診断と治療を行っていると思うんだよね。
でももっと科学や医学が進歩して、遺伝子検査や、画像解析、バイオマーカーなどで明確に診断して、確かな治療が出来るようになって欲しいなと思う。
だって誤診で治療を続けていくのは、本当に辛いから。