息子は小学2年生にして、将棋をし、日本の歴史が好きである。
温泉も大好きで、でかけた帰りには、スーパー銭湯に立ち寄りたい派である。
どこか初老染みている息子。
先日、とあるホームセンターで、じいじの庭に植えるべく花を探していた時のこと。
「おっ、パンジー、マリーゴールド、色々ありますな。」
「オレ、これがいいと思う。」
翁草。
その名の通り、じじぃの草である。
「翁草ってなんだよ!聞いたことねぇよ!ワシ嫌だ、そんなじじ臭い花!!!もっと若々しいのにして!!」
自分のことを「ワシ」と呼んでいるにもかかわらず、若々しいのにしろと、じいじが猛烈に抗議している。
「だったら、これ。」
大菊。
「菊かよぉ!!」
息子は、「翁」という漢字の意味も知らないし、菊が渋い花だということも知らない。
本能で、魅力的な花を選んだ結果、翁草と菊に行き着いたのだ。
本当、渋いな。
「翁草か菊なら、菊の方がまし。」
ということで、菊とじいじに見つからないように翁草もカゴに入れ、会計を済ませた。
ーじいじの庭
「え!?翁草も買ったのか!」
「とりあえず、玄関に植えておくね、翁草。」
育てや育て、翁草よ。
ある季節には、いっせいに花を咲かせ、種を作るであろう。
花の後にできる種には、白く長い毛ができるのだ。
その種が密集して風にそよぐ姿は、まるで老人の白髪のようだという。
そして、その横には大菊が、仏のように静かに咲くのだ。
息子の渋すぎる趣味は、こうしてじいじの庭を老い込ませていくのであった。