土曜日のお昼ご飯に、コンビニの冷やし中華が出てきた。
おばあちゃんの家で住んでいた頃、コンビニのお弁当類を食べたことがなかった。
初めて見たコンビニの冷やし中華。
どうやって食べるのかも分からない。
お母さんは、友達と長電話していた。
あゆが作るのを横目で見ながら、真似をして作った。
あゆのようにキレイに作れなかったけど、とりあえず出来て、食べてみた。
初めての味だった。
おいしくなかった。
最近のコンビニの冷やし中華には感じないけど、当時のコンビニの冷やし中華は独特の匂いがした。
食べないと怒られる。
麺を一本ずつ食べる。
なかなか減らないし、もう食べられないほど嫌だった。
迷ったけど、長電話しているお母さんに恐る恐る近づいた。
『食べたの?』
「ううん。なんかね、最初はおいしかったんだけど、段々まずくなっちゃって…もう食べられない……。」
苦しい言い訳をした。
『はあ?なにそれ?そんなの初めて聞いた。散々食べといて段々不味くなるの?!口の中おかしいんじゃない?!なに考えてるの?』
じゃあ、我慢して食べないで、すぐまずいって言えば良かったのかな。
いつも、正解が分からなかった。
休みの日のお昼ご飯は、近くのコンビニにカップラーメンを買いに行く。
わたしとあゆは、お腹が空くと、お昼まで寝ているお母さんを恐る恐る起こして、お金をもらう。
お母さんは決まって、ホームラン軒みそ味、デミタスコーヒーの微糖、マイルドセブンを買ってくるように言う。
あゆと並んで自転車をこいでコンビニに行く。
コンビニに着き、あゆがそそくさと頼まれたものをカゴに入れる。
デミタスコーヒーは、一番上の列にあるので、背が小さいわたしたちは背伸びをしても届かない。
あゆが、冷蔵庫のふちに立ち、背伸びして取る。
何種類もあるコーヒーの中から、デミタスコーヒーを見付け、微糖を選ぶあゆ。
マイルドセブンくださいと、レジで言う。
ホームラン軒みそ味も素早く見付けるし、メモもしていないのにあゆは淡々と買い物をして、とても慣れているようだった。
こうやって、ひとりでずっと買い物してたのかな。
わたしは、自分で食べるお昼ご飯を選ぶのに時間が掛かる。
食べたことないものばかりで、なにが美味しいのかも、どんな味がするのかも分からない。
のり巻き買ったら作り方が分からなかった。
分からないと、お母さんに怒られる。
『なんでそんなこともできないの?今まで全部おばあちゃんにやってもらってたから出来ないんでしょ?お嬢様で困っちゃう。』
じゃあなんでおばあちゃんに預けてたの?
なんでお母さんは一緒に暮らしてくれなかったの?
だったら、ずっとおばあちゃんといたかった。
のり巻き、今まで食べたことないよ。
初めて見たのに、出来なくちゃおかしいの?
いつも心の中で、お母さんに話しかけてた。
恐くて口には出せない。