【2話目以降は限定公開にします】

 

旦那と喧嘩した夜ふと立ち寄ったバーで会った人

受け取ったグラスを一気に飲み干しグラスに当たった指輪を見て涙が止まらなくなった

その時声をかけてきたのが彼だ

 

「お姉さん泣いてる?どうしたの?俺でよければ話きくよ?」

彼は初めて会った時からすっと優しい

「そっか、旦那さんと喧嘩。理由は?」

理由は言えない、誰にも言えないから爆発して旦那と喧嘩になったのに

『…』

 

「初対面の俺には言えない内容ってことね。」

「まぁいいけど、俺一人で暇だったんだよね、ちょっとお話しよーよ」

それからは私が落ち着くまで彼はいろんなことを話してくれた

筋トレのこと、友達の事、私より少し年下なこと、

好きな食べ物の話で思わず吹き出してしまった。

その筋骨隆々な見た目からは想像もできないようなかわいい食べ物と飲み物

私が笑うと彼はくしゃっと目尻を下げて

「やっと笑った」と言った。

 

涙が止まって笑った呼吸を整えて、彼を見るととても整った顔をしていることに気づいた

話すのも上手だしきっと彼は営業かホストかそれに近い職業の人なんだろうなと思った。

彼の観察をしすぎたのか私の視線に気づいた彼

「俺の顔なんかついてる?」

私に聞くと彼が一瞬寂しそうな顔をしたような気がした。

彼がため息をひとつつく、

「実はさ、俺彼女に振られたばっかりでさ、お姉さんが店に入ってきたとき一瞬その元カノに見えたんだよね気になってチラ見してたらお姉さん泣き出すし放っておけなくて」とカクテルを飲みながら話してくれた。

 

飲んでいたカクテルが回ったのか饒舌に彼は語り始めた

「俺、ものすごい嫉妬深くて、束縛も激しくて彼女の事すげぇ縛り付けてた。

自覚しかないよ、だってすげぇ好きだったんだもん。短いスカート履くのも他の男にみられるのが嫌で禁止してたし、嫉妬に狂いそうになったら俺が満足するまで、その、

いっぱいシちゃって、ダメって言われてもキスマークいっぱいつけたし。

俺、重すぎるんだって。で、振られちゃった」

彼は涙ぐみ鼻をすする「俺、話したよ?お姉さんは?」と大型犬のような顔をする

かわいい顔に観念して旦那との喧嘩の理由を話し始めた

 

「セックスレスで不満がたまって爆発した?

 

でもさ、お姉さんはさ、勇気を出して旦那さんに言ったわけでしょ?すごい偉いよね

俺はレスとかになる気持ちはわからないけど、もしもそういう状況になったら言えないと思うもん、したいって言われるのは俺だったらうれしいと思うよ

人の旦那さんのことを悪く言いたくないけど、旦那さんバカだねー

自分がいかに恵まれてるかわかってない、好きな人と結婚してずっと一緒にいられるのに

あ、ずっと一緒にいられるからいつでもいいやって思っちゃうのかな

それにしても俺には信じられないなー」

彼に偉いって言ってもらうと止まっていた涙がまた溢れてきた

「ごめん!せっかく泣き止んだのに」

違うと否定しようとすると目の前が暗くなった

「ごめん、でもこれならお姉さんが泣いてても他の人の目に入らないかなって」

違う意味で目立っていると思うけど彼のやさしさに少し甘えることにした。

 

涙が落ち着き彼の胸から顔を離すと頭を2回押さえられた。

不思議とあと少しだけがんばってみようという気になれた

グラスに残っていたお酒をくっと飲み干し彼に別れを告げる

マスターに彼の分もお会計をお願いして店を後にする

 

左手に嵌められた指輪をみてあと少しだけ、あと1回だけがんばってみよう

そう思えた夜だった

 

 

Lily.E