「ビリー・ジーン」と「スリラー」のルックスは、手を加えることができないほど完成されたものだった。あまりにも象徴的なスタイルになっていたため、少しでも変えれば、ファンから非難されることになるだろう。
そこで課題となったのは、ひと目で間違いなく「スリラー」だとわかるシルエットを維持しながら、以前のものとは異なる何かを生み出すことだった。
マイケルは、最初のスリラーのジャケットはマーク・ローランが作ったものだと教えてくれた。しかし、BADツアーで初めて着用したジャケットを作ったのはビル・ウィッテンだった。彼はライトを仕込み、車のダッシュボードに差し込むと光るようにしていたんだ。
それ自体はよかったのだけれど、ジャケットを脱ぐときにライトのことを忘れてしまうと、壊してしまう可能性があった。それに、素材が硬くて体の動きについてこなかった。機能面でも、見た目の派手さという点でも、僕たちには不満があった。
そこで僕はマイケルに尋ねた。
「マイケル、どんなものが欲しい? このジャケットをどうしたいのか、教えてほしい」
すると彼は答えた。
「ブッシュ、もしスリラーのジャケットを光らせることができたら、最高だよ」
そこで、僕とデニスはヘイヴンハーストにある家族の敷地へ向かった。当時マイケルが住んでいた場所だ。正確な型紙を作るため、彼の体の寸法を測る必要があったんだ。
マイケルが住んでいた家へ続く、螺旋状の錬鉄製の階段を上っていくと、敷地内は静まり返っていた。室内には、彼の魔法が生まれる場所が広がっていた。
バブルスのクレートが置かれた場所を除き、あらゆる大きさのマネキンが部屋の隅々に並んでいた。真っ白な壁の棚には数々の賞が飾られ、部屋の中央の床には、白雪姫と七人の小人たちの等身大の像を収めたルーサイト製のケースが置かれていた。像はあまりにも精巧に一列に並べられていて、小人たちが口笛を吹く音まで聞こえてきそうだった。
マイケルのためにジャケットを作るのは、これが初めてだった。だから、寸法を正確に測ることが何より重要だった。
メジャーをマイケルの体に巻きつけていると、彼は尋ねた。
「これを光らせることはできるかな?」
僕は「実現させよう」と答えた。
マイケルは、僕が「できない」とは言わないことをわかっていた。僕たちには、やるしかなかったんだ。
僕たちは採寸したデータを持って帰り、ローランが作ったオリジナルのスリラーのジャケットを型紙の参考にするため、スタジオへ向かった。
スタジオのドアを勢いよく開けると、デニスはすぐにスケッチを始めた。彼は、肩まで伸びる黒いV字型の部分をなぞりながら、V字の上の部分を、どのように持ち上げるかを考えた。
コンサートの照明をすべて点灯し、さらにV字型の部分を照らす照明を消したとき、ジャケットがどう見えるかを想像してみてほしい。赤い部分が消えてしまうのだ。
そこで、赤い部分を目立たせるには、ライトが点滅するようにする必要があるとわかった。
僕たちは、これまでにない層を重ねながら、ビーズを縫い付け、さまざまな部品を組み合わせていった。やがて、オリジナルのジャケットを見本にして、その形を再現し、型紙を作る段階になった。
型紙ができたら、次は鋳型が必要だった。
そこでルーサイトを使って鋳型を作った。
ジャケットを光らせ、コンピューターで制御できるようにするには、3人のエンジニアが必要だった。マイケル自身がジャケットに触れて電源を入れる必要がないよう、リモコンで操作できる仕組みにしたんだ。
魔法なんかじゃない。スイッチを入れるだけさ。
僕が穴を開けている間、デニスはビーズを縫い付けていた。配線を傷つけないように、慎重に作業を進めなければならなかった。その後、エンジニアのところへ戻り、配線が損傷していないことを確認してもらった。
完成したジャケットの重さは17ポンドだった。
さらに、取り外し可能な裏地も含まれていた。裏地も難燃性の素材で作られていたんだ。
完成したジャケットを持って、僕はフロリダ州ペンサコーラへ向かった。マイケルはそこで、BADツアーの第2レグに出発する前のリハーサルを行っていた。これはアメリカ国内のスタジアム公演を中心としたツアーだった。
マイケルは衣装部屋でジャケットを試着しなかった。そのため、僕たちが実際に動作を確認できたのは、彼がステージ中央に立ったときが初めてだった。
特殊効果の担当者がリモコンを操作すると、マイケルは両手を頭の上に掲げ、ジャケットが光り始めた。
" Hurt me ! "
彼はそう叫んだ。マイケルの言葉で言えば、つまり「大成功!」ということだった。


