幼い頃の思い出は、何か特別なものを感じる。懐かしさ、切なさ、愛おしさ。そんな感情を呼びもどさせる人が、私の前に現れた。





私の住む町は、少し行けばもう隣の地区になる境界部分にある。小学6年生の冬休みに、

その隣の地区へと出かけた。理由は特にない。遊ぶ予定もなく、家にいても時間が過ぎるだけなので、外へと出かけたのだ。雪は降っていないが、空気は冷たく、足先がとても冷える。家を出て細い道を抜け、神社の隣の坂を上っていく。15分ほどで隣の地区へと着き、公園か見えたところで足元に丸いものが転がってきた。白いボール。野球ボールだ。それを拾うと、「すみません」と声と同時に、男の子が駆け寄ってきた。私と同じ年くらいだろうか。「どうぞ」私も少し駆け寄り、ボールを渡した。目の前に立つと、男の子の身長の高さが目立った。「ありがとう」男の子は軽く礼をすると私に背を向けたが、また私の方へ身を向けた。

「暇だろ?」

「え」

「俺にボール投げて」

ボールを私に渡すと、こっちこっち、と公園へと呼び出された。私は何か言い返す暇もなくついて行き、コンクリートの壁のある公園の前に立たされた。野球経験もなく、運動音痴の私にどうしろというのだ。

「投げていーよ!」

グローブを左手にはめ、右手を振っている。

私は諦め、えい、とボールを投げた。バウンドはしなかったものの、男の子から離れた位置に飛んでしまった。スピードはないため、男の子はなんとか取ってくれた。下手さに、恥ずかしい。

「下手だなー!」

思ったことを口に出された。

私の元にボールが転がってきて拾うと、また男の子は私に手を振る。上に上がったり、バウンドしたり、まっすぐ投げられたり、いろんなパターンの投げように、男の子はよく動いた。

「休憩するか〜」

そう言ってベンチに2人腰掛けた。男の子は楽しーと言ってグローブを外した。

「わたし下手やろ」

「下手だな!」

にかっと笑って答える。

「フォロー…」

「でもその方がいい練習になった!ありがとな!」

「どういたしまして…