瞳 | ガードレールに座りながら
「瞳」茨木のり子
ぼくらの仕事は
視ている
ただじっと
視ていることでしょう?
晩年の金子光晴が
ぽつりと言った
まだわかかったわたしの胸に
それはしっくり落ちなかった
視ている
ただ視ているだけ?
なにひとつ動かないで?
ひそかに呟いた
今頃になって沁みてくる
その深い意味が
視ている人は必要だ
ただじっと視ている人
数はすくなくとも
そんな瞳が
あちらこちらで
キラッと光っていなかったら
この世は漆黒の闇
でもなんて難しいのだろう
自分の眼で
ただじっと視ているということでさえ


