よく、私は「個性的だ」と言われる。

言われるたび、私は「はぁ?!」と驚く。

はっきり言って私は、ごくごく普通。取り立てて特徴がなく、たぶん雑踏の中にしっかり紛れ込んでしまうぐらいにぼんやり風貌。

とびっきり目立つことが出来るようなアクティブな人間でもない。


ごく普通で、あまり悪いことをしなさそうな雰囲気があるから、あまり人に嫌われることはなく、仕事では新規開拓営業みたいな場面では少し得をする。


特徴がないのが私の個性なのかもね、と私自身はそれなりに納得している。

でも『個性的』と言われるとなんだか微妙に違う気がして「えぇ~!何言ってるのぉ?」と思っちゃう。


でも、『グッドラックららばい』読んでたら、いわゆるアクの強い子ほど凡庸に思えてくるから、こういうことか、と実に説得力を持って納得させられてしまった。


信用金庫を定年まで勤めて、「文鎮」というニックネームのまま見たくないものは見ないで淡々と日々を過ごす父。
娘に弁当のおかずの文句をつけられても、適当に受け流しながらハイハイと思い出したように言うとおりにやってあげたりするちょっと能天気で普通のお母さん。ふいに家出してそのまま二十年近く帰ってこないけど別にそれを深刻に考えていない。

普通にOLやりながら男にみつぐ癖がある積子。損してるなんてちっとも思わず、やっぱり深刻でもない。

一番アクが強そうな立子が可愛く見えてくる。


積子の「あんたって、面白い子ね。ちょっとしたことでも、あんたの性格だと波瀾万丈になっちゃうんだ」ってセリフは笑えた。


凡庸で普通って強い。自分の価値観をそのまま純粋に行動していくと、ものすごく一貫性が出てきちゃう。特別なことをしている意識がないから、その行動は純度が高くて、他の価値観や基準に全く依存していない。強烈に強い。


ちなみに私にはこの強烈さはありませんよ、これだけは強調しときますが。


ま、個性なんて代物はこれくらいのもんなんだろ、と思っちゃうわけですよ。
自分を主張するのは正直めんどくさい。

流されてもどうしようもなくくっついてくる何かってヤツを見てみたいとも思うけど。



小川 洋子, 寺田 順三
ミーナの行進

かなりかなり気に入ってしまった作品。挿絵も素敵だしなんと贅沢な本。

読み終わるのが惜しくて、ゆっくりゆっくり読んじゃった。

でも、アマゾンマーケットプレイスにすぐに出品して、すぐ売れてしまった。もう手元にない。
蔵書の趣味はないから、一回しか読んでいないけどその美味しい時間で満足。


ミーナのマッチ箱のようなものって私にとっては何なんだろ?

ん~・・・、ツメかな。
私、マニキュアが好きでね、凝ったアートとかはしないんだけど、マニキュアを塗り塗りしている時間は緩やかなのよね。で、色にはストーリーがついてくるの。勝手に自分で決めたイメージと小さな物語が色の中に塗りこまれちゃってる。丁寧な時間ってきっとストーリーがあるんだと思うの。


品の良し悪し、って丁寧な時間の蓄積集大成じゃないかって思うのよね。
私自身は粗雑な時間が多い分、ミーナの家のローザおばあさんや米田さんやぽち子たちが紡ぎ出している時間に、「あぁしまった!私ったら置き忘れちゃってたのね」と悔しさ半分、感傷半分でくてっとソファで参ったポーズをとってしまう。


善悪じゃない価値基準としては、丁寧か粗雑かって基準があったよね。。。と再認識しちゃったりしたのでした。