精神科医療でみる子と親との関係 | 子どもと一緒に世界をあそぶ

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5歳年下の同業旦那様とベビーたちとの日々の泡。

自分が良い育児をできている自信なぞこれっぽっちもありませんが、10代、20代の患者さんで、幼少期からの親との関係がその後の思考・認知のくせ、精神状態に影響を及ぼしているのを目の当たりにすると、親子関係というものはやはり人間の人生に影響を与えるものだなとしみじみ感じます。


例えば、親に精神科になんてかかるな、あなたは精神疾患になるような子じゃない、と言われ続けて、精神科もカウンセリングも希望してもいかせてもらえず、大学で一人暮らしをするようになってはじめてようやく受診できたエリート大学生。


幼少期からの受験に次ぐ受験で、交遊関係も全て親に掌握されていたため、友達やクラスメイトとどう接したら良いかちっとも分からない。ラインが来るだけでドキドキし、返事をするのにも緊張し、返信した後もあれで良かったかとずっと悶々としてしまう。

そのため授業や課外活動に参加するとものすごく消耗し、夜には漠然とした不安が募る。


お子さんは決して親御さんのことを悪く言わないのですが、内因性の疾患ではなく、幼少期からの支配的、誘導的な親子関係が子どもの自己操縦感や自己肯定感を根こそぎ奪い、自分の人生なのに自分のものだという実感がないため喜びや興味が生まれず、何をするにも自分の意思で決定したことがないため自分の選択が正しいのかいつも不安がつきまとい、人間関係を築くのに多大な困難感がある。


初診時は本当にこの子は自殺してしまうのではないかと心配でした。実際に不安に支配され消えてしまいたいと思うこともあると話していました。 


これは極端な例でそうはならないことももちろんたくさんありますが、親の良かれと思ってがエスカレートし、厳しくあるいは優しく道を常に親が示し、自分が選び取ることを厳しくあるいは優しく許さず、親の意のままに進ませることで、ある時期に突如爆発したり、私はこんなふうに生きたくなんてなかった!全てお母(父)さんのせいだ!となるお子さんは、程度の差こそあれ一定数います。親御さんは聞き分けのよいお利口さんが急にものすごく暴れたり反抗したりするためびっくりします。


大切なのは子ども自身が選び取る、あるいは選び取って来たと感じられること。それにより選択への責任が生まれ、目標に向かうあきらめない心、折れない気持ちが生まれ、結果その道がうまくいかず困難にぶつかっても、それで終わりになったり病んだりしないタフさが生まれます。


もちろん親が助言したり、提案したりは小さい頃はある程度必要だと思います。が、がんじからめにせず、自分のしたい事をする時間やゆとりを与え、選択肢は親が全て決めるのではなく本人が(必要に応じ親の助言やサポートの上で)自分で決められるようにし、その選択には責任が伴うことを感じさせるのが必要なのでしょう。


そして時に失敗したり、間違えたりを許すことが非常に大切だと思います。親がどんなに調べ尽くして、万全を期して全て用意したレールを走らせても、失敗や間違いは長い人生必ずありえること。だけど失敗したら終わりではない、間違えたらやり直せば良い、ということを実感として染み込ませることによって、多くの若者が抱える予期不安や落ち込みを回避することができるはずです。