自分がどんどん嫌な人間になっていく。
現実と妄想の区別がつかなくて、現在と過去が入り混じって、自分の頭の中がどうなっているのかわからない。
自力ではどうにもならないと感じた私は、病院に行こうかと思うようになった。
夫と休みの日の朝。
また不安定になった私は夫に突っかかって言い合いになった。
もう無理だ。耐えられない。
何件か下調べをしていて、行こうかどうしようかと迷っていた心療内科へ衝動的に向かった。
家を飛び出す形で向かったから診察してもらえるかどうかもわからない。
病院の近くまで行き、電話をすると30分後に来て下さいと言われた。
まだ新しいビルの1階にその病院はあった。
待合室には誰もいない。
誰かに見られることがないことに安心した。
先生の側には看護師さんが一人、ボードを抱えて私と先生のやりとりをメモしていた。
先生がどんな質問をしたのか覚えていないほど、私は感情的になっていた。
診察の最後の方で聞かれたこの一言だけは覚えている。
支離滅裂だったかもしれない私の話を一通り聞いた後、先生はこう言った。
「これから先の未来を想像できますか?」
未来…
全く想像できなかった。
今のことですらわからないのに未来なんて考えることなど出来やしない。
先生は「薬を出すことは出来ます。でも薬は離脱症状が伴います。薬をやめたらまたひどくなるかもしれません。出来ることなら薬に頼らずに治していく方が望ましいのです。」
「信頼できるカウンセラーを紹介します。
もし行けそうならカウンセリングを受けてみるのはどうですか?」と言った。
私は薬を処方して欲しかった。
手っ取り早く薬を飲んで精神を安定さえすれば楽になれる。
そう思っていた。
家から1時間ほどかかるカウンセリングに通うなど、私には無理だった。
一回で終わらないこともわかっていたし、日常生活でも何もかもが億劫なのにそんな遠くまで足を運ぶなんて嫌だった。
病院に行けば治る。
そんな簡単なものじゃないことを知るために病院に行ったようなものだった。
薬も何も持たずに帰った私を夫はどんな気持ちで迎えたのだろう。
これから先もこのままかもしれない…
私はそのことに絶望していたけれど、夫はどうだったんだろう。
私と同じように絶望していたのなら…
今の私はいないのかもしれない。