コロナが流行り出した頃、夫の単身赴任が終了した。
帰ってきてからしばらくは毎日のリズムを整えることに必死。
自分の好きなようにしていた時間が長かった分、夫というリズムを合わせる相手が居る環境に慣れるまで大変だった。
そのうち慣れるだろうと思っていた。
一人でいた時もキチンと自炊して、仕事にも行って、余った時間を全て自分に充てていただけなのだから。
4月。
日本でもコロナの蔓延が拡大し、緊急事態宣言が発令された。
私達はリモートが出来る職種ではない。
職場の休業に伴って自宅に篭る毎日が続いた。
いつもは車で出掛けるスーパーまで歩いて行くなどして、必要最低限の外出時間を運動と気分転換に充てた。
日が経つにつれ、私はイライラするようになった。
いつの間にか、夫が夫婦生活を再開するかもしれないと期待してしまっていた。
二人とも仕事で疲れるわけでもなく、時間も体力も充分にある。
それでもいつも通りの夫。
これまでは「疲れているのだから、寝ることに集中したいのだから」そう考えて仕方がないと思ってきた。
疲れていようがいまいが、関係なかった。
すぐに爆睡出来るようになろうがなるまいが、関係なかった。
じゃあ、何?
どんどん私達に「ないこと」の理由を考えるようになった。
ある日、私の感情が爆発した。
きっかけはお箸。
二人とも家にいるのに、全ての家事は私がする。
私がご飯を作って食卓に運んでいた時、夫は座ったまま身動きせず食卓が整うのを待っている。
「お箸がないで」と夫が言った。
無性に腹が立った。
「取りに来たらええやんか!一日中何もせんと家におるんやから、箸の一つくらい取りに来ること出来るやろ?!」
全然関係のないことで私の火がついてしまった。
私は一体何?
家政婦?
よくある妻の叫び。
腹が立ったら怒れば良い。
感情的になっても良い。
けれど、その怒りの元になったものとごちゃ混ぜにして伝えるものじゃない。
最初から私は大きな間違いを犯してしまった。
その日は夫が「ごめん」と謝ってその場は収まった。
けれど私の火はずっと燻ったまま。
言わなければ気が済まなくなっていた。
翌日だったか?お箸のことをきっかけにレスの話に飛躍して話を進めてしまった。
私の頭の中はゴチャゴチャ。
夫も何が何だか理解するのに必死。
何に対して文句を言っているのか分からなかったと思う。
当時を振り返ると、私の中で色んなことが同時に降りかかっていた。
自分の好きなように生活していることに慣れきった所で夫が帰ってきた。
コロナが蔓延して普通の生活が出来なくなった。
そして、更年期。
トリプルパンチ。
その当時は更年期の自覚はなかった。
でも今思えば40代後半から気力が減っていっていた。
休みの日は楽しく過ごしていたのに、何も出来なくて一日中家に篭る日が増えた。
仕事と趣味の時間以外、夫からの電話で初めて誰かと話をする日が多くなっていた。
趣味でさえ、行かなくてはならないと(まとめ役をしていて休むと迷惑がかかる立場なので)重い腰を上げて気乗りしないまま向かっていた。
何もしたくない
ただの怠けぐさだと思っていたけれど、これも更年期障害の一つなのかもしれない。
トリプルパンチに対応出来なかった。
そこから私の夫への攻撃が始まった。