今回はナ・リーグ編です。

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アトランタ・ブレーブス [ Atlanta Braves ]
東地区1位 | 104勝58敗  勝率 .642 | 得失点差 +231 (リーグ1位)

【超強力打線を擁してMLB最多104勝で地区V6】

 地区優勝を候補筆頭との前評判通り、強力打線と充実した投手陣を擁して、開幕から快進撃。7月半ばには地区2位との10ゲーム差と独走態勢に入り、今季MLB最多の104勝を挙げて地区6連覇を果たした。
 特に注目されたのが、MLB史上に残る超豪華打線だ。史上初の40本塁打&70盗塁を達成したアクーニャJr.と両リーグ最多&球団新の54本塁打を放ったオルソン以外にも強打者が勢ぞろいし、史上初の30本塁打クインテットを結成。チーム本塁打307本も2019年のツインズと並んで史上最多タイだった。投手陣も、ストライダーが今季唯一の20勝投手となり、球団シーズン奪三振記録も更新した。
 それだけに、2年続けて地区シリーズでフィリーズに敗れたのはショック。「誰も確実な方法は分からないが、毎年誰かが勝利する。それが野球の素晴らしさであり、我々は常に答えを探している」。アンソポロスGMの言葉には真理と悔しさが入り混じっていた。



フィラデルフィア・フィリーズ [ Philadelphia Phillies ]
東地区2位 | 90勝72敗  勝率 .556 | 得失点差 +81 (リーグ5位)

【8月以降に打線が爆発して2年連続プレーオフ進出】

 昨年のリーグ覇者は序盤戦に苦しんだ。主砲ハーパーがトミー・ジョン手術を受けて4月は欠場、鳴り物入りでFA加入したターナーも調子が上がらず、6月2日時点で借金が7つ。だが、その後は80試合で51勝のハイペース。今季最長の7連勝を大詰めの9月末に記録し、プレーオフ切符をつかんだ。
 ウィーラー、ノラ、ウォーカーの先発3本柱は合計40勝21敗。6月半ばから先発ローテーション入りしたサンチェスも日を追って投球内容が良くなり、ブルペンは若干不安定ながらもチーム防御率4.02は4位。投手陣全体のfWAR24.4はメジャー1位だった。
 もともと強力だった打線も、マーシュやストットが躍進し、打順別では1番から9番まですべてOPS.700以上。シュワーバーが打率1割台ながらも47本を放ち、8月以降のチーム本塁打は107本に達した。プレーオフでもアーチ攻勢は止まらず、シーズンで14ゲーム差をつけられたブレーブスを粉砕した。



マイアミ・マーリンズ [ Miami Marlins ]
東地区3位 | 84勝78敗  勝率 .519 | 得失点差 -57 (リーグ11位)

【接戦で異様な強さを発揮するミラクル野球でプレーオフ進出】

 シーズン前の下馬評は決して高くなかったが、開幕から1点差試合で12連勝するなど、接戦で無類の強さを発揮。打線で牽引者となったのは新加入のアラエズで、6月24日時点で打率.401。さすがに後半戦は勢いが落ちたが、史上初となる両リーグでの2年連続首位打者に輝いた。一方、投手陣では、昨季サイ・ヤング賞に輝いたアルカンタラが精彩を欠く中、若いルザード、ギャレット、ペレスが次々に躍動してエースの不振をカバーした。
 6月は19勝8敗と大きく勝ち越しながら、7~8月は負けが込み、一時は借金生活。それでも9月は再び上昇気流に乗り、得失点差-57ながら貯金6。短縮シーズンを除けば20年ぶりプレーオフ進出を果たした。
 この成果を来季にもつなげたいところだが、ワイルドカード・シリーズ敗退後にアンGMが辞任。アルカンタラはトミー・ジョン手術で来季全休が決まっており、新GMにとっては厳しい船出となりそうだ。



ニューヨーク・メッツ [ New York Mets ]
東地区4位 | 75勝87敗  勝率 .463 | 得失点差 -12 (リーグ7位)

【メガ補強は不発で夏には白旗を上げてチーム解体】

 昨季はチーム歴代2位の101勝を挙げ、オフにはバーランダーや千賀などを獲得する“5億ドル補強”を展開。最初の21試合で14勝の好スタートを切って1986年以来の世界一への夢が膨れ上がったが、先発陣に故障者が続出し、主力野手も軒並み不調に陥ったことで徐々に停滞。トレード・デッドラインでは白旗を上げ、バーランダーやシャーザーら主力を次々と放出して事実上終戦した。
 当然、後半戦はほとんど消化試合の雰囲気だったが、光明がなかったわけではない。千賀は新人王やサイ・ヤング賞候補に挙げられるほどの支配的な投球を継続。プロスペクトのアルバレス、マウリシオ、ビエントスらも才能の片鱗を見せた。
 シーズン終了後にはブルワーズで手腕を発揮したデビッド・スターンズを編成総責任者に迎え入れ、ショーウォルター監督やエプラーGMがチームを去った。新たな体制を築き、再び世界一を目指すこととなる。



ワシントン・ナショナルズ [ Washington Nationals ]
東地区5位 | 71勝91敗  勝率 .438 | 得失点差 -145 (リーグ14位)

【4年連続地区最下位も再建に確かな手応え】

 大方の予想通り4年連続最下位に沈んだが、勝率は.438まで上昇。交流戦は23勝23敗の五分と健闘し、8月には一時メッツを抜いて4位に浮上した。少しずつ再建の目処が立ってきたのは間違いなく、マルティネス監督に続きリゾーGMも延長契約を結んだ。
 野手陣では若手が積極的に起用され、エイブラムスがレギュラーに定着して47盗塁と快足を披露。トーマス、メネセス、カブスへ移ったキャンデラリオら、若手が成長するまでの“つなぎ役”も結果を残し、700得点は前年より97点もアップした。
 投手陣では、グレイがオールスターに初選出されたものの、ゴアも含めて全体的にはまだまだ力不足。新加入のウィリアムズも不振で、リーグワーストの245本塁打を浴び、打線の本数(リーグ最少)より94本も多かった。「成功した年ではなくとも、勇気づけられる年だった」とリゾーGMは総括したが、本格的に戦えるまでにはもう少し時間が必要だろう。


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ミルウォーキー・ブルワーズ [ Milwaukee Brewers ]
中地区1位 | 92勝70敗  勝率 .568 | 得失点差 +81 (リーグ5位)

【強力投手陣が実力を発揮して2年ぶりの地区優勝】

 リーグベストの防御率を記録した投手力が物を言い、カーディナルスの思わぬ不振にも助けられて2年ぶりに地区優勝を果たした。
 先発二枚看板のうち、サイ・ヤング賞投手のバーンズは今季も200イニング近くを稼ぎ、内容もまずまずだったが、ウッドラフが右肩の故障で長期離脱。それでも、レイやテラーン、ブルペンではウィルソン、パヤンプスといった選手たちが意外な貢献を見せた。1点差試合で29勝18敗と大きく勝ち越したのも、投手陣の粘りがあってこそ。一方、打線はOPSリーグワースト2位とパワー不足が顕著だったが、カナやサンタナを途中補強。選球眼の良さや優れた走塁で何とか補い、何とか平均レベルの得点力を確保した。
 オフは契約が切れたカウンセル監督と来オフFAとなるウッドラフの去就が最大の焦点。ウッドラフが手術を受け、来季全休の可能性もある中、エースもトレードで放出するとなれば、戦力再構築は避けられない。



シカゴ・カブス [ Chicago Cubs ]
中地区2位 | 83勝79敗  勝率 .512 | 得失点差 +96 (リーグ4位)

【「成功」ではなくとも確かな収穫を得たシーズン】

 スワンソンらを補強して上位進出を目指した今季は、6月8日時点で借金10。だが、7月下旬に今季最長8連勝を記録するなど徐々に調子を上げ、トレード補強も施した8月には18勝9敗とさらに勢いを増し、9月上旬にはFanGraphs算出のプレーオフ進出確率が90%を超えた。ところが、終盤戦に失速。わずかにプレーオフには届かなかった。
 シーズン終了後、ホイヤー編成総責任者は「成功と呼ぶことはできない」と語ったが、収穫は少なくない。投手陣では急成長のスティールがサイ・ヤング賞争いに参戦し、アルゾレイはシーズン途中からクローザーへ定着。守備で助けたホーナーとスワンソンの二遊間コンビはbWARのチームトップ2を独占した。
 ストローマンのオプトアウトや大型契約を希望するベリンジャーが退団する可能性を考えると、ポスティング料がぜいたく税には含まれない山本由伸(オリックス)や今永昇太(DeNA)獲得へ本格的に乗り出すかもしれない。



シンシナティ・レッズ [ Cincinnati Reds ]
中地区3位 | 82勝80敗  勝率 .506 | 得失点差 -38 (リーグ9位)

【ルーキーが山ほど台頭。来季はさらなる成長に期待?】

 プレーオフ出場は目前で逃したが、2年連続100敗も予測された下馬評の低さを思えば、今季最も大きな実りを得たチームと言える。30球団最多の16人がメジャーデビューを飾り、23人ものルーキーがひしめいたチームの中でもデラクルーズのインパクトは絶大で、デビュー直後にチームは12連勝。後半戦は失速したものの、球界屈指のスターにさえなり得るだけのスケールの大きさを感じさせた。そのデラクルーズの活躍もあって、190盗塁はリーグ最多。来季以降も機動力は大きな武器になりそうだ。
 一方、投手陣は先発二枚看板と目されたグリーンとロドーロが故障。夏場は2人の復調を見込んで補強を控えたが、この目論みも外れて最後までやり繰りに苦労した。それでも、2人の復活や新鋭アボットのさらなる成長など、楽しみな材料は少なくない。前年比で約50万人以上も増えた観客動員もうれしい誤算で、来季こそ飛躍のシーズンとしたい。



ピッツバーグ・パイレーツ [ Pittsburgh Pirates ]
中地区4位 | 76勝86敗  勝率 .469 | 得失点差 -98 (リーグ12位)

【序盤の快進撃は続かずもどん底からは脱出】

 序盤戦はメジャー一番のサプライズチームだった。4月17日から7連勝で首位に立ち、最大12の貯金を作る。5月中にはその貯金を吐き出したが、ナ・リーグ中地区のレベルの低さもあり、6月15日時点でまだ首位にいた。だが、22日まで10連敗を喫すると、反攻する力は残っていなかった。チェリントンGMが「162試合を戦い抜く力はなかった」と述べた通りだったが、2年連続で100敗していたことを考えれば健闘したと言える。
 打線は692得点で、昨年からプラス101点。大器クルーズのほぼ全休は残念でも、サンタナや復帰したマッカッチェンらベテランが奮闘し、ヘイズも後半戦は絶好調。デービスもドラフト全体1位の片鱗をのぞかせた。
 投手ではケラーがチーム8年ぶりの大台となる210奪三振。ベッドナーも39セーブでタイトルを獲得したが、全体的な駒不足は否めず、野手に比べると有望株の成長も遅れ気味。上位を争うには、まだ時間がかかりそうだ。



セントルイス・カーディナルス [ St. Louis Cardinals ]
中地区5位 | 71勝91敗  勝率 .438 | 得失点差 -110 (リーグ13位)

【優等生軍団が33年ぶりの90敗でまさかの最下位低迷】

 昨季までナ・リーグ史上最多タイの15年連続勝ち越しと安定した強さを誇っていたが、まさかの低迷。33年ぶりのシーズン90敗を喫し、3地区制導入後初の最下位に沈んだ。原因が補強を怠ってきた投手陣であることは明白で、特に先発防御率は5.08のひどさ。モゼラック編成総責任者は8月の時点で「今オフは先発投手が3人必要」と反省を口にした。
 ヤディアー・モリーナの後釜として5年契約で獲得したコントレラスに早々と「正捕手失格」の烙印を押すなど名門球団らしからぬドタバタも。ゴールドシュミットとアレナードの両主砲が成績を落とし、期待された外野手からブレイクする者も現れず。苦しんだウェインライトは現役最終登板で通算200勝を達成したが、それが唯一の明るい話題と言える残念なシーズンだった。
 幸い、今オフのFA市場には多種多様な投手が出そろいそうで、近年の安定感ある強さを下支えした編成の眼力が問われそうだ。


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ロサンゼルス・ドジャース [ Los Angeles Dodgers ]
西地区1位 | 100勝62敗  勝率 .617 | 得失点差 +207 (リーグ2位)

【強力打線が投手陣をカバーして地区Vも達成⋯⋯】

 シーズン序盤はなかなか強さを発揮できず、6月半ばには地区3位まで後退。だが、後半戦開始直後に首位を奪回すると、8月は11連勝を記録するなど24勝5敗と他を圧倒し、3年連続で100勝に到達した。
 ビューラーが不在、メイも長期離脱した先発陣は苦しく、カーショウの131.2回が最多投球回。リンらを補強したが、リーグ2位の防御率3.42とブルペンが頑張っても、チーム全体では13年ぶりに4点台へ転落した。
 だがそれでも、強力打線がマイナスを補って余りあった。ベッツ、マンシー、マルティネス、フリーマンの4人が100打点以上。906得点は実に70年ぶりの大台だった。特に弱点の二遊間を、本職でないのに守って穴埋めしたベッツの働きはMVP候補にふさわしかった。その打線が沈黙し、先発投手の出来が変わらなければ勝てなくて当然。地区シリーズは6得点のみ、先発が3試合連続で炎上して屈辱のスウィープ負けを味わった。



アリゾナ・ダイヤモンドバックス [ Arizona Diamondbacks ]
西地区2位 | 84勝78敗  勝率 .519 | 得失点差 -15 (リーグ8位)

【意外な健闘を続けて6年ぶりのプレーオフ出場】

 ヘイゼンGMが今季の目標について「夏場のトレード時期に買い手側にいて、意味のある9月を戦うこと」と話していた通り、開幕から意外な健闘を見せ、夏場にシーウォルドやファムを補強。8月1日から9連敗を喫するなどもたついた時期もあったが、第6シードで6年ぶりのプレーオフに出場。中地区王者のブルワーズ、ドジャースをいずれもスウィープで撃破して、16年ぶりのリーグ優勝決定シリーズ進出を果たした。
 チームを牽引したのはギャレン&M.ケリーの先発2本柱と、新人王確実と言われる有望株キャロル。また、昨季27本塁打のD.バーショをブルージェイズへ放出したトレードで加入したグリエルJr.が球宴に初選出、モレノが守備面で大きく貢献したため、少なくとも今季に限れば圧勝となった。ウォーカー、マーテイ、ギンケルといった中堅も存在感を発揮。不安を抱えていたブルペンにシーウォルド加入で柱ができたのも大きかった。



サンディエゴ・パドレス [ San Diego Padres ]
西地区3位 | 82勝80敗  勝率 .506 | 得失点差 +104 (リーグ3位)

【大補強展開も接戦での弱さが災いしてプレーオフ逸】

 大金を投じて補強した年にコケる悪しき伝統は覆せなかった。ボガーツを11年2億8000万ドルで獲得し、ダルビッシュらにも長期の延長契約を与えたが効果はいまひとつ。5月半ばに借金生活に突入するとなかなか勝率5割に戻せず、ようやくの完済は閉幕2日前。得失点差+104がリーグ3位と地力はあったはずなのに、1点差試合で9勝23敗と大きな負け越しも響いてプレーオフを逃した。
 先発防御率3.69はメジャーベストで、特にスネルは2.25を記録してタイトル獲得。だが、上り調子だったワカとマスグローブが7月に相次いで離脱したのが痛手だった。打線もタティースJr.の復帰、ソトの復調など好材料もあった反面、強打者が座るはずの一塁とDHの攻撃力が低く、バランスが良くなかった。
 期待外れの結果に終わり、メルビン監督とプレラーGMは確執の噂もあったが、とりあえず現体制は維持。来季は年俸総額を大幅に下げる予定で、一層厳しい年になりそうだ。



サンフランシスコ・ジャイアンツ [ San Francisco Giants ]
西地区4位 | 79勝83敗  勝率 .488 | 得失点差 -45 (リーグ10位)

【一時はプレーオフ争い参戦も力尽きて監督は解任】

 昨オフはアーロン・ジャッジ、カルロス・コレア獲得に動いたが実現せず、例年通り地味な仕事人集団として開幕。6月に18勝8敗と大きく勝ち越してプレーオフ争いにも加わったが、後半戦は30勝42敗と息切れ。求心力を失ったキャプラー監督はシーズン終了を待たずに解任された。
 先発陣はウェブとカッブの2人以外はどんぐりの背比べ状態。オープナーやブルペンゲームを多用しながら防御率リーグ3位を記録したものの、数字ほどの強力な印象はなかった。打線は新加入のコンフォート、ハニガーが揃って不発で、得点力リーグワースト2位。機動力もほとんど使えず、ベースサイズ拡大の恩恵もまったく受けられなかった。
 小刻みに選手を代えるキャプラー監督の采配はクラブハウスで不評だったようだが、もとをただせば、そうせざるを得なかったチーム構成に問題がある。ザイディ編成総責任者にとって、来季は勝負の年になりそうだ。



コロラド・ロッキーズ [ Colorado Rockies ]
西地区5位 | 59勝103敗  勝率 .364 | 得失点差 -236 (リーグ15位)

【“投壊”に改善の兆しなく球団初の100敗シーズンに】

 地区最下位に終わった昨季から大した補強もなく、今季も苦戦必至との下馬評。果たして、4月11以降は一度も最下位から浮上することなく9月26日にフランチャイズ史上初の100敗に到達。首位と41ゲーム差という絶望的なシーズンとなった。
 ただでさえ弱体の先発投手陣では、エース格のマルケス、センザテラが前半戦に故障してトミー・ジョン手術。5月にはフェルトナーが打球を受けて頭蓋骨骨折とアクシデントが続発。野手陣では、ブライアントが大型契約2年目も不発と大いに期待を裏切った。収穫に目を向けるならば、昨オフただ同然で獲得した新人ジョーンズが20-20を達成し、同じくルーキーのトーバー、ドイルがゴールドグラブのファイナリストに名を連ねるなど、若手野手が経験を積んだことか。
 彼らの成長は確かに希望の光だが、MLBワーストの防御率に沈んだ投手陣を建て直さない限り、来季も最下位脱出は難しいだろう。