30球団通信簿において、ダイヤモンドバックスについては紹介しました。

その他のチームについても掲載しようと思います。同じくポストシーズンの途中の段階で執筆された内容です。

今回はア・リーグ編です。

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ボルティモア・オリオールズ [ Baltimore Orioles ]
東地区1位 | 101勝61敗  勝率 .623 | 得失点差 +129 (リーグ3位)

【リーグ唯一の100勝超えは今季だけでなく未来も照らす】

 開幕前はダークホース扱いだったが、1試合だけの10月を除いて負け越し月間なし。後半戦開始後すぐ地区首位に立つと、その座を一度も譲らず9年ぶりの優勝。101勝は1979年以来44年ぶりの高水準だった。
 弱点と思われた投手陣は防御率リーグ5位と大健闘。奪三振能力は低いが、無駄な四球を出さず、被本塁打177本も2番目の少なさで大量失点を防いだ。後半戦はブラディッシュとロドリゲスが本格化。バティスタとカノーがオールスターに選ばれた強力ブルペンは、リーグ1位のfWAR7.5を記録した。
 野手陣も得点は前年のリーグ10位から4位へ躍進。新人王候補のヘンダーソンがチーム最多の28本塁打、2年目のラッチマンも攻守で中心となった。オハーンやヒックスら、前球団をお払い箱になった選手を活用した補強も適切。プレーオフの結果は残念で先発陣のアップグレードは必要だが、今後4~5年は優勝を争える態勢が整った。



タンパベイ・レイズ [ Tampa Bay Rays ]
東地区2位 | 99勝63敗  勝率 .611 | 得失点差 +195 (リーグ1位)

【最高のスタートも離脱者続出がボディブローに】

 レイズの2023年は、開幕13連勝と破竹の快進撃でスタートした。その後も順調に勝ちを重ね、7月上旬を迎えた時点で57勝28敗。だが、相次ぐアクシデントでチームの戦力は徐々に削がれていく。4月にスプリングス、5月にラスムッセン、8月にマクラナハンと主戦投手が次々と長期離脱。さらに、着実にスーパースターへの階段を上っていたフランコが過去の未成年者との不適切な関係を報じられて制限リスト入りしてしまった。
 それでも、次々に登場する新戦力の活躍やシーバルらを獲得するピンポイントの補強でチーム史上2位の99勝を挙げたが、最終的にはオリオールズに抜かれて地区2位でフィニッシュ。ワイルドカード・シリーズでは昨年に続いて1勝もできず敗退した。9月には、28年開場の新球場建設がついに合意。来季以降は総年俸の増額が見込まれ、「育成と創意工夫を得意とする好チーム」から真の強豪への変貌が期待される。



トロント・ブルージェイズ [ Toronto Blue Jays ]
東地区3位 | 89勝73敗  勝率 .549 | 得失点差 +75 (リーグ7位)

【強力先発陣+守備面強化も打線が元気なく停滞】

 ここ数年は若い才能が集結し、常に目標は「1993年以来の世界一」。特にバーショやキアマイアーらを補強してディフェンス面の弱点を解消した今季は30年ぶりの頂点が現実的に思えたが、またも遠く及ばなかった。
 昨季のエース格マノーアが大不振に陥ったとはいえ、新加入のバシットや復調したベリオスを含めた先発4本柱はかなり強力。ブルペンは若干コマ不足だったが、救援防御率はリーグ5位の3.68と悪くはなかった。問題となったのは打線の停滞で、火付け役のスプリンガーや中軸のゲレーロJr.がもし元気であれば、第3ワイルドカードでギリギリ滑り込むような事態には陥っていなかっただろう。
 プレーオフでもあっさりツインズに連敗し、地元ファンからは失望の声があふれている。このオフには主力にFAとなる選手も多く、ゲレーロJr.やビシェットとの契約延長問題もくすぶる中、頂点を勝ち取るためにフロントはどう動くのだろうか!



ニューヨーク・ヤンキース [ New York Yankees ]
東地区4位 | 82勝80敗  勝率 .506 | 得失点差 -25 (リーグ9位)

【ジャッジの故障が響いて7年ぶりにプレーオフを逃す】

 ジャッジと再契約してロドン獲得に成功するなど、開幕時点で約3億ドルの総年俸を費やしたが、またも期待外れに終わった。6月3日まで35勝25敗と健闘していたが、その日のドジャース戦でジャッジが右足を痛めて離脱すると、中核を失って低迷。7月下旬にジャッジが復帰した時にはすでに地区最下位に沈んでいて、再浮上はかなわなかった。
 打線はスタントン、ラメイヒュー、リゾーといったベテランが軒並み不振をかこい、期待の新人ボルピーは低打率。トーレスやジャッジの復帰後の活躍があってもなお、673得点はリーグワースト4位に沈んだ。
 投手陣ではエースのコールこそサイ・ヤング賞級の活躍を見せたが、ロドン、コルテス、セベリーノ、ヘルマンといった他の先発陣は不振や故障に苦しみ、リーグ最高級のブルペンも宝の持ち腐れに。1992年以来の負け越しは何とか逃れたものの、7年ぶりにプレーオフを逃して地元ファンを落胆させた。



ボストン・レッドソックス [ Boston Red Sox ]
東地区5位 | 78勝84敗  勝率 .481 | 得失点差 -4 (リーグ8位)

【昨季の再現のような低迷でCBO解任】

 トレード・デッドラインまでは何とかプレーオフ圏内に踏みとどまる粘り腰ながら、8月以降ズルズルと負けが込んで最終的には地区最下位というパターンは、まるで2022年の繰り返し再生。78勝84敗という成績も、昨季とまったく同じだった。
 苦戦の要因は、開幕前から懸念されていた通り弱体投手陣。ネイサン・イオバルディ(現レンジャーズ)との再契約を見送って獲得したクルーバーは見ていて気の毒になるほど打たれまくり、若手のベイオは将来性を示したものの、最初から最後まで軸になる存在がいなかった。攻撃力もリーグ平均をわずかに上回る程度で投手陣を援護できず。新加入の吉田は後半戦に調子を落として、コーラ監督からスタミナ不足を指摘する声が出た。
 シーズン終了を待たずにブルームCBOは解任。レイズ流の合理経営が失敗したことを球団自ら認める形となった。新たな編成トップがどのような哲学で再建を図るのか注目される。


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ミネソタ・ツインズ [ Minnesota Twins ]
中地区1位 | 87勝75敗  勝率 .537 | 得失点差 +119 (リーグ5位)

【充実先発陣と打線の力で19年ぶりプレーオフ白星】

 同地区ライバルのガーディアンズやホワイトソックスが低迷する中で、地区首位を明け渡したのはたった5日間だけの安定した戦いぶりで、3年ぶりの地区優勝を果たした。
 独走の原動力となったのは投手陣。グレイとロペスのダブルエースを擁する先発陣は防御率3.82がリーグベストで、層の薄いブルペンをカバーした。打線もタイトルを争うような圧倒的なスラッガーこそ不在だったが、実に12人が2ケタ本塁打を記録。233本塁打でリーグトップのパワーに、四球率9.6%も1位と出塁能力も兼ね備えていた。
 ワイルドカード・シリーズでは2004年以来、実に19年ぶりとなる白星をもぎ取り、北米スポーツワーストの連敗記録をストップすると、その勢いのままワイルドカード・シリーズ突破に成功した。コレアと6年の大型再契約を結んで始まったシーズンは久々にツイン・シティを熱くさせた。



デトロイト・タイガース [ Detroit Tigers ]
中地区2位 | 78勝84敗  勝率 .481 | 得失点差 -79 (リーグ11位)

【投打に若手が成長して負け越しながらも地区2位浮上】

 7年ぶりの地区2位と、順位だけを見れば上出来に思える。後半戦は39勝34敗、同地区との対戦は35勝17敗と大きく勝ち越した。それでも、7年連続負け越しとなる84敗、得失点差も-79とあっては褒められない。
 ポジティブな材料としては、661得点が前年より104点も増加。これでもリーグワースト3位で、トーケルソンが31本塁打、94打点を記録し、グリーンやカーペンターなど将来を担う若手の成長が収穫だった。投手でも7月から復帰のスクーバルが素晴らしい投球で、新人のオルソンと今後に期待を抱かせた。
 一方で、大型契約2年目のバイエズは昨年をも下回る大不振。心の病を負ったA.メドウズは開幕直後に離脱し、ロドリゲスはドジャースへのトレードを拒むなど、編成面での誤算も生じた。「オフに獲得するのは、若手の出場機会を阻害しない選手にしたい」とのハリスGMのコメントからも、来季も引き続き再建を進める年となりそうだ。



クリーブランド・ガーディアンズ [ Cleveland Guardians ]
中地区3位 | 76勝86敗  勝率 .469 | 得失点差 -35 (リーグ10位)

【長打力不足でプレーオフを逃し、名将フランコーナ監督も勇退】

 若さを全面に押し出して地区優勝を遂げた前年から一転、今季はプレーオフ出場に届かなかった。本命なき地区で6月28日に借金1ながら首位に立ち、7月30日には一度借金を完済したが、その後は二度と勝ち越せなかった。分水嶺は夏のトレードで、クラブハウスでも存在を発揮していたシーバリやベルの放出は、ナインに少なくない動揺を与えた。
 ただ、防御率3点台を死守した投手陣では、ルーキーのバイビー、アレン、ウィリアムズがローテーションに定着し、来季以降への大きな光明になった。オフはクラッセにつなぐまでのリリーフ投手と、メジャー最少の124本塁打に終わった打線、特に外野のパワー向上が補強ポイントに挙がる。ネイラー兄弟や夏のトレードで獲得したマンザードら若手の成長も来季はポイントになるだろう。
 11年間も指揮を執ったフランコーナ監督退任で一時代が終わり、オフは新任候補の自他球団ベンチコーチらと接触を続ける。



シカゴ・ホワイトソックス [ Chicago White Sox ]
中地区4位 | 61勝101敗  勝率 .377 | 得失点差 -200 (リーグ14位)

【地区優勝奪回どころか規律なく崩壊】

 グリフォル新監督を迎えて心機一転、地区覇権奪回を目指したシーズンは、球団史上有数の悲惨な一年になってしまった。開幕早々につまずき4月だけで20敗、19日からは10連敗。持ち直しかけたが7月に再び大きく負け越すと、リンやジオリト、25本塁打を放っていたバーガーらを放出し解体に踏み切った。
 投手陣は防御率4.88が前年から1点近く悪化。先発陣は奪三振率こそ9.24でリーグ3位でも、与四球率4.11がワースト2位では台無し。クローザーのヘンドリクスを病で欠いたブルペンも、防御率4.88は下から3番目だった。
 打線も出塁率.291は最下位。アンダーソンが極度の不振に陥り、ヒメネスは伸び悩み、新加入のベニンテンディも期待外れで、38本塁打のロバートJr.だけが奮闘した。退団した選手たちが口々にチーム内の規律の欠如を指摘するなど、組織自体が完全に崩壊していた模様。K.ウィリアムズ球団社長とハーンGMが責任を問われて更迭されたのも当然だった。



カンザスシティ・ロイヤルズ [ Kansas City Royals ]
中地区5位 | 56勝106敗  勝率 .346 | 得失点差 -183 (リーグ13位)

【負けに負けて球団ワーストタイの106敗】

 アスレティックスの酷い負けっぷりが話題になっていた陰で、こちらも4月に21敗、6月も20敗と同じくらいのペースで負けまくった。最後の17試合で12勝し、球団史上最多敗戦こそ免れたが、106敗は2005年に並ぶワーストタイ。「100敗もするようなチームではないとみんな思っているが、これが現実」とピコッロGMも意気消沈していた。
 先発投手は実に23人を起用。8月にレンジャーズから移ってきたレーガンズは好投を続けたが、20先発以上したライルズ、シンガー、グレインキーは合計16勝43敗、防御率5.67の惨状。ブルペンも防御率5.23はリーグワーストと、全然助けにならなかった。
 投手陣に比べて、野手は好材料もあった。ウィットJr.は30本塁打&50盗塁に迫り、ベラスケスはカブスから加入後40試合で14本塁打。前半戦不振のメレンデスも後半戦は復調した。若手が力をつけつつあり、課題は山積みでもわずかに光明が見えている。


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ヒューストン・アストロズ [ Houston Astros ]
西地区1位 | 90勝72敗  勝率 .556 | 得失点差 +129 (リーグ3位)

【怪我にも屈せず地力見せつけ3年連続地区優勝】

 前年王者は序盤戦で苦戦。強力だった先発ローテーションからバーランダーが退団、5月にはウルキディとガルシアが相次いで離脱して駒不足に陥った。防御率は昨季から1点以上悪化し、リーグ1位から6位まで下降。野手もアルトゥーベがWBCで負傷、新加入のJ.アブレイユは極度の不振に陥り、6月半ばには地区首位から6.5ゲーム差も離された。
 それでも打点王に輝いたタッカーやブレグマンら中軸打者のほか、マコーミック、ディアズ、デュボンら脇役の選手たちの頑張りもあって、何とかギリギリ踏みとどまった。リリーフ陣は奪三振率がメジャーで唯一10個を超えたように、相変わらずの頼もしさ。8月1日のバーランダー復帰は、戦力面だけでなくチームの士気を高め、同月末に初めて首位に立つ。9月末には最下位ロイヤルズに3連敗して窮地に陥ったが、最後のDバックス3連戦は全勝。レンジャーズに勝利数で並び、直接対決の結果で逆転地区優勝を果たした。



テキサス・レンジャーズ [ Texas Rangers ]
西地区2位 | 90勝72敗  勝率 .556 | 得失点差 +165 (リーグ2位)

【フロントの勝利への執念が実ったプレーオフ進出】

 フロントが見せた勝利への飽くなき執念が見事に結実したシーズンだった。2021年オフのシーガー、セミエンに続き、昨オフはデグロム、イオバルディ、ヒーニーらを積極補強。デグロムは6先発しただけでトミー・ジョン手術を受けることになったが、めげることなくチャップマン、シャーザー、モンゴメリーを次々にトレードで獲得した。
 補強組だけでなく、ルーキーのヤンやタベラス、ダニング、ハイムら若手/中堅も活躍。ガルシアは39本塁打、107打点いずれもリーグ2位と、主砲として文句なしの働きだった。もちろん、久々に現場復帰を果たし、チームに落ち着きをもたらした名将ボウチー監督の功績も見逃してはいけない。
 地区優勝こそ最後の最後でアストロズにさらわれたものの、7年ぶりに出場したプレーオフでは格上のチームを次々に撃破。ベテランと若手、現場とフロントが見事に融合し、アーリントンに久々に熱狂をもたらした。



シアトル・マリナーズ [ Seattle Mariners ]
西地区3位 | 88勝74敗  勝率 .543 | 得失点差 +99 (リーグ6位)

【7月以降に快進撃も2年連続プレーオフはならず】

 21年ぶりのプレーオフ進出に沸いた昨年の興奮は結局、再現できなかった。シーズン序盤から波に乗れない戦いが続き、7月末には抑えのシーウォルドを放出。ロドリゲスらが復調した8月は21勝6敗の快進撃で地区首位争いに食い込んだが、9月は3連敗以上が4度と再び失速し、161試合目で力尽きた。
 サイ・ヤング賞投手のレイがほとんど稼働できずも、防御率3.74はリーグ1位。カスティーヨ、カービー、ギルバートの三本柱に加えて、ミラー、ウーらルーキーも台頭した。一方、打線は三振数リーグワースト2位と粗さが目立ち、最後まで安定感を欠いた。
 不完全燃焼に選手のフラストレーションも募り、ラリーが「勝利にコミットしないとダメだ」と語る一方、ディポート編成総責任者は大型補強には消極的な構え。選手だけでなく、ファンもすでに“善戦”では満足できなくなっている。球団初のワールドシリーズ出場へ向け、このオフはどう動くだろうか。



ロサンゼルス・エンジェルス [ Los Angeles Angels ]
西地区4位 | 73勝89敗  勝率 .451 | 得失点差 -90 (リーグ12位)

【大谷FAイヤーの大勝負は壮大な失敗】

 一進一退を繰り返しながら、7月下旬までワイルドカード争いを展開。ここでミナシアンGMは乾坤一擲の大勝負とばかりにジオリト、ロペス、グリチック、クロンらを途中補強したが、8月に入っていきなり7連敗を喫して事実上の終戦となった。二刀流で奮闘を続けていた大谷は右ヒジ、右脇腹を痛めて9月上旬でシーズンエンド。昨季と同じ73勝89敗で、連続負け越しは8年に伸びた。
 延べ34人がIL入りした故障者の多さもさることながら、苦戦の最大の原因は先発投手陣。さらなる成長が期待されたサンドバルやデトマーズは伸び悩み、FA補強したアンダーソンは「昨季の好成績はまぐれでは?」との懸念が的中する形となった。ネト、ジョイス、シャヌエルら、ドラフトから間もないプロスペクトを超早期昇格させる“学徒出陣”も、長期的視野からは疑問しかない。大谷がFAとなり、トラウトにも移籍の噂がくすぶるこのオフは激動の予感が漂う。



オークランド・アスレティックス [ Oakland Athletics ]
西地区5位 | 50勝112敗  勝率 .309 | 得失点差 -339 (リーグ15位)

【球団史上最多敗戦は回避も悪夢はまだ続きそう】

 チームに残っていた最後のスター選手S.マーフィーもブレーブスへ放出し、近年稀に見る負け犬軍団が誕生。55試合消化時点の10勝45敗は1904年のワシントン・セネタース以来という歴代最悪級のスタートを切ると、最終的には球団歴代ワースト2位の年間112敗。ラスベガス移転を実現させるため、半ば意図的にチームを解体するオーナーに抗議し、6月には本拠地オークランド・コロシアムで「逆ボイコット・デー」が開催された。
 チーム成績を見ると、得点も失点もリーグワーストで、まさに投打とも“完敗”。野手陣は盗塁王を獲得したルイーズや正捕手に定着したランガリアーズ、後半戦に強打を披露したゲロフなど楽しみな人材も出てきたが、投手陣は最多勝が27歳のシアーズと途中放出された藤浪晋太郎の5勝が最多勝という惨状。ファーム組織も劇的に改善されているわけでもなく、ラスベガス移転までは多かれ少なかれ今季のようなシーズンが続きそうだ。