雑誌「スラッガー」による全チームの戦力分析。
前回のアメリカン・リーグに続き、今回はナショナル・リーグの15チームを紹介します。



アトランタ・ブレーブス

▽投打で優れた若手が台頭 狙うは25年ぶりの世界一

 昨季は2年連続地区優勝を果たしたが、同地区のワイルドカードだったナショナルズが世界一になって悔しい思いをした。それでも、低迷期に獲得した選手たちが続々と主力として活躍し始めており、チームの未来は極めて明るい。
 特に野手陣はメジャー屈指の顔ぶれと言っていい。中心となるのは22歳のアクーニャJr.と23歳のアルビーズ。生え抜きリーダーのフリーマンも健在だが、昨季37本塁打のジョシュ・ドナルドソンが抜けた穴は大きい。新たにオズーナを加えたが、ただでさえ混雑気味の外野陣でどう出場機会を確保するのか不透明。逆に三塁はレギュラー未定で、ややアンバランスな印象も否めない。先発陣では26歳のフリードと22歳のソロカが左右のエース級に成長。昨年不振だったフォルティネビッチ、救援から先発に戻るニューカム、ベテランのハメルズの5人でローテーションを組む。ただ、真のエースと呼べる存在はおらず、ポストシーズンで勝ち上がるには少し心許ない。ブルペンはメランソン、グリーンにスミスが加わり、クローザー経験者をかき集めた。
 いくつかの不安要素はあるものの、マイナーには若手有望株がひしめいている。彼らを駒に大物を補強することも可能で、現にクリス・ブライアント(カブス)やノーラン・アレナード(ロッキーズ)獲得の噂もある。今後、アンソポロスGMがうまく弱点を補強できれば、四半世紀ぶりの世界一は決して夢ではない。



マイアミ・マーリンズ

▽本拠地球場改装を含めた長打不足解消策の結果は?

 2年連続でリーグ最多敗戦を喫し、観客動員数はわずか81万人までに減少。オフは打線に実績ある選手を何人か加えたが、同地区ライバル球団が戦力を充実させていることもあり、今季も地区最下位は確定的な情勢だ。
 リーグワーストの得点数に終わった攻撃陣には、長打力のあるビアー、ディッカーソン、アギラらを補強。また、本拠地マーリンズ・パークでの本塁打増加を目指し、センターからライトにかけてフェンスを前に移動した。さらには、打撃コーチとしてツインズの年間300本塁打達成に貢献したローソンを事実上の「オフェンシブ・コーディネーター」(正式な肩書はベンチコーチ)として招聘。これらの施策が得点力向上につながるか注目される。一方、先発投手陣はスミス、アルカンタラ、さらにヤマモトなど伸び盛りの選手が揃っている。シーズン途中には次期エース候補と期待されるサンチェスの昇格も予定されている。ブルペンでは、キンツラーやガルシアらベテランを補強。開幕までには左腕不足の解消を図る予定になっている。
 昨年2月のJT・リアルミュート放出をもって、ジーターCEOが推し進めた大型ファイヤーセールはほぼ完了した。今後は、主力放出と引き換えに充実させたマイナー組織の戦力を上手に活用してチーム再構築を進める段階に入っている。今季は近い将来のコンテンダー台頭を期待させる一年にしたい。



ニューヨーク・メッツ

▽チームは混乱状態でも優勝を狙える布陣が完成

 新監督に決まっていたカルロス・ベルトランがアストロズのサイン盗み事件に絡んで退任。球団売却も成立寸前で破談と、このオフも混乱の印象は拭い去れなかった。もっとも、新監督に急きょ抜擢されたロハスはチーム内外で高く評価されている人物。昨季後半戦に怒涛の追い上げでプレーオフ争いに絡んだチームは、今季もポテンシャルを感じさせるメンバーを揃えている。
 MLB新人記録の53本塁打を放ったアロンゾ、今季の首位打者候補にも挙げられるマクニールらを擁する打線は魅力たっぷり。カノーが復調し、ついに復帰するセスペデスも貢献すれば、かなり強力な陣容になる。自慢の先発投手陣は2年連続サイ・ヤング賞のデグロムを軸にシンダーガード、ストローマン、マッツが4本柱を形成。ザック・ウィーラーはフィリーズへ去ったが、新たにポーセロとワカを加えた。実績ある先発投手を6人揃えたことで、故障者発生などの事態にも対応できるようになった。不安材料は昨季も弱点だったブルペン。新加入のベタンセスは故障明けで計算しきれない。昨季は大誤算だったディアズ、ファミリアの復調がチーム浮沈のカギを握る。
 投打が上手く噛み合えば、71試合で46勝を挙げた昨季後半戦の勢いを再現しても不思議はない。ただ、ロハスの采配やブルペンなど、未知数の部分も少なくない。激戦の地区を勝ち抜くため、まずは開幕ダッシュで勢いをつけたいところだ。



フィラデルフィア・フィリーズ

▽ジラルディ新監督を招聘も投打とも決め手に欠ける

 昨季は2012年以来の勝率5割はクリアしたとはいえ、ハーパーとの13年契約をはじめ、総額2億ドル超える補強を展開したことを考えれば大いに落胆させられる結果だった。これを受け、クレンタックGMは指導力に疑問のあったゲイブ・キャプラー監督を更迭し、経験豊かなジラルディを新指揮官に据えた。
 リーグワースト2位の258本もホームランを打たれ、防御率も11位だった投手陣は、ノラに続く第2の柱としてウィーラーを獲得。また、新任のプライス投手コーチは「成長する余地のある投手が何人もいる」と語っている。彼の指導でピベッタ、エフリン、ベラスケスらがポテンシャルを発揮できるなら、ナショナルズやブレーブスにひけを取らない先発陣になる可能性もある。ブルペンは昨年、故障者の続出に苦しめられたのは事実でも、クローザーのネリースをはじめ質・量ともに物足りなさを覚えるのも確かで、今後もてこ入れが必要になりそうだ。打線もそれなりにメンバーは揃っているが、意外に層が薄い。新加入のグレゴリアスの活躍が求められるのは当然として、ホスキンスやマカッチェンが昨季のように不振や故障に苦しむようだと苦しくなる。その意味では、有望株のハワードやボームもカギになるかもしれない。
 現状では、投打ともに決め手に欠ける印象は否めない。超激戦が予想されるナ・リーグ東地区を制するには、あともう一押しが必要ではないだろうか。



ワシントン・ナショナルズ

▽自慢の強力先発投手陣で世界一連覇の難業に挑む

 球団初のワールドシリーズ優勝を飾った歓喜が醒めやらぬうちに、オフは投打の生え抜きビッグネーム2人がFA。ストラスバーグとは再契約を交わしたが、アンソニー・レンドーンは退団。その穴埋めとして狙ったジョシュ・ドナルドソンとも契約できなかった。
 ケンドリックやジマーマンらとの再契約を含め、リゾーGMはベテランの野手をかき集めたが、それだけでは中軸にソトがいても得点力低下は免れない。食い止めるには、ロブレスが資質を100%発揮することが最低条件だ。キーブームの台頭も待たれる。一方、ストラスバーグ、シャーザー、コービンを擁する先発投手陣は球界最高級。昨季のFIP3.50未満(規定投球回以上)が3人も揃うのは、ナショナルズだけだ。防御率3.50未満も同様だ。シャーザーより1歳上のAn.サンチェスも、まだタンクに燃料は残っている。ブルペンにはハリスらを加え、ハドソンを呼び戻した。ドゥーリトルが復調すれば、最後の3イニングは安心できる。少なくとも、救援防御率リーグワーストに沈んだ昨季の惨状は避けられるはずだ。
 1998~2000年のヤンキース以来となるワールドシリーズ連覇の道は困難を極めるが、苦難の道は経験済みだ。昨季は開幕50試合で31敗を喫したところから浮上した。リーグ優勝直後、マルティネス監督はこう言った。「険しい道は美しい場所へ通じる」。このフレーズはそのまま、今季のスローガンにできそうだ。



シカゴ・カブス

▽オフに大きな補強はなくロス新監督は厳しい船出?

 昨季は、開幕前にデータ予測システム『PECOTA』が79勝83敗で地区5位と算出。「さすがに低すぎる!」との予想通り、84勝を挙げたものの、9月に負け越して4年ぶりにプレーオフを逃した。これを受け、16年に108年ぶりのワールドチャンピオンをもたらしたジョー・マッドン監督が退任。その時の控え捕手だったロス監督がチームを引き継いだ。
 オフはぜいたく税課税を避けるため小幅な補強に終始したが、攻撃陣に関しては心配はほとんどない。ブライアント、リゾー、バイエズ、シュワーバーら主力は年齢的にもまだ若く、脇を固める人材も豊富。新加入のキプニスやスーザJr.が機能しなかったとしても、現状メンバーで十分戦える。だが、投手陣は、コール・ハメルズが去った分の穴埋めはなし。一度は先発失格の烙印を押されたチャットウッドが現状では5番手最有力候補で、全体の層も薄い。贔屓目抜きに、ダルビッシュの活躍がチーム全体の浮沈を左右すると言っても決して過言ではない。
 キャンプイン早々、リケッツ・オーナーは「我々がこの地区で一番いいチームだ」と宣言したが、再建に邁進するパイレーツを除いた他の3チームに比べ、明確に強みと言えるものはない。かつて球界最高と言われたファーム組織も、強豪へと進む過程で弱体化が進行。シーズン早々にコケるようなら、ブライアントやダルビッシュのトレードが現実味を帯びてくるかもしれない。



シンシナティ・レッズ

▽7年ぶりのプレーオフへ超本気補強で秋山ら獲得

 昨季は5年ぶりに地区最下位から抜け出した。貯金こそ作れなかったが、得点と失点がほぼ同じ水準まで地力を底上げすると、オフは計1億6000万ドル以上を投じてFA市場で秋山、ムスタカス、カステヤノス、マイリーを補強した。
 秋山らの加入で、球団記録の227本塁打を放ちながら得点にうまく結びつけられなかった打線は目に見えてバランスが良くなった。複数ポジションを守れる選手も多く、故障者が出てもフレキシブルに対応できる陣容が整っている。長らく弱点だった投手陣は、昨季は新任のジョンソン投手コーチの手腕もあって防御率が大幅に改善。そこにマイリー、ストロップとワールドシリーズ出場経験者が加わり、着実に層を厚くした。特にグレイとカスティーヨを擁する先発陣は「地区ベスト」との評価も聞こえている。ラプソードやエッジャートロニックなど、最新テクノロジーの導入も効果を上げていて、このオフにはドライブライン・ベースボール創始者の一人であるカイル・ボディを招聘した。この動きがさらなる好影響をもたらすかどうかも注目される。
 主砲ボトーと守護神イグレシアスの不振や秋山のメジャーへの適用など、不安要素がないわけではないが、7年ぶりのプレーオフ進出はすぐそこまで迫っている。ベル監督が「ファンは優勝を期待している」と語るように、総年俸を球団史上最高額にまで増やした今季は結果が求められるシーズンになりそうだ。



ミルウォーキー・ブルワーズ

▽大幅入れ替えのメンバーで3年連続プレーオフなるか

 イェリッチは2年続けてMVP級の大活躍を見せ、チームは両年ともポストシーズンへ進んだ。もっとも、得点はそう変わらずに失点が100以上も増え、得失点差は+95から+3へ悪化。今オフは選手の出入りが激しく、レギュラー野手と先発投手陣の半数が入れ替わった。
 25本塁打&OPS.840以上の3人が抜けた穴は大きい。得点力を維持するには、イェリッチが引き続き打ちまくり、ヒウラが2年目のジンクスに陥らず、ケインが復調することが必須条件。上乗せするには、新加入のナルバエズ、ガルシア、ソガードが昨季並みの結果を残さなければ厳しいだろう。一方、チーム最多イニングで防御率3点台半ばのザック・デイビーズを放出しても、先発投手陣は改善が見込める。ウッドラフは真のエースとなる力があり、ハウザーも上昇曲線を描いている。新たな3人のうち、注目は韓国帰りのリンドブルームだ。投手ではないが、ブルワーズでは3年前韓国から戻ってきたエリック・テームズがブレイクした。クローザーのヘイダーまでどうバトンを渡すかは流動的ながら、ローテーションが予定どおりに機能すれば、スーターはブルペンにとどまり、ヘイダーと勝利の方程式を確立する。
 スターンズGMによるレンタル補強も、チームの強みに数えていいだろう。夏までペナントレースから脱落しなかった場合、球団初の3年連続ポストシーズン進出は見えてくる。



ピッツバーグ・パイレーツ

▽投打に強みはなく100敗以上を予想する声も

 2017年オフに至宝アンドリュー・マカッチェン(現フィリーズ)を放出して以降、チームは明らかに下降線をたどっている。昨季はエース格が期待されたタイオンを筆頭に故障者が続出し、守護神のバスケスが淫行罪で逮捕。さらに選手と球団スタッフの喧嘩沙汰などの内輪揉めが報じられるなど、組織として破綻を来たしており、シーズン終了後には球団社長、GM、監督が更迭。フロントを完全に刷新して新シーズンを迎える。
 新任のチェリントンGMは「次代のチームに貢献する戦力がすでに揃っている」と戦力解体を否定するが、逆に言うとそこまで大きな存在感を発揮する選手もいないのが現状。打線は打率リーグ2位ながら本塁打と四球率がワースト2位の“逆マネーボール型打線”で得点力不足に苦しんだ。そこに加えて中心選手のスターリング・マーテイをオフに放出し、さらなる得点力低下は免れない。投手陣は有望株ケラーの開花にアーチャーの復活と、期待値込みながらそれなりのメンバーだが、他のチームと比べて強みになっているかと言われると厳しい。バスケスの処遇が不透明なブルペンも同様で、防御率リーグワースト4位の昨季から劇的に改善するとは考えにくい。
 2月初旬に『USAトゥデイ』紙が発表した今季の勝敗予想ではリーグワーストの60勝102敗だった。この予想に正面から反論できるパイレーツファンは少ないのではないだろうか。



セントルイス・カーディナルス

▽堅守&機動力重視の野球で昨季に続く地区連覇を目指す

 昨季は後半戦に47勝27敗の快進撃を見せ、ブルワーズとカブスを抜き去って4年ぶりの地区優勝を果たした。今季も、混戦が予想されるナ・リーグ中地区で連覇を狙える布陣は整えている。
 先発投手陣は、サイ・ヤング賞候補に挙がるまで成長したフラハティがエースを務め、18年最多勝投手のマイコラスが2番手。昨季16勝とブレイクしたハドソンの3番手まで確定で、残る2枠はベテランのウェインライト、韓国から加入したキム、先発復帰を目指すマルティネスの3人が争う。ブルペンはマルティネスの配置次第で変わるが、夏場には100マイル右腕ヒックスがトミー・ジョン手術から復帰予定。ミラーの衰えは不安だが、ヘルズリーの成長やレイエスの開花も予想されるなど明るい話題も多い。
 攻撃力は決して強力ではないが、出塁能力の高い選手は多い。リーグ最多タイの116盗塁と機動力を駆使するなどオールドスタイル戦略を好むのがシルト監督の特長だ。とはいえ、主軸がしっかり打ってくれないことには点は入らない。29本塁打のマーセル・オズーナが抜け、ゴールドシュミットとカーペンターの役割はより一層重要になる。チーム最大の強みである守備力は今季も健在。センターラインに名手が揃っており、昨季は投手のDRS17も両リーグベストだった。
 実戦派の若手を供給する優秀なマイナー組織も健在で、今季も絶対的な強さはなくとも大崩れすることはなさそうだ。



アリゾナ・ダイヤモンドバックス

▽バムガーナーが新たに加入 ワイルドカードは十分狙える

 昨季は予想を上回る健闘だった。2018年オフに主砲のポール・ゴールドシュミット、シーズンに入って夏場にはエースのザック・グレインキーを放出しながら、ポストシーズン進出の可能性が潰えたのは、156試合目を終えた時点だった。新たにバムガーナーとカルフーン、S・マーテイを加えた今季は3年ぶりのポストシーズン進出を目指す。
 絶対的な売りがない代わりに致命的な弱点もないのがこのチームの特徴で、打線はビッグネーム不在ながらバランスの取れた布陣。1・2番の“ダブル・マーテイ”で機動力でかき回すこともできるし、カルフーンやエスコバー、ウォーカーらで長打攻勢をかけることも可能。また、球団はS・マーテイにセンターを任せ、K・マーテイを二塁に戻すことで全体の守備バランスが向上すると考えている。若き司令塔のC・ケリーの攻守にわたる成長も期待大だ。先発投手陣は、新エースとしてバムガーナーを迎えた一方で、トレードが噂されたレイは手放さなかった。頭数は揃い、昨季チーム最多イニングのM・ケリーがはみ出しかねない。ただ、ブルペンには不安が残る。クローザーのブラッドリーはいいとしても、そこにつなぐまでが少し弱い。ここをどう底上げするかがカギになりそうだ。
 圧倒的な戦力を誇るドジャースがいる以上、地区優勝の候補には挙げにくい。けれども、ワイルドカード進出は十分可能な陣容となっている。



コロラド・ロッキーズ

▽トレードの噂に主砲が激怒 チームの士気低下が心配

 昨季は6月末までは踏ん張っていたが、7~8月に15勝38敗と失速してプレーオフを逃した。オーナーのモンフォートは「投手陣が復調すれば球団記録を更新する94勝も可能」と語っていたが、その一方で昨年春に8年2億6000万ドルで契約延長したばかりのアレナードにトレード話が浮上し、主砲が公然とGMを批判する場面もあった。アレナードのモチベーションの低下も含め、チームを取り巻く雰囲気はお世辞にもいいとは言えない。
 攻撃陣はアレナード、ブラックモンやストーリーと強打者が揃い、ダールやマクマーンら伸びしろのある若手も多い。ただ、アウェーでの92本塁打はリーグワースト2位と打者天国の力を借りていることもまた確か。守備では三遊間に名手を配置しているが、センターに人材を欠くなど外野に問題が多い。昨季は、チーム防御率が18年の4.33から5.58に悪化するなど投手陣が完全に崩壊した。大不振に苦しんだフリーランドが復調したとしても4番手以降は脆弱で、マイナーからの供給も期待できそうにない状況だ。ブルペンはデービス、マギー、ショウの高給取りトリオが復調すればそれなりの陣容になるが、あまり期待できそうにない。
 オーナーのコメントとは裏腹に、現状は地区優勝はもちろんワイルドカード争いも厳しそうな情勢。開幕ダッシュに失敗するようだと、アレナードの放出話が間違いなく再燃するはず。ファンにとっては落ち着かない日々が続きそうだ。



ロサンゼルス・ドジャース

▽投打とも大充実の布陣にベッツ加入で世界一最右翼へ

 昨年は球団新記録の106勝を挙げて地区7連覇を果たしたものの、ポストシーズンではワールドシリーズにすら進めず、ファンの失望を買った。オフも当初は静かな動きが続き、編成部への批判も聞かれていたが、2月に入ってレッドソックスからベッツ獲得に成功し、一気に世界一の最有力候補に躍り出た。
 打線は昨季も得点力リーグ1位。そこにベッツが加わり、さらに破壊力が増した。ベリンジャーとのMVPコンビを軸に、マンシーら複数のポジションを守れる選手たちを自在に組み合わせ、どのような投手にも対応が可能。OPSが.800に届かなかった捕手と二塁も、スミスと新人ラックスが定着すればグレードアップする。どこにも隙がない打線が完成したと言っていい。一方、防御率リーグベストの投手陣はリュ・ヒョンジン、リッチ・ヒル、前田健太が抜けた一方、プライスが加わり、ウッドが復帰。ウリアス、ストリップリング、若手有望株のメイもいて、ローテーションの「質」は多少落ちたとしても、「量」は問題ない。心配なのはブルペンで、ジャンセンに衰えが見られるため、復活の期待を込めてトライネンを獲得したが、そのトライネンも昨季は不振に苦しみ、盤石の信頼は置けない。
 それでも、個々のタレントや層の厚さ、投打のバランス、ファーム組織の充実度などほぼすべてのカテゴリーで最高評価がつくほどチーム力は充実している。本当に今季こそ、1988年以来の歓喜がLAを包むチャンスと言っていいだろう。



サンディエゴ・パドレス

▽往年のチームカラーが復活 記念すべき年に大躍進を

 昨季は2016年以降の4年間で3度目の地区最下位。3億ドルを投じてマチャドを獲得した大型補強が実らなかった形だ。それでも、オフのトレードで戦力を向上させたこともあり、今年のパドレスをサプライズ・チームに挙げる声は多い。
 このチームの売りは何と言っても「若さ」だ。昨季のロースターの平均年齢はメジャー2番目に若い26.0歳。大型遊撃手として台頭したタティースJr.を筆頭にパダック、メヒーアらが次々と台頭している中に、プレラーGMはトレードやFAでファム、パガーン、ポメランツ、プロファー、グリシャムらを補強。攻守とも戦力層は確実に厚くなった。先発投手陣はビッグネーム不在だが、パダック以外にもラメットやクォントリルなど伸びしろの大きい投手が複数おり、決して侮れない。また、今季は球界最高の有望株投手と目されるゴアのメジャーデビューが予定されるなど、マイナーからの若手昇格の波は今後も続く。その気になれば、プロスペクトを駒に大物補強に打って出ることも可能だ。
 地区7連覇中のドジャースにはさすがに及ばないとしても、ワイルドカード争いに食い込むだけの戦力は整った。オフのファンフェスタでブラウン&ゴールドのチームカラー復活を発表した際、オーナーは言った。「このユニフォームは我々がチャンピオンに輝く時のものになる」。今年はその時計の針が、大きく前進するシーズンとなるに違いない。



サンフランシスコ・ジャイアンツ

▽主力選手の高齢化が進行 今季も「我慢のシーズン」か

 2010年代は前半に3度の世界一を達成したが、最後は3年連続で負け越しと低迷。昨季限りで、13年間続いたブルース・ボウチー政権も終焉した。ザイディCEOがドジャース時代にともに働いたキャプラー新監督を迎えて新たなディケイドに臨むが、強豪に返り咲くのはまだしばらく先になりそうだ。
 エースのマディソン・バムガーナーと抑えのウィル・スミスがFAで流出し、ポージーやロンゴリアら主力野手の高年齢化による衰えも目立つ。得点力リーグワースト2位の打線は、今季も劇的な改善は望めそうにない。ヤストレムスキーは昨季の活躍を再現できるか疑問符もつく。ポージーも捕手として常時出場するのは厳しく、本拠地オラクル・パークの右中間のフェンスを前に出す改修も有利に働かない可能性もある。それでも、ザイディCEOは「若手有望株の育成に時間をもう少しかける予定で、昇格の障壁になるような動きは避ける」と付け焼刃の戦力補強を否定。ペンスら出戻り組を含めて短期契約の選手を集めてチームを編成した。タンキングと呼ぶほど極端ではないが、今季も「我慢のシーズン」という位置付けは変わらない。
 後半戦には、18年ドラフト全体2位指名の有望株捕手バートが昇格する可能性があり、そこからが本格的な再建スタートになりそうだ。戦力とは関係ないが、MLB史上初の女性コーチ(アリッサ・ナッケン)採用も注目に値する。