※ スラッガー『2020 MLB選手名鑑』より抜粋



アメリカン・リーグ


【東部地区】

▽欠点を埋めたヤンキースにレイズが挑む

 2009年以来の世界一を目指すヤンキースがゲリット・コールの獲得に成功。唯一にして最大の欠陥だったエース不在を解消した。アーロン・ジャッジとジャンカルロ・スタントンの両大砲が長期欠場しながらも300本以上の本塁打を量産した強力打線は健在なので、よほどのことがない限りプレーオフに進めるはずだ。ライバルのレッドソックスは、ムーキー・ベッツの放出で相当な戦力ダウンは免れない。依然としてクリス・セールやJD・マルティネスら優秀な選手を多数抱えているとはいえ、ワイルドカード争いが精一杯ではないか。
 むしろヤンキースの牙城を崩せそうなのはレイズ。投手陣の充実度はヤンキースを凌ぐと言っても過言でない。筒香嘉智が加わった野手陣も伸びしろの大きな選手が複数おり、ケビン・キャッシュ監督の采配も評価が高い。18年のオープナーに次ぐ斬新な戦略を導入する可能性もあり、その意味でも注目のチームだ。ブルージェイズも壊滅的だった投手陣にリュ・ヒョンジンらを加え、戦う態勢が整いつつある。プレーオフ争いに加わるかどうかはともかく、ブラディミル・ゲレーロJr.、キャバン・ビジオ、ボー・ビシェットの若手二世選手トリオは魅力いっぱいで、楽しみなチームになってきた。オリオールズは絶賛再建中。3年連続のシーズン100敗を免れれば御の字といったところだろう。


【中部地区】

▽ホワイトソックスの大補強は実を結ぶか

 ツインズが一歩リードし、インディアンスとホワイトソックスが追いかける展開が予想される。昨季、メジャー新記録の307本塁打を放ったツインズは、ジョシュ・ドナルドソンが加わって打線の迫力が一層増した。前田健太が加入した投手陣も先発、リリーフとも粒揃いで、2連覇に向けて視界は良好だ。地区3連覇が途切れたインディアンスは、自慢の先発投手陣からコリー・クルーバーを放出したのに加え、マイク・クレビンジャーがヒザの手術で開幕出遅れが濃厚とあって、野手陣が奮起しないと苦しい。夏場までに上位争いから取り残された場合には、フランシスコ・リンドーアを放出してチーム解体に着手することも考えられる。
 ホワイトソックスは、昨年89敗もしたチームとは思えないほど前評判が高い。投打とも若手が力をつけているところへ、ヤズマニ・グランダルやダラス・カイケルらをFA市場で補強。本気で2008年以来のプレーオフ進出を狙いにきていて、それが実現する可能性も決して低くない。ロイヤルズは本塁打王のホーヘイ・ソレーアやアダルベルト・モンデシーら個々には魅力的な選手がいるが、チーム自体は再建途上で今季も苦戦を強いられそう。タイガースの状況はそれ以上に悪く、17年ドラフト全体1位のケイシー・マイズをはじめ、マイナーにいる将来の主力投手の成長を辛抱強く待つしかない。


【西部地区】

▽アストロズの4連覇に黄信号?

 3年連続100勝以上と絶対的だったアストロズの地位は、サイン盗み騒動によって揺らいでしまった。全米、いや全世界の野球ファンを敵に回し、地元のヒューストンでさえも白眼視されている。選手たちは行く先々でブーイングを浴びるだろうが、不正に頼らなくとも勝てることを証明しなければならない。タレント自体は揃っていて、ゲリット・コールを失ってもなお、地区優勝候補の最右翼と位置付けられている。打倒アストロズの一番手はアスレティックス。大きな補強はなかったが、故障や出場停止でフルに働けなかったショーン・マネイアとフランキー・モンタスが戻ってくる。ヘスス・ルザードとAJ・パックの両若手左腕が期待通りの成績を収めれば、強力な先発ローテーションが完成する。
 新球場グローブライフ・フィールドに移るレンジャーズは、コリー・クルーバーを獲得するなどして先発ローテーションの整備に成功し、ダークホース的存在。エンジェルスはアンソニー・レンドーンの加入で打線の迫力は増したものの、大谷翔平が復活しても先発投手陣はまだ弱すぎ、またしても「マイク・トラウトの全盛期を無駄にした」と言われかねない。マリナーズはいまだ再建の初期段階で、カイル・ルイスら若手の成長が最優先課題。今季も勝ち負けは二の次になりそうだが、2年目を迎える菊池雄星の活躍に期待したい。



ナショナル・リーグ


【東部地区】

▽本命は世界一ナショナルズではなく……?

 4球団による熾烈な戦いが繰り広げられそうな、今季最注目地区。王座防衛に向け、ナショナルズはアンソニー・レンドーンが流出したが、スティーブン・ストラスバーグの引き留めには成功。ホアン・ソト、ビクター・ロブレスら若手はさらなる成長が望め、何よりストラスバーグを含めエース級が3人も揃う先発投手陣が心強い。地区2連覇中のブレーブスの評価も高い。フレディ・フリーマン、ロナルド・アクーニャJr.ら野手陣の充実度はナショナルズ以上で、絶対的エースこそ不在ながら先発・リリーフとも層は厚い。また、マイナー組織の充実もナショナルズにはない強みだ。
 大補強を施しながらここ2年期待を裏切っているフィリーズは、ジョー・ジラルディ新監督を招聘。伸び悩む先発投手たちが潜在能力の高さを発揮できれば、2強に割って入れるかもしれない。実は、勝敗予測システムPECOTAが弾き出した地区優勝球団は、昨年3位のメッツ。ジェイコブ・デグロムとノア・シンダーガードを軸とした投手陣は強力で、打線には昨年MLB新人記録の53本塁打を放ったピート・アロンゾもいる。昨年、不振にあえいだエドウィン・ディアズやロビンソン・カノーらが復調すれば、予測が的中する可能性は十分ある。マーリンズだけは蚊帳の外だが、日本のファンにとっては加藤豪将のメジャー昇格が見どころになりそうだ。


【中部地区】

▽レッズの積極補強で“四つ巴”の争いに

 昨季もカーディナルス、ブルワーズ、カブスによる地区優勝争いが最後までもつれたが、今季はそこへレッズも加わって混戦に拍車がかかりそうだ。地区連覇を目指すカーディナルスは、マーセル・オズーナが抜けて攻撃力は若干ダウンしたが、さほど戦力に変化はなかった。その分をジャック・フラハティ、ダコタ・ハドソンら若手先発陣の頑張りで補えるか。ブルワーズは、打線の中軸を担っていたヤズマニ・グランダルとマイク・ムスタカスら主力の多くが流出。韓国で活躍したジョシュ・リンドブルームら新たな戦力も加えてはいるが、こちらも昨季に比べるとやや戦力を落としている。
 カブスは2016年にワールドチャンピオンをもたらしたジョー・マッドン監督が退任。オフはほとんど補強がなかっただけでなく看板選手のクリス・ブライアントに放出説が飛び出すなど不安定な状況だが、選手個々の能力は高いので決して侮れない。レッズは先発投手陣が見違えるほど改善され、打線にもムスタカス、ニック・カステヤノス、秋山翔吾を補強。若手有望株のアリスティディス・アキーノやニック・センゼルが先発から漏れそうなほど層が厚くなり、一気にプレーオフに返り咲いても驚くには値しない。球団社長、GMから監督まで首脳陣を総入れ替えして再出発するパイレーツだけが取り残された格好になってしまった。


【西部地区】

▽7連覇中のドジャースが今季も大本命

 地区7連覇中のドジャースが今季も大本命だ。昨年106勝のチームにムーキー・ベッツが加わって、コディ・ベリンジャーとMVPデュオを組むインパクトの大きさは計り知れない。クレイトン・カーショウ、ウォーカー・ビューラーに次ぐ先発3番手以降は流動的で、ブルペンも決して磐石とは言えない。それでも、マイナーも含めた球団組織全体の充実度は30球団屈指。プレーオフ進出は当然で、1988年以来のワールドチャンピオン達成が唯一絶対の目標になる。
 ワイルドカードを狙うしかない他の4球団では、ダイヤモンドバックスとパドレスにチャンスがありそうだ。Dバックスは高年俸のベテランを放出しながら、安価で戦力になる選手を獲得して上手にチームを作り替えた。パドレスも大枚を投じてマニー・マチャドらを獲得した一方、フェルナンド・タティースJr.、クリス・パダックら若手が成長。オフは打線とブルペンに補強を加えて戦力底上げに成功しており、昨年の最下位から一気に浮上する可能性を秘めている。一方、ロッキーズは一時は向上していた投手陣がまたも崩壊し、トレードの噂に翻弄された主砲ノーラン・アレナードが球団を公然と批判するなど雰囲気も悪化している。バスター・ポージーが全盛期を過ぎ、マディソン・バムガーナーが退団したジャイアンツも、ポストシーズン進出の望みは少なそうだ。


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そして、アリゾナ・ダイヤモンドバックスについては以下のような戦力分析となっている。


▽バムガーナーが新たに加入 ワイルドカードは十分狙える

 昨季は予想を上回る健闘だった。2018年オフに主砲のポール・ゴールドシュミット、シーズンに入って夏場にはエースのザック・グレインキーを放出しながら、ポストシーズン進出の可能性が潰えたのは、156試合目を終えた時点だった。新たにバムガーナーとカルフーン、S・マーテイを加えた今季は3年ぶりのポストシーズン進出を目指す。
 絶対的な売りがない代わりに致命的な弱点もないのがこのチームの特徴で、打線はビッグネーム不在ながらバランスの取れた布陣。1・2番の“ダブル・マーテイ”で機動力でかき回すこともできるし、カルフーンやエスコバー、ウォーカーらで長打攻勢をかけることも可能。また、球団はS・マーテイにセンターを任せ、K・マーテイを二塁に戻すことで全体の守備バランスが向上すると考えている。若き司令塔のC・ケリーの攻守にわたる成長も期待大だ。先発投手陣は、新エースとしてバムガーナーを迎えた一方で、トレードが噂されたレイは手放さなかった。頭数は揃い、昨季チーム最多イニングのM・ケリーがはみ出しかねない。ただ、ブルペンには不安が残る。クローザーのブラッドリーはいいとしても、そこにつなぐまでが少し弱い。ここをどう底上げするかがカギになりそうだ。
 圧倒的な戦力を誇るドジャースがいる以上、地区優勝の候補には挙げにくい。けれども、ワイルドカード進出は十分可能な陣容となっている。


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