自由主義(じゆうしゅぎ、liberalism、リベラリズム)とは、自由と平等な権利に基づく政治的および道徳的哲学です。政治色は黄色で、シンボルは黄旗になります。18世紀中頃から出てきた啓蒙思想・進歩主義・理性崇拝主義・ヒューマニズムなどを基盤とし、人間は理性、人権などを大切にするから人類が力を合わせてそれを守っていけば戦争はなくなると言った考え方です。主に3つの理論があるのですが、その考え方と、実際にそれを国が実行した結果例等を下記にまとめました。

 

 

①相互依存派 (各国の経済的な相互依存が強まれば世界から戦争は無くなるという理論。)

これは20世紀の初等に出てきた考え方です。その理由は20世紀初頭になると国際貿易と国際的相互投資が、今と同じくらいヨーロッパ諸国とアメリカの地域では盛んになりました。そして1910年にはノーマンエンジェル(イギリスの労働党の政治家。ノーベル平和賞受賞者)という知識人が、世界中の諸国が国際貿易と相互の投資に頼っていて、各国の経済的な相互依存がこれほど高まれば戦争なんか時代遅れであり、今後は経済依存を世界諸国が高めていくから戦争など起きないという内容の本(大いなる幻想)を書きベストセラーになります。しかしその4年後には第一次世界大戦が起きます。ということは各国の経済的な相互依存が高まっても戦争を止めることはでなかったわけです。しかし1989年にベルリンの壁が崩壊し、東西の冷戦が終わるともう一度この理論が世界中で流行り、世界中の人がグローバリズムは素晴らしく、国境なんかは問題じゃなく、グローバリストエコノミーでお金儲けだけやってれば戦争は起きないという考え方になってしまいます。しかしご承知の通り戦争はなくなっていませんね。ということはこの理論は間違っているということが分かります。

 

この考え方を実行し間違った例を一つ。

冷戦後アメリカが実行した中国に対する経済政策がそれに当たります。当時アメリカ政府は中国に対し経済技術を供与し、クリントン政権時代には最恵国待遇やWTO国際貿易機構に参加させたりと中国の経済成長を大きく助けました。その後のブッシュ政権、オバマ政権においてもそれは同様でした。中国経済が大きく成長し豊かになれば諸国との経済的な相互依存が高まり世界は良い方向へ向かうという政策はまさに相互依存派の考え方です。しかしその結果は皆さんご承知の通り両国は現在、覇権を争って対立しています。

 

このように国際政治学の考え方を間違えると、とんでもない間違いをしてしまうという良い事例だと言えます。

 

 

 

 

②制度学派 (国際組織や国際法を充実させれば世界から紛争はなくなるという理論。)

まず前提として過去2500年間または3000年間から現在において世界政府・世界警察・世界裁判所のような完全に独立した世界統治機関は存在していません。

それを踏まえた上で、経済制度においては、国際法や国際組織を作ればお互いに得をするということはあり得るのですが、軍事政策と外交政策においては最終的にどちらの国が影響力を持つのか、またどちらの国が有利な立場を獲得するのかという競争なので、必ずしも国際法・国際組織を拡充・強化すれば良いというわけではないのです。特にアメリカ・中国・ロシアにのように本音レベルでは常に自分たちが優位に立ちたいという考えに基づいて国際法や組織を動かしていますのでそう簡単にはいかないのが現実です。

 

例えば過去70年間、世界で一番国際法を破ってきた国はアメリカ・中国・ロシア・イスラエルです。この4つの国は口先では国際法を充実させ、お互い協力して平和な世界を作りましょうと言いますが、一方では平気で軍事力を行使し、ほかの国を痛めつけ国際法違反の侵略戦争をやったり戦争犯罪を犯しています。他の国が非難しようがお構い無しです。このようにある特定の覇権主義的な国が平気で国際法を破ってもきちんと対応できないのが現実です。

 

また1985年から1990年までアメリカ国務省の最高法律顧問を務めたアブラハムソファという人物が「国際法などなんの役にも立たない」と言っています。以下はその詳しい内容です。

 

「1945年に国連憲章が採択され一方的な軍事力の行使は国際法違反となった。しかし世界の諸国はこれを無視して何百回も軍事力を一方的に行使している。そして国連安保理は平和を維持する機能を果たせない。特にアメリカとロシアの両国は国連に協力するよりも、自分たちの言いなりになる属国を増やすことに熱心であった。また両国は世界中の発展途上国における非合法的な実力行使、つまり軍事力行使によって体制転換政策を実行してきた。これらのアメリカとロシアによるある意味でのクーデター行為は、世界の諸大国が国際法に拘束される意思は持たないということを示すものであった」

 

これでは制度学派の考え方にも限界があるのは明らかです。

 

 

 

 

③民主的平和の理論 (世界中が民主主義国家になれば戦争は無くなるという理論。)

冷戦後のクリントン政権・ブッシュ政権・オバマ政権はこの理論を公式に採用していました。そういう意味ではとても注目すべき考え方なんですが、彼らは公式にこの考え方を採用してはいましたが、きちんと守っていたわけではありません。

 

ここでこの理論の問題点が2つあります。

まず、民主主義を実行している国は本当に平和な国なのでしょうか? 

例えば2500年前のギリシアにおいてアテネは民主主義で、スパルタが軍国主義だったわけですが、どちらが好戦的だったかと言えばアテネの方がよっぽど好戦的でした。実際には軍国主義であるスパルタの方が他の国に対して弱いものいじめをやる頻度が少なかったわけです。そして紀元前5世紀の後半にペルシア戦争を経てペロポネソス戦争がおきます。そこでギリシアの都市国家の多くは軍国主義であるスパルタ側に味方します。それはアテネは民主主義国家でありながらやたらと好戦的で、他の国に武力介入するという側面を持っていたからではないでしょうか。また18,19世紀のイギリスにおいては民主主義国家でしたが、その一方で帝国主義でもあり他の国にどんどん攻めいって植民地を増やしていきました。

 

次に、世界中の国が民主主義になれば本当に世界に平和が訪れるのでしょうか?

有名な国際政治学者であるジョージケナン、ヘンリーキッシンジャー、ハンスモーゲンソー、ケネスウォルツなどは民主主義を実行するにはいくつかの条件があり、その条件を満たさない国に民主主義を押し付けても逆に国内が不安定化してしまう事実があると言います。その主な条件とは、

 

・国民の間に法治主義の習慣がしっかりと根付いていると言う事。

・行政機構が優秀である事。要するに行政を担当する官僚・役人がそれなりのレベルに達している事。

・司法制度・裁判制度が独立していて国民が信頼できる裁判所が成立している事。

 

などが主な条件であると言います。この様に、ある程度の条件が整っていない国に、いきなり民主主義を押し付けてもうまくいかないと言う事実を承知の上でアメリカはこの考え方を公式に採用しました。それはアメリカが世界中の国に内政干渉・軍事介入する能力を維持し、時にはそれを実行してアメリカの国際指導力を世界中の国に浸透させるための口実であったと言えます。露骨に「アメリカの言うことを聞かなければ内政干渉し軍事介入するぞ」とは言えないのでその口実として、民主的平和の理論は一番都合がいいわけです。要するにアメリカは覇権・指導力・権力を増強したいのが本音であって、世界中を民主主義にして平和な世界を作りたいんだと言うのはその口実にすぎないのが現実ではないでしょうか。

 

実際にアメリカは他の国の民主主義を尊重すると言いながら、他の国が民主的な選挙でリーダーを選び、それがアメリカの国益にとって都合が悪い場合は、CIAや国務省を使って内政干渉し、時には軍隊を使って軍事介入し、それを排除してきました。

 

具体的な例として

1953年にイランで民主的な選挙で選ばれたモサデク首相をアメリカは、CIAを使ってクーデターを起こし失脚させた後、パーレビ王朝を支援し傀儡政権を起こさせました。また翌年1954年には、グアテマラで民主的な社会改革が進められていたにもかかわらず「共産主義化している」などのネガティブキャンペーンを張り同じ様なことを実行します。また1963年になると南ベトナムで、1964年にはブラジルで、いずれも同じ様にアメリカの国益に対し都合が悪くなると内政干渉し、クーデターを起こさせました。1973年にはチリで、また最近の事例ではオバマ政権時代のエジプトでの「アラブの春」が有名です。

2013年にはウクライナでやはり民主的な選挙によって選ばれた親ロ派だった大統領を、現在バイデン政権の国務次官であるビクトリアヌーランドが国内動乱を煽り、やはりCIAと国務省を使って内政干渉し、デモと暴動を起こさせて追い出し、勝手にウクライナの首相を決めた結果、泥沼の内乱からロシアの軍事侵攻にまで発展してしまいました。

 

さらにクリントン政権下に国連大使・国務長官を務めたオルブライト国務長官は1998年に「アメリカは他の国に対して一方的に軍事力を行使する権利がある。それは我々が世界にかけがえのない国アメリカだからだ」と言う発言をしています。すごいですね(笑)また当時クリントン政権がイラクに対し非常に厳しい経済制裁(特に医療品の供給をほとんど止めた)を実行したため、イラクの子供達が50万人以上死んだと言われていることに対し、当時国連大使だった彼女は「価値のあることだ」とも発言しています。また彼女は恐ろしいことに、その後の国務長官時代にもイラクに対する経済制裁を続行し、結局8年間のクリントン政権時代にイラクの子供達は少なくとも80万人死んでいると言われています。それは全てイラクの民主化のためであると言うわけです。そして2000年のクリントン政権の国家安全保障戦略書の内容によると、「アメリカの安全保障は世界中の安全保障と連携している。従ってアメリカは世界中のデモクラシー(民主化)世界中の人権を守るために軍事力を行使しなければならない」と公式に発表しています。

 

また2003年のブッシュ政権化においてもアメリカは「イラクは大量破壊兵器を隠し持っている」と言うのを口実に攻め入りますが、実際に占領してみると大量破壊兵器は出てきませんでした。その際ブッシュ大統領は「我々は世界の民主的平和を実現するためにイラクを占領したのである。」と攻め入った口実を変えました。ここでも民主的平和の理論を口実に使っています。

 

この様に「世界の人権、民主主義のためであれば他国に軍事行使しても良い」と言うのが民主的平和の考え方の実態であると言えます。

 

これでは民主的平和の考え方も一部の覇権主義国家が存在し、その口実として使われる以上、世界中が民主主義国家になっても世界の安定は難しいと言えるでしょう。

 

 

伊藤貫先生の真剣な雑談からのまとめ書き写し其の二です。わかりやすくまとめたつもりですが。。。

私、今までリベラルを共産主義と左くくりで混同していたように思います。無知の知(笑)

 

あくまで自分は大衆の中の一人にすぎませんし、民主主義を根底から否定するわけでもありませんが、良い悪いは別として民主主義を上手く利用し、覇権国家として「世界を守る」という最もらしい事を言って世界を支配しようとしている国があることも現実です。

昨今ではインターネットの確立とコンピューターの進歩によって、学習しそれをまとめ発表する事がよくも悪くも容易になりましたが、歳をとると覚えるのに時間はかかるわ、すぐ忘れるわで困ったもんです。若い頃もっと勉強にも没頭しとけばよかった(笑)

しかし便利な世の中になったもんですね、ついて行くので精一杯ですwww

 

参考動画:伊藤貫の真剣な雑談よりまとめ書き出し

https://www.youtube.com/watch?v=AiVeHkMftDo