やや悲観的な話になるかもしれないが、興味深く面白い講義だと思いまして、伊藤貫先生の「真剣な雑談」から書き起こしてみました。
日本がこれから説明する6つの国際政治学の考え方のどれを採用するかによって現在の国際社会の中で生存できるかが決まってしまう。
間違った考え方を採用してしまうと日本は滅びてしまうという考察。
その根拠として
現在日本はアメリカと3つの核武装国(中国・北朝鮮・ロシア)に包囲されている。そしてこの国々は確実に新しい核ミサイルを増やしている。
そしてこの3の核武装国は、アメリカが半ば強引に日本に買わせているミサイル防衛システムを無効にする核ミサイルをすでに持っている。
つまり、アメリカからどんなに高額なミサイル防衛システムを購入したところで、この3カ国に日本は太刀打ちできないのである。そしてこのことはアメリカは百も承知なのである。
またアメリカはこれらの核武装国が、アメリカと日本をターゲットにする核ミサイルをどれだけ増強しようとも、日本にだけは「核抑止力を持たせない」という政策を現在実行しているのが現実である。
この状態があと10年ないし15年ぐらい続くと、日本は完全に身動きができなくなる。というより現在すでに日本は身動きできない状態にある。それが10年もするとより明らかになってくるであろう。また核ミサイルをどんどん増やしている中国・ロシア・北朝鮮に対しアメリカは、本気で核戦争するつもりなどないため、日米同盟の意味はどんどん落ちていく。このままでは日本の未来は絶望的な状態になると言えるだろう。
これらを踏まえた上で、日本が国際政治学の間違った考え方を採用してしまうと、いつまでたっても国際社会に対してどうゆう風に対抗してよいのかわからない状態におかれてしまうというのがその根拠である。
過去76年間の日本の対米依存・対米従属政策は、きちんとした国際政治学の考え方に基づいた政策ではなく、単にアメリカに叩きのめされて占領され、その後、日米安保条約・占領軍憲法(日本国憲法)を強い言い方をすれば押し付けられ、アメリカ軍が永久に日本を占領し、日本は独立できない状態で、ある程度のお金儲けだけはさせるというのがアメリカの対日政策の実態であった。
これでは当然日本は、本当の外交政策・軍事政策・国防政策を作ることはできない。というより作りようがない。それを日本はなんと76年間もやってきた。
気がつけば現在日本は、甘い汁を吸い、米国頼りを続けた結果、身動きが取れず、ますますひどい状態になるという状況に置かれている。
ここで日本人としては、自分たちが国際政治学においてどう言う考え方のパターンを採用しているのかと言うことをはっきりしないと、自分たちの考え、国家戦略を明確に設定することができない。これができないとなるとますますアメリカと中国に弄ばれるだけである。
なのでこれから日本が国際政治学のどういった視点をとっていくかという事を明らかにするべきだと伊藤貫先生は言う。
そこで西洋言語では「物を考える」時に重要な3つの段階に分けるという。
1番上に哲学的な議論(抽象度が高い)を置き、その下に学派レベルの議論(どう言う考え方のパターンを採用するのか)、そして最後に身近なポリシーレベルの議論(具体的にどう言う政策を実行すれば良いのか) の順番で議論を行う。
①抽象度の高い哲学的な議論(フィロソフィカルレベル)
②どの考え方のパターンを採用するのかといった学派レベルの議論(パラダイムレベル)
③具体的な議論(ポリシーレベル)
この3つを基本に、いつもどのレベルで考えているのかを意識しながら議論を進めないと質が高く、安定した一貫性のある議論ができない。
しかし残念ながら日本語という言語ではこの3つに分けて議論するという事にあまり馴染まないという。
学派レベルの議論はマスコミには出てこないし、政治家もそういった議論はしない。そして恐ろしいことに外務省・防衛省もそういった議論はしない。じゃあ大学でやってるのかというとそうでもない。
そうすると日本の国際社会の政治学者(それも総理大臣のブレーンとか言われているような人たち)がやっている議論というのは、結局日本の戦後の対米従属主義・対米依存体制を正当化するための議論に過ぎず、本当の国際政治学のパラダイムレベルの議論ではなかった。
要するに吉田茂、佐藤栄作、中曽根、といった人たちがひたすらアメリカに従属し、それを正当化してみせるための議論を、東大の先生たちは供給していただけであり、日本における本当の意味での国際政治学者ではなかったという事がわかる。
残念ながら現在も日本における国際政治の議論、外交政策、国防政策の議論というのは、どのパラダイムを使って議論しているのかという事を明確に意識しないまま、アメリカが日本を守ってくれるという幻想の中で議論しているため、いつまで経っても安定した自分たちの外交政策、自分たちの軍事政策というのは実行できない。これを日本は76年間ずっとやって来たわけである。
そこで日本とアメリカにおいて国際政治学を勉強した伊藤貫先生の国際政治学の「6つのパラダイム(物の見方・考え方)」がこれからの日本の国際政治における進め方について重要になってくるのではないかと考える。
●国際政治の4つの構造
6つのパラダイムを説明する前にまず、国際政治の構造を理解する必要がある。これを明確に意識しないと話が前に進まない。そこで国際政治の過去2500年間もしくは3000年間の特徴を端的に4つにまとめる。
⑴世界政府は一度も存在していない。
無論、世界を管理する警察・裁判所・立法員などといった物も存在しない
⑵世界共通の価値判断は存在していない。
⑶世界において国際組織が主役だったことは一度も無い。
⑷世界各国は主にバランスオブパワー(勢力均衡)政策を行ってきた。
共通の権力の存在しない不均質な国際社会で、多数の主権国家がそれぞれの国益を追求しながら、
いずれの国家が優越的な指導権を握ることも排除し、国際間に均衡を図ることによって相互に攻撃
ができないような状況をつくり、国家さらには国際社会の平和と安定に寄与する国際政治上の原理
ないし政策の事。
これら4つの前提を踏まえた上で国際社会における6つのパラダイム(物の見方・考え方)を端的に説明します。
●リベラル派の3つのパラダイムと保守派の3つのパラダイム。
・リベラル派
①相互依存派
各国の経済的な相互依存が強まれば戦争は無くなるという理論。
しかしこれには第一次世界大戦と、中国とアメリカの新冷戦という二つの反例が存在します。
第一次世界大戦が起こった当時ヨーロッパ諸国は経済的に非常に強い結びつきを持っていまし
た。またアメリカがこの相互依存派のパラダイムを採用して、中国と経済的な結びつきを強くして
行きましたが、それにも関わらず現在アメリカと中国は派遣を争って対立しています。
②制度学派
国際組織(国連等々)や国際法を充実させれば世界から紛争はなくなるという理論。
しかし、この理論にも大きな欠点があります。アメリカ、中国、ロシアなどの大国は自分たち
に少しでも都合のいい制度を作ろうとして、折り合いがつかない。またこの三ヶ国は国際法を守
るつもりがなく何度も破っています。
③民主的平和の理論
世界中が民主主義国家になれば戦争は無くなるという理論。
この理論は反例が多すぎて話にならないというレベルです。まず、18世紀、19世紀のイギ
リスは民主主義国家でしたが世界中で侵略を行っていました。また現在のアメリカもイラク戦争
など多くの侵略戦争を行っています。
*民主主義が健全に機能する国家の条件
・国民の間に法治主義が根付いている事
・官僚機関が優秀である事
・司法が健全に独立していて、国民からの信頼を充分に得ている事
・保守派
①攻撃的なパラダイム
現状を自国の都合のいいように変えて行こうとする理論。
現在のアメリカ、中国、ロシアは世界中で侵略的な軍事行動を起こしているので、この理論に
当てはまります。このやり方は自国の防衛予算を膨大にし、他国の反感を買うことになるので賢
明とは言えません。
②防御的なパラダイム
自国を守ることを最優先し、現状がこれ以上悪くならないようにすることを目指す理論。
バランスオブパワー政策とも呼ばれ、最も成功を収めたのがビスマルクです。伊藤貫先生もこ
の防御的パラダイムを支持しています。
③覇権安定論
攻撃的パラダイムをさらに拡張したもので世界を支配することで安定をもたらそうとする理論。
アメリカと中国は世界の覇権をとって支配しようとしているのでこの理論に当てはまります。
しかしこれはアメリカの中東支配が失敗していることからも分かるように、属国からの大きな反
発を招く可能性があります。世界共通の価値判断がない限りこの政策は難しいでしょう。
このように整理してみると最近は認知度も増してきたグローバリズム・エスタブリッシュメント・ネオコン・ディープステート。彼等は上記のパラダイムのほとんどに精通しているように見えます。むしろこれらの考え方をごちゃ混ぜにして論理を展開し、結果大きく二分化することで彼等が巨万の富を得る構図を作っているようにも見えます。頭の良い彼等からしてみればパラダイムなんてなんだっていいのかもしれません。ただ1つだけ精通していないように見えるのが防御的なパラダイムですね。
引き続き足りない頭を使って伊藤貫先生の講義を見てまた書き起こすことにします。
お疲れ様でした(笑)
御意見無用
参考動画 伊藤貫の真剣な雑談よりまとめ書き出し