夫婦のことを、昔は「めおと」と言いました。これは漢字で書いたら「妻夫」です。何事も妻が先とされたのです。もう少し踏み込んで言うと、奈良・平安の昔から、江戸時代に至るまで、給金と言うものは、家に支払われるものとされてきました。外で働くのは夫ですけれど、その給金は夫に支払われるのではなく、その家に支払われたのです。その給金(多くの場合はお米)の管理は、内政一切を任せられた妻の仕事とされました。つまり夫は妻から小遣いをもらって酒を飲むと言うわけです。(笑)

 

この様な習慣は、大国の中では世界中どこにもありません。

 

日本では、古代からずっと男女は互いに対等な存在だったのです。

 

また「万葉集」や「古今和歌集」に代表される様に八世紀という古い昔の、貴族でもない一般人の女性が、ちゃんと字が書けて和歌も詠めました。その歌も、原文を見ると全て漢字で書いてあります。つまり漢字で読み書きができたのです。

 

西洋においては18世紀になっても都市部の識字率は、男女合わせて10%内外でした。まして女性の識字率となれば1%にも満たなかったと言われています。つまり一部の支配階級の人間にしか読み書きが許されていなかったと言った方がわかりやすいかと思います。また現代においても世界では「女性は文字を覚える必要はない」などとしている国や民族もあります。

 

そんな世界にあって日本では千年以上も昔から、若い女性が和歌を詠み、それを書く事ができるだけの教養を備えていたのです。万葉集には、他にも一般庶民の女性たちが詠んだ歌がたくさん掲載されています。

 

この様に日本は古い昔から、男女が対等な国でありました。

 

小名木善行氏 著「庶民の日本史」より抜粋