そう
まるで あなたは空で 私は海
違う鼓動で見つめあう 
Separate Blue


あと数ヶ月でこの部屋から出てゆく。
少しずつ荷物を片付けなくては。

なかなか重い腰が上がらず昨夜やっとはじめたのだが、
今はもうすでに日は高く上り、カーテン越しの鈍い光が
ぼんやりと目に映った。

「ふう・・・。」
私は大きなため息をついて思い切り腕を伸ばした。
ひとりで住んでいた小さなこの部屋の、どこにこんなに
モノがあったのか・・・


ふと目に留まった一枚のCD。
学生の頃繰り返し聴いた、大好きな唄だった。

高く 果てない青と 深まる 青
溶けることなくキスをする 
Separate Blue



果てしなく広がる青空のような男たちを
一体何人自分は愛し恋焦がれたろう。
何度空に手を伸ばして、その澄んだ心に
触れようとしただろう。

私は青い空を映す 海。
空の青さを映して同じ青に染まる。

だがやがて
空は海と溶け合うことを望みはじめる。
空は夕陽に照らされて
海は闇に包まれて
もはや青ではなくなる。

それでも空と海は溶け合うことを望む。
溶け合うことなど・・・あり得ないのに。


やがて私は空を映すことをやめる。



目を閉じて小さく深呼吸をして、私はそのCDを注意深く
ダンボールの隅に差し入れた。
無意識のうちに唇が動き、その唄の続きを口ずさみはじめた。


 
まるで あなたは空で 私は海
同じ 季節を埋めあう 
Separate Blue

でも いつだって染まれない あなたにわたし
そう 永遠に染まらない わたしにあなた

わかりあうには遠すぎる あなたとわたし
わかりあうには近すぎる わたしとあなた





私はこの春、結婚する。




by aki <Separate Blue/PSY・S>