どんなに微量でも、花は必ず香りを持つ。


彼女は部屋に花を飾るのが好きだった。
毎週水曜日には、必ず行きつけの小さな花屋で
自分の好きな花で花束を作ってもらった。


店頭には、藤色の背の高い花が並んでいた。
死んだ母が愛したフリージア。
寂しい季節に背筋を伸ばしているその花の香りを、
母はとても愛でていた。

彼女が好きな花は香りが比較的ハッキリしているものが多い。
それは母親の影響もあるのかもしれなかった。


それにしても。

だんだん出来上がる、青い花束を見つめながら
彼女は自分がいつの間にか微笑んでいるのがわかった。

花って不思議。
こんなにいろんな香りがあるのに。
こんなに近くにまとめてあるのに。
ちっとも不快な香りにならない。
不協和音に・・・ならない。

自己主張をしながら同調している。



今日はこの花束をあのクリスタルの花瓶にいれたら
しばらくそばでいろいろ教えてもらうことにしよう。

「どうやったら素直に謝れるか・・・教えてね。」


やさしく花たちに語りかけよう。
注意深く香りを楽しみながら。
テレビもパソコンもつけずに。







by aki