少女小説家は死なない
少女小説の氷室冴子さん死去
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=510484&media_id=2
中学1年、初めて手を出した“少女小説”コバルト文庫は、この人の『ヤマトタケル』で。
その後、『クララ白書』『雑居時代』『ざ・ちぇんじ』『なんて素敵にジャパネスク』…
中3で『JUNE』と同人誌を知るまでの「プレやおい期」とでも言うべき時期は、ほぼ氷室冴子とコバルト一色だった。
今ニュース見てびっくりした。
…そっか、肺がん、だったのか。
そういや『恋する女たち』の高校生だったお多佳も汀子も、お多佳の下宿で酒盛りしてはタバコ吸ってたっけ。
酒・タバコの匂いを消すには番茶でうがいすること。バカのひとつ覚えみたいに高校文化祭の打ち上げの酒盛り後に試したもんだ。
恋をしようが、お多佳・汀子・緑子のイカレっぷりと友情は固く。『ジャパネスク』の瑠璃姫は平安時代のお姫様とは思えないお転婆のブッ飛び具合で。
『雑居時代』の数子さんも、「オンナノコの究極の夢とは恋をして理想の男をつかまえて結婚をすること」の実践者ではあるんだけど、それがもンのすごく計算ずくで冷徹で突進すべき時にはナリフリ構わない、たぶん気づいてないけどそんな「女の夢」をどこか突き放して見ているところが、絶妙のギャグになっていた。
男の決めた社会の指定席を与えられるために、女に学問はいらない、女学校の教科書は女がカシコくエラくならないようにできている、そう、女は男に選ばれ、男に所属して社会に居場所を得るために、しょせん「大奥」のごとくに「男さまのご寵愛」を争い合う仇同士にすぎないのだから、そんなものに友情など成り立つはずもないし、何よりただ男をおびやかさない存在であればいい…という現実世界に対し、女学校寄宿舎の「お姉さま」との絆、「エスの世界」というファンタジーで初めて抵抗をこころみたのが、戦前の少女小説家・吉屋信子だった。
そしてバブルで景気は上向きの昭和で、「お化粧・恋愛派」と「ガリ勉派」というオンナノコの2つのサバイバル戦略に揺れ動き、親に隠れて酒盛りにタバコ、学校じゃわざと男ウケしないバンカラ風女を気取りながら、大学受験という「たぶん男女が平等でいられる最後の場」にそれでも賭けてみる…そんな少女たちを描いていたのが氷室冴子だった、ように思う。
やおい、BL(ボーイズラブ)というジャンルはたぶん、「恋をしようが結婚しようが私は“男に所属した女”ではなく、いつまでも対等な仲間でありたい」という少女小説が脈々と受け継いできた願望をファンタジーの中で一足飛びに叶えたジャンルで。
コバルト文庫でBL色の濃い『炎の蜃気楼』がベストセラーになった辺りからだろうか。氷室冴子の名前もあまり聞かなくなっていた。
本当に、正統派の「少女小説家」だったんだなぁと、振り返ってみて思う。
テニミュ降板に思うこと
人気イケメン俳優の岡山外潤がミュージカル『テニスの王子様』を急遽降板
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=508861&media_id=54
なんでもmixiでカノジョが飲酒・喫煙・ラブホ入り写真を不用意に自慢しちゃったのがネットに上げられたそうで、あれまぁ、「人気イケメン俳優」なんてのはそういう枕詞でもくっつけないと「何それ?」レベルの知名度しかまだなくて、しかもまだ10代で、これからテニミュで本格売り出しって考えてたその前にこんな形でケチがついちゃってー、今ごろ思慮の足りないカノジョを恨んでいるのか、それとも自覚の足りなかった自分を恨んでいるのか…なんて。
昨日はご多分に漏れず、ニコニコテニミュ厨としてツラツラ考えていたわけですが。
しかし多数の抗議行動と聞いて、あーまた「これだから腐女子は怖い、キモい」とか言われンだろうなぁ…と思いつつ、まとめサイトや2chスレや問題の画像アップロードなんかを回って、コトの経過をざっと見ると。
1) 飲酒・喫煙・ラブホ云々…は、この子のカノジョの日記エントリやアップした写真から「限りなくクロと思われる」らしい
2) カノジョやそれ以外の友人の日記も見ると、この子どうやら、テニミュの大きな部分占める客層の女子オタクファンが「キモイ」とか、んでテニミュは「人気のための踏み台」みたいなことを平気で友人に喋っていたり、舞台観劇にも居眠りこいて、先代跡部役の役者さんに対しても「ウジ虫」呼ばわりで小馬鹿にしていたらしい
…あー、多分ファンが本当に怒ったのは 2) だろうなぁ、そして 1) という、「未成年への影響」にも弁解しようのないブツをネットで掴んだことを契機に、抗議行動貫徹→降板、になっちゃったんだろうなぁ。もし事実だとすると。
何つーか、ネットで掴まれたこと全部「もし事実だとすると」だけど、きっと人間の深みだとか、本当に美しいものや良い仕事への敬意だとか教えてくれる親や大人が周囲に全然いないまま、芸能界に片脚踏み入れて半クロウトみたくなって、他人を見下す「勘違い」とギョーカイ人的な「卑しさ」っていう、一番安直に振りかざせるだけに一番悪い部分を身につけて、それが武器のつもりでオトナを気取ってきた子なんだろうなぁ…可哀想なことではあるのだけれど。
今回のことは芸能人としての経歴の上に消しようのない事実として残っちゃったけど。とりあえず未成年なので、今回のことからもう少し真っ当な態度や常識ってもの学んで、どこかの世界でやり直してほしい。それしか言えん。
で、抗議行動に出たファンの側ではあるのだけれど。
あまりヒステリックで非常識な電話やメールとか、関係者といっても瑣末な人々の職場やブログにまで電凸、炎上祭り、みたいなのはいただけないけど、抗議行動それ自体については、よかったんじゃないかと思っている。
「自分たちが大切にしてきたものを、自覚のない、素行の目に余る人間によってダメにしてほしくない」
「腐女子市場は所詮キモいお子様ランチだけど人気取りのためにおいしいとか、そーゆー根性の卑しい作り手だったら要らん」
…とハッキリ意思表示したことが。
いやべつにテニミュのファン全員が腐女子というわけでもないだろうけど。
しかしやっぱりファンの少なくない部分がヲタで腐女子、ってのは作り手側も心得たもんで。
事実、動画でテニミュ見てると、演出家とか役者さんの、品が無くならない程度のBL風味なちょっとした演出とかアドリブとか、上手いよなー、と思う。
同時に、演じてる役者さんはコレやりながら、この演出や受け手の腐女子のことどう考えてるのだろう…とフッと思うことも多い。
何かこの頃、BLマーケット、腐女子マーケットってのがクローズアップされて、今までのように、ワタシたち所詮ありえないホモ話に萌えてる少数派&恋愛市場の最下層なんです、これは決してゴールデンタイムや新聞小説にはならないニッチマーケットなんです、一般ピープルには不可解でキモイって言われるに決まってるんです、ワタシたちにだって分からないんです、だから「そっとしておいて下さい!」とばかりも言えなくなってきた。うまくは言えないが、腐女子としての「アカウンタビリティ(説明責任)」みたいなものを求められるようになってきた。そんな気がする。
…またこれも考え出すと長くなりそうだけど。
「貧乏はお金がかかる」という逆説
ネットカフェ難民が“住居”を失った理由
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=498652&media_id=40
食費に4万、携帯に2万って、数字だけ見ると「使いすぎじゃないのか」と思った。
ためしに一人暮らしである自分の家計簿をちょいと覗いてみたら、携帯に5千円、食費が2万円、電気・ガス・水道代合わせて1万円程度。
しかし、と思い当たる。
ネカフェ難民には「自炊」という選択肢がない。アパートが借りられないから。なぜ借りられないかというと、まとまった敷金・礼金・引越し費用、そして保証人もいないから。
乱暴な試算だけど、弁当屋の「のり弁」300円で3食×30日なら27000円。1食はネカフェのプチパン・おにぎり無料サービスを利用するなら2食×30日で18000円。少しでも栄養のつくものをと思ってホウレン草のおひたしを買えば1個190円、カップ味噌汁で180円が飛んでいく。サプリで栄養つけるにも、マルチビタミン・ミネラルの1ヶ月分なら980円だけど、サプリばっかり飲んでると胃を悪くするし便秘にだってなる。
ちなみに、自炊で同じ「のり弁」メニュー作る場合を大ざっぱに試算してみると、
ご飯:米1080円/2kg×100g=54円
冷凍白身魚フライ:240円/6個を2切れ=80円
味付けのり:100枚入りビン600円として3枚分=18円
漬物:100g入り198円のやつを10g分=19.8円
炊飯器電気代:IH3合で1回9円
電子レンジ:1分0.37円
水道代カウントしてないけど、ざっと原価182円てとこか。ホウレン草のおひたし(150~180円の1/6束分)も、インスタントみそ汁(10個入り300円)も各30円あればつけられる。
そりゃそうだろう。容器代だってあるし、どんな激安ランチだって、弁当工場や流通や小売にかかわる人間に儲けが出なけりゃならない。
加えて携帯電話はワンコール日雇い派遣の必需品で、派遣元との連絡に電話代もかかる。雑誌・ゲームに1万円ってのは…個別のケースを見なきゃ何とも言えないが、戦後すぐの時代、閉山していく炭鉱の鉱夫が酒やバクチに溺れていたように、未来の見通しも立てられないところでは、人間、手近な娯楽に金を浪費しやすくなることは想像がつく。
ネカフェ難民ではないけれど、聞くところによると、寮・まかないつきの製造業派遣で行ってみたところ、給与17万に対して寮費が7万、電気・ガス代が使用量に関係なく各2万、その他家具のレンタル料や何やの名目で合計15万近く天引き、なんてのもあるらしい。
つまり、選択肢のない人間から何やかやの名目でむしり取り、蓄えらしい蓄えがほとんど手元に残らないようにすれば、いつまでも選択肢のない奴隷状態のまま縛りつけておくことができる。昔の女郎屋の前借金制度や飯場と同じ。
ぼんやりとした考えなのだが、貧困の定義とは、ひとつに「選択肢が狭まっていくこと」「選択肢を徐々になくしていくこと」であり、そして貧困の悪とは、「色々なもの――ささやかな娯楽、宝物、貯蓄、住む家、時間、友人、家族、尊厳、肉体――を自分に遠いところから徐々に切り売りして(させられて)いって、さいごまで行き着くと、いのちそのものを――屠殺場の枝肉のように――切り売りされてゆくこと」と言えるのではないか、なんてことを思う。
にしても、ファストフードでコーヒー飲みながら『TownWork』とかのフリーペーパー眺めてると、製造業派遣と期間工の募集だけが目立って年々多くなってるような気がするわ。これも偽装請負も合法化したがっているという経団連のキヤノン御手洗某とかトヨタ奥田某の差し金なのか。
そういや安倍内閣の頃、奥田某が議長になった「若者の人間力を高める国民運動」って、あれ、どこへ雲散霧消したんだろう。
「人間力」っつーのも、言葉ヅラだけなら人づきあいだって事務処理だって何だって「人間力」だ、と言えてしまう、限りなくワケの分からんスキルだけど。
過労死レベルまでこき使われようが、都合よく使い捨てされようが、そんな境遇から這い上がれないのは「きっとワタシの“人間力”がまだまだ足りないせいなんだ」と全てを自己責任としておっかぶってくれる、企業にとって便利なパーソナリティの若者を量産しようという魂胆が、もう当の若者たちにバレてフェードアウトせざるを得なくなった…なんて言っちゃ、穿ち過ぎか。
なんか今、日本中が、弱者・貧乏人・使い捨て要員になる以外選択肢のない者からむしり取った者勝ち、既得権に居すわって喰い逃げた者勝ち、みたいな発想になってるような気がして、情けないような。
社員の採用を抑えて非正規雇用を増やして人件費を切り詰めたことで、たいしたヒット商品もないのに「過去最高益を達成」って、それは自分たち、実は目先の日銭を求めて自分の足を喰いすぎて、水ぶくれてマトモに泳げなくなったタコと同じなんだと、企業は気づいているのだろうか。
都合のいい時だけかき集められて、まともな教育訓練も整わないままいきなり残業だ夜勤だ、そんな職場じゃミスも続発するし、その負担は社員やスキルのある派遣にかかってくる。うちの職場でもさるプロジェクトで、ひと頃ひどかった。いきなりの昼夜2交代導入、教育訓練の余力も何も考えず新人派遣社員が大量投入された現場で、ミスとバックレ率はものすごいことになって、月100時間近い残業が恒常化したベテラン派遣のCADオペレータである弁当友達は、とうとう会社を去っていった。
「人間力」なんて言い出した自分もその中身を説明できないような寝言スローガンに有識者とやら集めて広告代理店に金バラ撒いてるヒマがあったら、具体的な人間と、そのスキルを、育てることに労力費やしたらどうなんだろう。
ところで貧富の差が大きい社会ってのは、安全が高くつく、というのはよく言われることで。
アメリカじゃ今や、IDキーを持った住民しか入れない、城塞のような塀に囲まれて24時間セキュリティ体制が整った、ゲーテッド・コミュニティ(gated community)と呼ばれる金持ち専用の分譲住宅地があるとは聞いていたんだけど。
検索してみたら、日本でももう売り出されつつあるようで。
http://kurashi.31sumai.com/shinchiku/A5139001/fc-tpc/town/main/index.html
喰い詰めたスラムの犯罪者の襲撃にびくびくしながら、E.A.ポー『赤死病の仮面』みたいな塀の中にこもってセレブだリュクスだと悦に入って贅沢三昧してるようなコミュニティが、あんまり本当の意味で「豊か」だとも思えないんだけどね。
札束もいくら棺桶に詰めたって、あの世まで持って行けやしない以上。