父が4年前に膵臓癌になった。

その少し前から
腹の調子が悪いとか背中が痛いと
言っていたらしい。
ただその時は高血圧の方を心配して
その年は人間ドックを受けそびれ
脳ドックを受けていた。

かかりつけの病院で
高血圧の薬をもらう時に
腹と背中の話をしたところ
エコー検査をして、
すぐに大学病院へ回された。

その時には、すでに肝転移があり
ステージはⅣ。末期癌だった。
手術はできない。化学療法も期待できない。
免疫療法も行うことにしたが
時間稼ぎにしかならなかった。

遠く離れた場所にいた私は
同じく家を出ていた弟と
毎月時期をずらして
飛行機で会いに行っていた。

他に何かできることはないか…
いろんな本を読んだ。
その中で食事療法の本もあった。
なるべく癌に効くものを食べてもらいたい!
と読み漁った。

でも毎日、私がついてあげてる訳ではない。
毎月行くと
衰弱していっているのがわかった。

母はそんな食事療法なんて
御構い無しの人なので
私がそれは…と言って揉めたりもした。
でも。
衰弱していく父を見て
好きなものを食べさせて上げるのが
父にとって良いことなのではないか。と
思うようになって
押し付けるのは辞めた。

ただ、そんないきさつがあり
知識としては
私の頭の片隅には癌に悪い食べ物が
こびりついていた。

告知された日から
小学生のいる我が家でストイックに
そんな食事療法は中々、難しく。
私自体が家事が苦手なこともあり
何を食べて良いか分からなくなった。

添加物の入ってるものは
一切受け付けなくなり、
故郷の無添加のいりこを挽いた出汁に
キノコ類のスープと煮たり蒸した野菜
何故だか小豆をどうしても食べたくて
小豆を煮ては食べ、無くなれば煮た。 

朝は黄な粉、ゴマをすったもの
玄米粉、枇杷の種の粉を
プレーンヨーグルトに
入れて練って食べた。

ごはんも玄米に変えたかったが
お腹の弱い主人はもたれてしまう。
そのためベースは白米で
黒もち米、キノア、モチキビ、押し麦など
雑穀屋でバラ買いしたものを
混ぜるようにした。
といっても私はそのベースの白米が
ひっかかり、食べる量は劇的に減った。

塩、醤油等の調味料類はほとんど無し。
甘みだけは、甜菜糖とハチミツを使った。

入院中も入院食が食べれず
先生も食べれるものをというので
バナナや芋を蒸したもののように
素材そのままのものを食べていた。

こんな生活をしていたら
痩せていくのは当たり前で
体重は7キロも落ちていた。

身体中の骨が浮き出ている私をみて
家族には今のままでは
癌ではなく、他の病気で死んでしまうと
心配された。

でも、後ろの原材料名を見ると
どうしても食べれなかった。

自分もこのままではいけないと 
分かっていても
ただ、
本当に何を食べていいのか
わからなくなっていた。