「あぁーー!」

「あぁーー!」

「あぁーー!」

 

 

 

夕飯のつくねを焼こうと

フライパンに火をつけた後だった

 

突然

 

トイレから

母の叫び声が聞こえた

 

私はびっくりして

慌てて火を消し

トイレに駆け寄った

 


狭い和式のトイレの

便器の横に

 


仰向けに倒れて

手足をバタバタさせながら

 


叫びまくってる

母がいた

 


どうしたんだろう

一瞬考える

 

またぎっくり腰?

 


いや違う

 


この表情

叫び方

声のトーン

 

そうだ

これは…

「薬だ!!」

 

間違いない

「薬だ!!」

 

 

 

瞬間的に感じた


母が飲んでいた


睡眠薬や安定剤を

 

一週間くらい前に


やめさせたのを


思い出した

 


その時は無性に

嫌な予感がしたからだ


 

こんな大量に

睡眠薬や安定剤を

飲み続けていいはずない

きっとなにか

 

取り返しのつかないことが

必ず起こる

 

それが何かはわからないけど

とにかく

 

とてつもない不安が

よぎったからだ

 


「お母さん!

  もう薬飲むのはやめて」


そういって

「薬に絶対に飲まないで」

という紙を

薬の袋に貼った記憶を

思い出した

 

 

まさか

まさか

こんなことになるとは

 


どうしよう

どうしよう

どうしよう

 


今までも

ぎっくり腰で動けなくなり

救急車を何度も呼んだり

色々あった

 

 

目の前のお母さんをみて

怖かった

心臓がバクバクした

 

 

とにかく今は

「お母さん大丈夫?

   どうしたの?」


「大丈夫?」


「しっかりして!」


「お母さん!」


心の恐怖と不安と戦いながら

 


自分がしっかりしなくちゃと

言い聞かせて

 


一時間位経ち

何とか居間に連れていき

 

 

それでも母はずっと

「わぁ~」「わぁ~」と


今にも泣きそうな顔で


ずっと

ずっと


仰向けで叫び続けている

 


気が付けば

夜中の2時になり

3時になり

 


私の脳裏には

夕飯のつくねが途中だった…

少しよぎるが

 


それどころではなかった…

 

 

 

2に続きます