It is that SVってどういうこと? | 真面目に脱線話@リンガランド英語塾

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以前、強調構文について何度か書いたことがある(→過去ログ)のだが、その記事を読んだ方から最近、質問を受けた。



それは「It is X that という強調構文のしくみはわかったのだが、It is thatという強調する要素のない強調構文のしくみがわからないので教えてほしい」というものだった。



It is X that と比べると、何を強調しているのかわかりにくいIt is that の形がいまひとつわからないという人は潜在的にはけっこう多いのかもしれない。と言うのも、昔、塾で教えていたころ、このIt is that の意味を聞いて、まともに答えられる生徒がいなかったからだ。



また、何度も目にするような形なら、自分なりに理屈を付けるなり疑問を持つなりできるのだろうが、頻度は多くはないので、なんとなくやりすごしているのだろう。また、勘の良い人なら「強調構文はit isとthatをとれば、元の文に戻せる」というルールから、「じゃあ、It isとthatをとればいいじゃないか」と考え、なんとかつじつまを合わせられるといった面もある。



ただ、なぜ強調構文が使われているのかわからない。それだと、その強調構文が表す「本当の意味」はわからないことになる。そこで、その点を見るために、まずIt is not thatというnotの入った形から見ていくことにしよう。



It is not that consciousness is generated by the association of matter.

「意識は物質の組み合わせで生じているのではない」



これからIt isとthatを取れば次のようになるだろう。



Consciousness is not generated by the association of matter.

「意識は物質の組み合わせで生じない」



訳が微妙に変わるが、意味はほぼ同じである。では、ここで強調されていることは何だろうか。



notが強調されていると考えた人もいたかもしれない。残念ながらそうではない。それは、次のような形があることからわかる。



It is not that he has not received and does not have.

「彼は受け取ってもおらず、また持っていない、ということではないのだ」



notが強調されて前に出ているのなら、that以下がhe has not received and does not have.と否定文になるはずがない。notを強調したいのであれば、notは前に出るので、that以下は肯定文になるはずだ



では、It is not thatは何を表すのだろう。





まず強調構文の基本。強調構文は話し手が一方的に何かを強調するために使われるものではない。もしそう考えている人がいたら、ここで考えを改めよう。



強調構文はあくまで聞き手や読み手の気持ちを考えたときに使う「コミュニケーションの技法」である。



たとえば、It is Tom that I met yesterday.(昨日私が会ったのはトムだ)という強調構文は、聞き手は「まさか私が昨日トムと会うなんて思わないだろう」と予想して使うのが基本だ。




つまり、「相手が意外に思うことを先に出す」というのが、強調構文のそもそもの原理なのである。強調構文を「分裂文」と呼ぶこともある。相手にとって意外性のある要素をまさに分裂させて前に出している文である。



さらに、It is not Tom that I met yesterday.(昨日私が会ったのはトムでない)なら、聞き手が「私が昨日会うとしたらトムだと思うだろう」と予想して、「ところがどっこい、トムじゃないんだよね」と、相手の予想が裏切られることを示しているのがこの形である。



この原理がわかれば、It is not thatもその延長で理解できる。



It is not that consciousness is generated by the association of matter.(意識は物質の組み合わせで生じているのではない)は、一般的な読み手は「意識は物質の組み合わせでできている」と考えているだろうと著者が予想して、「それは違うよ」と相手の予想(この場合は「常識」)が裏切られることを示すために使われている。



だから、上で強調構文と単なる否定文で訳がちょっと違ったのは、否定文があくまで動詞部分のbe generated(生じさせられる)を否定しているのに対して、強調構文が文全体の「内容」が否定されているからである。



またそれは、「生じない」(否定文)と「…が生じることはない」(強調構文)の違いに現れている。





同様に、It is not that he has not received and does not have.という強調構文は「彼は受け取ってもおらず持っていない」と聞き手は予想しているだろうから、そうではないのだよと相手の予想が違っていることを示している。



だから、It is not that …. はnotを強調するために前に出した形ではなく、あくまで「あなたがこう思っているだろうが」と推測した上での、「でもそうじゃないよ」という返し技だ。



そこがわかれば、次の文もわかるだろう。



It is not that these people do not exist, it is just that the general consensus is not yet aware of the innovation or its potential impact.

「これらの人々は存在しないのではなく、一般的なコンセンサスでは変革やその潜在的な影響にまだ気づいていないだけである」



not … justの関係は、学校英語で「~ではなく…だ」と訳すnot … butのバリーションだと考えるとわかりやすいかもしれない。類例をもう1つ。



It's not the names, it's that a man's morality predetermines the motives of his.

「人間の行動のきっかけを規定するのは、その名分ではなく、人間のモラルである」




どちらも後ろのほうが、質問にあったIt is that の形になっている。この場合はIt is not that以下のほうが「相手の予想が違っていること」を示し、Ii is just thatのほうが「相手が思っていないこと」を、意外性をもって示していることになる。



だから、It is thatは相手に対して「予想外だろう」「意外だろう」と思うことを示す内容に使うというのが、最初にいただいた質問への回答になる。It is X that が「意外な要素」、It is thatが「意外な命題」で、違いは要素か内容全体かだけだ。



日本語では「~のだ」(→過去ログ)にニュアンスが近いところがあるので、対応する訳として使われることがある。



The fact is that people have clean forgotten the Christian "thou shalt". Therefor it is that they do not perceive that this is offense, this thing of treating Christ as a matter of indifference.

「事実、人々はキリスト教徒の『汝することなかれ』の精神をすっかり忘れてしまっている。それゆえ、これが侮辱、つまり、このキリストをないがしろにするかような扱いであることに彼らは気づかないのだ」



後ろの文にIt is that が出てくる。これは、あなたがた(=読み手)は「彼らは気づかない」などと思っていないだろうがという前提で、「実は彼らは気づかない」と言っていることになる。



His aim appeared to be to persuade the leaders of the Catholic church to adopt the same approach he had demonstrated to the mother in the slum. It is that the care of individuals takes priority over doctrine.

「彼の狙いはカトリック教会の指導者たちに、スラム街の母親に見せたのと同じやり方をとるように説得することにあるように見受けられる。1人1人のケアは教義に優先されるのである」



ここでheと呼ばれているのはローマ教皇である。「まさかローマ教皇がキリスト教の教義より大事なものがあるなどと言うわけがないだろう」といった一般の常識を裏切る内容だから、ということだろう。





ただし、It is that の形は上にもあったように、単独より、It is not that, it is that …. と否定文と並べて使われることが圧倒的に多い。



It's not that I get what I want, it's that I want what I get.

「欲しい物を手に入れるのではなく、手に入る物が欲しい物なんです」



何か深いことを言ったようになった気分になるのが、この使い方のよいところ。たとえば、異性への告白で使うなら、It's not that I don't want to be with you, it's that I love you too much.(あなたと一緒にいたくないのではなく、あなたを愛しすぎているのです)なんて言うと、たいしたことは言っていないのに、なんだか深みがあるようなことを言ったような気分になる。




It is that のほうが目にする頻度は少ないので高校生レベルは知らなくても大丈夫だと思うが、It is not that, but that はけっこう出てくるので知っておいたほうがよい。また、It is thatも普通の人が読むレベルの本でも使われることはあるので、知っておいたほうがいいのは間違いない。



ただし、it is thatが強調構文でない場合もあるので、注意が必要だ。



I have a secret in my heart, it's that I love you.

「私には密かに内緒にしていることがある。それはあなたを愛しているということ」



Itはa secretを指しているので、強調構文ではない。また、If SV, it is that …(もしSVなら、それは…だ)のitは言うまでもなくif節の内容を指している。区別できるかどうかは、文脈をきちんと追えているかどうかにかかる。



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