秋田とリサイクル | バイオエタノールあれこれ

秋田とリサイクル

地元記者の視点で、面白いですね

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毎日新聞「秋田・大館(白神)」移動支局(その1) 自然見つめ、地域振興
2007年10月25日(木)05:47

 ■地域再生 移動支局

 ◇リサイクル先進地、秋田県北地域

 「環境と循環型社会」をテーマに、毎日新聞「秋田・大館(白神)」移動支局が今月12日から21日まで秋田県大館市を拠点に開かれた。世界遺産の白神山地を擁し、リサイクル事業によって地域の発展を目指す秋田県北地域は今、地域振興の新たな可能性を開きつつある。環境と産業の両立に向けて歩む各自治体の取り組みを移動支局から紹介する。

 ◇入山制限でブナ林保全--世界遺産・白神山地

 秋田県北西部と青森県南西部の県境にまたがる白神山地は、総面積が東京23区の約2倍にあたる13万ヘクタール。そのうち、人の手による影響をほとんど受けず、原生的なブナ林が残されている約1万7000ヘクタールが1993年、日本最初の世界遺産(自然遺産)に登録された。長い間手つかずの原生的な状態が、比較的広くひとまとまりで残されていることに価値があると評価された。

 ブナを主体とする世界最大規模の原生的な落葉広葉樹林では、ほかにサワグルミ、トチノキ、ミヤマナラなど500種以上の植物▽ニホンザル、ニホンカモシカ、ツキノワグマなど14種の中大型哺乳(ほにゅう)類▽イヌワシ、クマゲラなど80種以上の鳥類▽2000種を超える昆虫類——が確認されている。ブナの寿命は200~300年とされているが、樹齢400年を超える巨木もある。

 こうしたブナの森の多様な生態系は、古くから人間の生活を豊かにしてきた。林野庁藤里森林センターの原嶋広行所長によると、1万年以上前、この地域はナラの森だったという。気候変動のため日本海側で雪が多く降るようになり、約8000年前には比較的雪に弱いナラがブナに置き換わった。八峰町から能代市の日本海側では多くの縄文遺跡が発掘されており、縄文文化は白神の豊かな山の幸と、「緑のダム」と呼ばれるブナの森が蓄えた豊富で清らかな水、その水によってはぐくまれた川の幸、海の幸によって支えられていたと考えられている。

 世界遺産登録で「白神」の知名度が上がり、観光客も増えて入山者増で森が荒れることも懸念された。それを防ぐため、秋田県側では、人の影響をほとんど受けていない「核心地域」への入山を原則禁止。青森県側には登録前に作られた歩道と27の指定ルートがあるが、事前に森林管理署長に届け出を義務づけるなど入山を厳しく制限している。森林事務所や自治体、ボランティアの地元住民が定期的にパトロールも実施しており、登録から14年を経ても大きな問題は起きていないという。

 しかし「長期的な脅威はある」と、原嶋所長。それは地球温暖化だ。ブナは年平均気温が6~13度の冷温帯の植物で、温暖化の影響を受けやすい。ブナは成長が遅く、大きくなるのに100~150年を要する。現在の森が失われれば回復は不可能だ。「地球全体の温暖化を防ぐことが、白神の自然を守ることにもつながる」と原嶋所長は指摘する。

 ◇鉱山施設と技術活用--9市町村「エコタウン」に

 秋田県北部は北に世界自然遺産の白神山地、東に十和田八幡平国立公園を擁し、国内有数の豊かな自然に恵まれている。県内第2の流域面積を持つ米代川流域には小坂、阿仁など多数の鉱山があり、また秋田スギの本場でもあるこの地域は、鉱業と林業によって支えられてきた。

 だが、円高などの影響で鉱山は相次いで閉山し、安価な外材の輸入増で林業も衰退を余儀なくされた。苦境に陥った地域経済を救うための方策として大館市などで始まったのが、鉱山の施設と技術を使ったリサイクル事業だった。1999年には北部18市町村(当時=現在は9市町村)が、地域の振興を図りながら環境と調和したまちづくりを進めるための国の「エコタウン」制度の承認を得た。

 地域外から廃棄物を持ち込む「リサイクル」事業と豊かな自然環境とは相いれない印象もある。だが、この地域には自然に配慮しながらリサイクルができる技術と施設、経験の蓄積がある。

 自然から大量のエネルギーや物質を取り出し、大量に消費し、大量に廃棄する時代は過ぎた。リサイクルは物質循環の重要な位置を占め、地球の環境を保護し、自然を守ることにもつながる。そうした事業が豊かな自然のふところで行われる秋田県北部地域は、環境と経済を両立させなければならないこれからの時代を先取りしているのだ。

 ◇アジアへの玄関口・能代港

 ◇資源集荷拠点に--国支援活用で企業誘致へ

 「リサイクル」を通じてまちづくりを進める秋田県北部で、地域振興の核となることを期待されているのが、能代港だ。能代港は昨年12月、リサイクル拠点としての整備を支援する「総合静脈物流拠点港(リサイクルポート)」の指定を国土交通省から受けた。県北部には優れた金属製錬、木材加工技術があり、地理的、経済的にリサイクル拠点となる潜在的な力が評価されたことが指定理由だ。

 米代川河口に位置する能代港は、658年に阿倍比羅夫が蝦夷征伐のため上陸したとの日本書紀の記述で、初めて歴史に登場。江戸時代以降は舟運を通じて上流から運ばれてきた豊かな鉱物、農林産物を交易する港として栄えた。1981年には重要港湾の指定を受け、93年には港に隣接する工業用地で東北電力能代火力発電所が運転を始めた。

 現在、港の施設は4万トン級岸壁、1万5000トン級岸壁と、5000トン級岸壁が2バース。このほか、能代火力専用の6万トン桟橋と5000トン桟橋もある。能代港を利用する貨物の約9割が能代火力の燃料となる石炭で、公共バースには余裕があるという。

 国の「エコタウン構想」指定を受けている後背地の秋田県北部では、かつて地域を支えてきた鉱業の関連技術を生かしたさまざまなリサイクル事業が興っている。このうち大館市では、家電リサイクル法の対象となっているエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の4品目をリサイクルする事業▽鶏糞(けいふん)と生ゴミなどを原料に、有機肥料を製造するコンポスト事業▽使用済み木材、建築廃材などと廃プラスチックを原料に、デッキ材などを製造する廃プラスチック利用新建材製造事業▽重金属を含む土壌を洗浄、リサイクルする土壌浄化事業——などが行われている。また、小坂町では廃家電やパソコン・携帯電話などの基板、自動車部品などから金やプラチナなどの有用金属を回収するリサイクル製錬拠点形成事業が行われ、「都市の鉱山」として注目を集めている。

 例えば携帯電話一つを見ても、リチウムやコバルト、インジウムといった希少金属が使われている。ここ数年、こうした希少金属や、LSIの配線などに使われる金、エアコンの冷却機に使われる銅、自動車の排ガス浄化用触媒に使われる白金などの価格が軒並み高騰している。

 廃木材もバイオエタノールの原料やバイオマス発電の燃料などとして注目が集まっている。いまや、廃棄物は「ゴミ」ではなく資源として見直され、奪い合いになっているものさえある。

 一方、地球環境に目を向けると、木はある程度成長すると二酸化炭素(CO2)をほとんど固定しなくなり、木材として使用後に燃やしたり、腐敗した場合にはCO2を排出する。だが、大館市で廃木材と廃プラスチックを原料に作られている新建材は腐ることがなく、使用後は回収・粉砕してもう一度製品化することができるため、CO2を長期にわたって固定しておくことができ、地球温暖化防止にも貢献する。「地球温暖化対策としては、われわれがまさに最先端を行っている」。小畑元・大館市長は、そう言って胸を張る。

 これらの事業で「原料」とされる廃家電や汚染土壌などは現在、ほとんどが約50キロ南の船川港(男鹿市)と、隣県の青森港で荷揚げされている。だが、距離的に一番近いのは能代港だ。「内陸部にあるエコタウン構想と連動させ、多くの荷を安く早く入れることによって能代港の特色を生かしながら地域産業の振興に寄与していきたい」と、斉藤滋宣・能代市長は話す。

 ただ、これまでの実績を無視してすべての荷を能代港に移すのは難しい。能代市が狙うのは、リサイクル事業のさらなる拡大で増える物資の取り扱いだという。そこで目を向けているのが、日本海の先に広がるアジアだ。IT化では日本と肩を並べるほどの韓国、経済成長著しい中国やインド、今後の成長が見込める東南アジアで廃棄された電子機器などを秋田で処理する。その荷揚げを能代港で、と期待をかけている。川口博・小坂町長も「リサイクルに関する能力のないところが処理すると、公害問題になる。難しいところは小坂でやりたい」と、意欲的だ。リサイクルポート指定は、能代港のさらなる活用の弾みになりそうだ。

 指定によって、今後設立されるリサイクル関連の第三セクターに対し、国が事業費の3分の1を助成する。能代市は、リサイクル品用の倉庫のような施設を建設・管理する三セク設立に向け、動き始めている。

 資金面での利点を生かして企業誘致にも乗り出す考えだ。具体的には、中間処理施設を誘致して、廃棄された携帯電話などのうち基板だけを取り出して小坂町の施設に送り、プラスチック部分は能代で処理するといったことも考えているという。

 「リサイクルは、しっかりした技術を持つところがオープンな形でやることが国全体のプラスになる。『静脈』と名付けられているが、地域の活性化ということで考えれば動脈と言っていい」と、斉藤・能代市長は言う。

 能代港は、リサイクル事業のトップランナー、秋田県北部地域のアジアに開かれた玄関口として、今後ますます重要性を増していくだろう。
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